探偵、等活地獄へ2
「生きた人間と魔物が何の用だ」
「この地獄に拐われてきた子どもたちを探しに来た。その子はその内の1人だ」
猛は毅然と言い放つ。
クレアと美月はいつでも戦闘ができるように構えていた。
「なるほど。最近やけに地獄に生きた人間や魔物が来るわけだ。お前たちはそれを解決しようというのだな?」
「あぁ、そうだ。生者いるのはお前たちにとっても都合が悪いだろう?」
地獄に生きる者たちが来る。
それは地獄の理を変えること。
しかも魔力持ちは鬼たちにとって、最高のごちそうだ。
自分たちの妖力を強化し、さらなる深い地獄へと潜ることができる。
それは自然界の生態系を壊すが如く、地獄の在り方を違えてしまう。
「そうだな。確かに好ましい状況ではない。だが、このエルフ程の魔力があれば、我らの力も飛躍的に上がろうというもの」
どうやら鬼たちは簡単にエルフの子どもを返してくれるつもりはないらしい。
「仕方ないか……」
猛は御札を取り出すと、退魔力を込める。
「我願い請うは八百万の神々の力! 我が手に不動明王炎咒の退魔力を授けん!」
御札から放たれた強力な炎は地面を抉り、空気を燃やし尽くして敵に迫る。
「猛!?」
このままだと、鬼たちどころか助けるべきエルフの少女も巻き込む事になる。
しかし。
「遅い!」
猛の詠唱が終わるか否か、獄卒は炎を躱し、猛の眼前に迫る。
その瞬間、炎が霧散する。
退魔師として未熟な猛は、技の発動にいちいち詠唱が必要なのだ。
「おっと! 待ってたぜ!」
飛び込んできた獄卒の胸に手を当てる。
大地から水を吸い上げる大樹のように根を張り巡らせる。
その力を螺旋状に掌に集め、霊力を込める。
地獄の鬼には退魔力より霊力の方がよく効く。
そして、猛は霊能力としては超一流だ。
「くらえ! 当的当的!!」
その一撃は獄卒の命を奪うには十分な威力を誇っていた。
「こっちも終わりよ」
クレアと美月も、エルフの少女を襲おうとしていた鬼たちを倒し終わっていた。
他の鬼たちは遠巻きにその光景を見ているだけだった。
いくら浅層の地獄とはいえ、鬼は鬼。
しかも獄卒まで簡単倒すようや手練れを相手にする気概のある鬼は他にいなかった。
「まだやるかい?」
猛が問うと、鬼たちは一目散に逃げ出すのだった。
「あ、ありがとう、おじさん!」
「おじ……っ!? まぁ、いいや。とにかくココは危険だ。早く魔界の安全な場所に逃げるんだ」
おじさん呼ばわりされた猛を笑いながらクレアが聞く。
「でもどうするの? いちいち戻ってたらキリがないわよ?」
さらわれた子供たちは全部で10人。
助けては魔界に送り帰す、を繰り返していたら手遅れになるかもしれない。
「大丈夫だ。手はある」
猛が1枚の札を取り出す。
「我願い請うは八百万の神々の力。今ここに時空を超え現世への扉を開かん」
呪文を唱えると、何もない空間に突如扉が現れた。
「この先は人間界の美鏡神社に繋がっている。かが巳様が保護してくれる」
「それなら安心ですね。でも、ここに他の子が居ないとなると、もっと下の階層にいるということでしょうか?」
「おそらくな」
さらに深層の地獄へと降りる時空の歪みを見つけるために、猛たちは地獄をすすむのだった。




