鉄板!
ウーバイくーーん、あーそーぼーーー。
なんてノリで祭祀教の教会にやって来たトールさんでしたが、着いて秒でそんなノリは消えた。
や、だっていつもは信徒が自由に出入りしてる礼拝堂の入り口。
でも今日は、ウーバイくん程ではないけどそれなりにガタイの良い修道士が二人、正装の法衣を着て例の鉄棍を携えて仁王立ちしとる。
信徒らしき一般人の姿も、全くなし。
そんなに教会に通ってた訳じゃないけど、いつものあののほほんとした雰囲気とまるで違う。
ものスゴい場違い感。
「冒険者どの、本日は教会にご用でありますか?」
あ、ああ。、うん。
ウーバイく、司祭居るかなーー、って。
「 ジャスレ司祭は法会の祀儀中でございます。
言伝なら承れますが、」
あー、やっぱり?
なんかそんな事言ってたような気がするんだけど、正直トール氏記憶含めて教会の行事なんて全く把握してないし興味なかったからなあ。
でもまあやっぱり年の瀬とかは、どこの世界の宗教でも忙しいんだろうな。
何か大切な行事なのかな。。
てか、この門番?の二人。
圧がスゴいな。あまり普段は見ない顔だけど。
まあ、いーや。
じゃあトールが来てたって伝えておいてもらお。
「 あれー? トールさん、ちーーッス!!」
そんなちょっとアセってるトールさんに、気の抜ける声かけをしてくるオカッパ頭の中学生がいた。
「 教会の前で、 何やってんスか?」
クラン【神樹の集い】のチャコさん。
今日は完全にオフなんかな?
ラフな短パンに肩掛けのサコッシュで、全くの丸腰だな。
や、ウーバイくんと遊ぼうと思って来たんだけど、なんか忙しそうだったんよな。
「 え? トールさん 何言ってんス? もうすぐ夏至ですよ? 教会なんて毎日なんかやってますよお、 大忙しッス」
あ、夏至。
そーか、。 祭祀教の『祭祀』は元もと夏至の儀式のコトだった。
てか、じゃあウーバイ使えねえじゃん。。
「 年が明けるまでは、教会は毎年この時期、こんな感じっス 」
まじかー。
ならまあ、こっそりとソロで何とかするか。。。
てかトール氏、ホントに世捨て人というか、なんというか。。。
世事のいくつかが完全に意識の外だな。
だいぶ変り者だったらしい。
「 トールさん、ヒマならごはん食べいきましょーよー」
ん? もう昼過ぎだもんな。
昼まだ食ってないの?
「出掛けにクランハウスの食堂で食べてきたんで、食後のハラ熟しッス!」
いやいや。 ちょっと何言ってるのかトールさん理解できないな、 、まあ、チャコさんだしな。。
こっちは朝から何も食べてないから丁度いいけど。
「西門の近くに新しい店ができたらしいんで、偵察に行くッス」
へー、何屋?
空きっ腹だからあんまりヘビィなのは、ちょっとしんどいかなーー。
立派な一枚板のカウンター席でチャコさんと並んで座ってる。
もちろん、酒場【愚者の掃溜め】の立ち呑みカウンターと違って、ちゃんと背もたれのついた座り心地の良い丸椅子だ。
そんなふたりの目の前の大きな鉄板で、ジュージューと美味しそうな音と香りをたてて、大きな肉が焼かれていた。
うん、コレ 鉄板焼きのお店だ。
チャコさんに連れられてやってきたのは西の大門からすぐの商店が集まるエリア。
この前お茶を買いに行ったテルビア商会と同じ並びで、西門街で一番活気がある場所だった。
「どないでっか? 美味そうでっしゃろ??」
目の前のカウンターの中。
お肉を焼いているコックさんの後ろで、ニマニマとこちらを伺っているのは、テルビア商会の三男坊、トマスくんだ。
「 羊毛用と別に蓄育しとる品種でしてな、 味も臭みやら変なクセもないエエ味だしよるんですわー 脂の差しもエエ塩梅でっしゃろーー? 」
あ、ああ、うん。 そやな。
何となく高級そうな店構えで、入るかどうか外から様子を伺ってたら突然店の中からコイツが出てきて半ば強引に引き入れられてしまったんだけど。。
どうやらこの店はテルビア商会の直営らしい。
「しゃあけど、トールはん こないだのお茶といい今日のご来店といい、なんや最近エエ趣味になってきとるみたいでんなあ 冒険者いうたら装備にしかカネかけんなんてよう言われるけど、こういうココロのゆとりも大切やさかいなあ」
あー、ああ、トマスくん。
ノリノリで喋ってるとこ悪いんだけど、隣のチャコさんにパンとか与えてくれんかな?
