探偵、黒縄地獄へ1
「ここが第二層、黒縄地獄だ」
殺生、窃盗を犯した者が送られる地獄であり、熱せられた鉄縄で身体を締め付けられる責め苦を味わうこととなる。
「ここの鬼もまだ俺達の敵じゃない」
うめき声が聞こえる中、広大な地獄を歩く。
「猛さん、向こうに人影が!」
美月が叫ぶ。
猛とクレアには見えないが、視力の良い美月が子どもたちを見つけたようだ。
「この地獄は簡単に助けられそうね」
クレアが息を吐く。
「そうでもないぞ」
猛は素早く身構える。
いつの間にか後ろにナニかがいた。
「っ? 気配なんて無かったのに!!」
クレアも戦斧を手に戦う姿勢に入る。
「美月ちゃんは子どもたちをお願い!」
「はいっ!」
子どもたちの元へ走る。
しかも美月なら、その距離からでも狙撃が可能だ。
「我らの邪魔をする現世人よ……」
「その口ぶり。あんたらが黒幕みたいだな」
刹那。
一切の予備動作無しに敵が眼前に迫っていた。
「ちっ!」
その強力な爪に切り裂かれないよう、猛はギリギリのところで見を躱す。
クレアは長物のリーチを活かし、距離を詰めさせない。
1合、2合、と斬り結ぶ。これなら猛達の方が力量は上。
このまま押し切れるかに思えた。
しかし。
「くらえ、不可視の刃! 忍刃忍刃!」
目に見えない斬撃は確かに敵を切り刻むはずだった。
「!?」
実態がない。
物理攻撃が効かないのだ。
「こいつら、アンタの得意な妖怪だの悪霊だのの類じゃないの!?」
クレアの退魔力を持ってしても攻撃は通らない。
「なにかカラクリがあるはずだ!」
迫りくる攻撃を避け、反撃を試みるがダメージを与えることはできない。
途端。
敵の攻撃が止む。
「猛さん、クレアさん! その敵は操り人形です!」
目の良い美月だからこそ見えたもの。
それは敵を中から吊るすか細い糸。
「それなら!」
攻撃目標を敵本体からその糸に切り替える。
そこから先は早かった。
ただ糸を切るだけで勝負は片が付いた。
「なんか変な敵だったわね」
クレアは子どもたちの安全を確認すると呟いた。
「……」
猛は一人黙っている。
「猛さん?」
「あぁ、とりあえず子どもたちを逃がそう」
一層目と同じように子どもたちを美鏡神社に避難させる。
「猛は敵の正体に気づいた?」
おてあげ、というふうに手を振りながら、クレアが猛に問いかける。
「お釈迦様の蜘蛛の糸、という古い話を知ってるか?」
クレアと美月は顔を見合わせる。
「お釈迦様。仏が地獄の罪人を救うために蜘蛛の糸を垂らす、という話だ」
天から伸びた糸の先にいた罪人。
それは……。
「待って、さっきの奴らを操っていたのは仏様だとでもいうの!?」




