探偵、少女と出かける
新幹線の車窓から外を覗き、はしゃぐ猫科の獣人の少女。
猛はその姿を微笑ましく見ていた。
人魔歴1500年。
西暦という暦が終わり、人と魔物との激しい戦争が平和的解決を迎えてからの暦だ。
今、人と魔物は共存できている。
「猛さん、見て下さい! 東京タワーです!」
無邪気に差した指先にあったのは、東京タワーなどではなく高圧電線の鉄塔だった。
「違うよ。東京タワーはもっと都会にあるんだ」
何個も連なる鉄塔に、流石の少女も気づいたようだ。
「ここよりもっと都会なんですか!?」
田舎育ちの彼女にとっては、この田舎の風景すら都会に見えてしまうのだろう。
アリア・アンタレス。
今回猛に寄せられた仕事は、このアリアを旧都東京に連れ出すこと。
数日間の間に旧都観光案内人として一緒に旅をすることだった。
依頼人はアリアの両親。
(まだ繋がっている)
猛は笑顔を崩してはいないが、心の中では彼女を心底心配していた。
間もなく、旧都東京に着く。
1つ目の少女高岡 美月はまだ高校生でありながら、猛の探偵事務所でアルバイトとして働いていた。
人間と1つ目族のハーフでありながら、尋常ならざる強大な魔力を有し、様々な場面で猛を助けてきた。
(私の力で何ができるのだろう……)
小さな手を握りながら必死に魔力を注ぎ込む。
今の自分にできるのはそれだけ。
それだけが歯がゆい。
時間稼ぎしかできない自分の能力の限界に嫌気を感じながらも、美月は自身の職務を全うする。
「わっはぁぁぁぁぁぁっ!!!」
かつては世界一電車の量と人数を誇った旧都の駅。
今は全盛期程ではないにしろ、人や魔物が入り乱れるように目まぐるしく動き回っている。
「人が多すぎますぅ〜」
見ているだけで人酔いしそうなくらいの人、ひと、魔物、まもの。
何回も訪れたこともある猛ですら、アリアとはぐれないようにと思うと一苦労する場所だ。
「次はどこに行くんですか!?」
ここは通過点。目指すのは、世界でも有数の魔力電波塔、ヴァルハラガーデン。
電波塔だけでなく、その一帯が一大アミューズメントパークにもなっている観光地だ。
「とりあえずそこに行こう。今日一日使っても遊びきれるかわからないぞ」
猛自身も楽しげに笑って見せる。
その気持に嘘はなかった。
「おぉ~! ユーエンチとかもあったりしますか?」
「もちろん。ジェットコースターも観覧車も、水族館だってあるし、美味しい食べ物だって食べきれないほどあるさ」
「本当!?」
相当楽しみな様子でアリアは喜びの声をあげる。
今までド田舎で暮らしていた彼女にとって、この旧都は楽しみ以外の何者でもなかった。