このコ、ヨダレがダラダラ垂れとる。
「 め 、 めっちゃ美味そうッス! 匂いと音がエグいッス!!」
ああ、そうだねえ。。
キミ、食後なんだよね? ハラ、鳴りまくってるけど気のせいかな??
てか、鉄板焼きね。
そう言えばこの世界ではあんまり見ないな。
これ、トマスくんのアイデア??
「 この前ご一緒してもろた王都で、最近流行りだした店でんねん。 コッチ戻ってきて速攻でパクらせて貰いましたわーー 」
あー、なるほどね。王都ね。
てかパクリかい。 まあこの世界はある程度ヤッたもん勝ちなトコあるからな。
鉄板焼きは庶民的な食材から高級食材まで幅広く親和性が高いからな。
ただ、この西門街で構える店にしては、ちと高級路線な気がするんやけどなあ。
「 あー、やあま、そーですねん。 店には意外と中央街のお客さんもいらっしゃるんで、イケるか思たんでっけど、 昼はこの通り閑古鳥ですねん」
だろうねー。
さっきチラっとメニューみたけど、ざっくり平均で20イル(約二千円)くらいだもん。
そりゃいい肉か知らんけど、労働者階級のマーケットでこの価格設定は強気すぎるわ。
香ばしく焼き上げられたマトンに香り高いソース。
付け合せの野菜も添えられた立派な一皿だ。
前菜から始めてパンとスープとサラダに、シメのデザートまであれば、完璧なコース料理やんけ。
まあ、コレはメインの肉料理だけだけどさ。
現代日本の感覚なら妥当か安いめな感じだけど、こっちの世界の人にとっては、なあ。。
てゆーか、隣でチャコさんが無言でモチモチ食っとる。 なんやかわええな、この小動物。
結論。
シンプルに昼はランチ営業で、価格帯下げたらええやん。
「 ?? ランチ? て?」
ああ、そうな。そこからやんな。
つまりさ、夜の高価格帯の集客のために昼は少し品質を下げて提供するんさ。
もちろん、肉の質とか下げ過ぎるとダメだから思い切って別メニューで、とか。
ほんで夜に来たら、これのも少し本格的なのが食えるでー、って宣伝になる。
西門街のこの辺りは冒険者ギルドの支部からも近いから、夜でも治安いいしな。
いいお酒と一緒に出して利益率上げて、夜営業でガッツリ稼ぐスタイルにしたらええ。
「ほうほう! 別メニュー、 例えば?」
なんだよ食いつくなあ。
例えばそのマトンの端肉とかでるでしょ?
それ叩いてミンチにしてハンバーグにしちゃうとかあるでしょ?
あれ? そーいえばこの世界、ハンバーグ無いな。
「 え、ちょいちょい、! トールはん、も少し詳しゅう聞かせてもーて?」
あ、やべ。
コイツ、眼が¥(イル)マークになっとる。
てかこの美味そうなマトン、食わせてくれよ。。
トールさんの、隣の小動物に盗られそう。。。




