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脅威度Aの討伐

「迷いの森】には、樹齢何百年かというくらいの巨樹が林立している。

鬱蒼とした昼なお暗い森だ。

そんな環境だからか、背の低い下草の類は日光に恵まれず、あまり大きく育たない。


そんな森の一角。

ある時にその巨樹が、何らかの原因で倒れた跡にはその後何百年もぽっかりと穴が開いたような拓けた場所ができる。

そんな場所には日光が差し込み、下草が生えて、少し植生が変わっていたりする。

ココもそんな類の場所だろう。

チャコさんとふたりで偵察に出た時に、見つけておいた場所だ。


「1体上に行ったッス!」


チャコの声に呼応するようにブルーダの光球が打ち上がる。

ユラユラと滞空する眩い光に反射して、キラキラと光る甲殻がよく見えた。  こうなるとシュピーゲルのステルス性なんて全くなくなってしまう。


本来ならヤツらは決して光の下になんて出てこないのだろう。暗がりこそがヤツらの土俵だもんな。

だけどもカミーユさんの巧みなヘイトコントロールによって、この2体はまんまと釣り出された訳だ。


「こっちは任されよっ!」


ウーバイの鉄棍が、カミーユさんのタワーシールドを回り込んでシュピーゲルの甲殻に突き刺さる。

とはいえ見た目通りの硬さのようで、なかなか有効打にはなっていないようだな。

ただ、かなりカミーユさんにへばりついてくれている分安心はできる。

【ヒール】で即時回復する盾職とか、相手からすれば悪魔みたいなもんやろ。


盾ふたりとやりあっている個体の補助に動くつもりだろうな。もう1体は巨樹に取り付くと勢いよく登りはじめた。

そんなところにブルーダの炎系魔法ファイヤジャベリンが炸裂する。高密度に収束させた炎の槍でも、やはり硬い甲殻に阻まれて僅かな傷をつけるのが精一杯だったが、纏わりついた炎を嫌がったのかそのまま地表に飛び降りて来た。


「ナイス! ブルーダ!」


咄嗟の光球といい、痴女のくせになかなか渋い活躍を見せてくれるやないの。

落ちてきたヤツの斜め後ろの、絶好の位置。

別に予測してた訳やないけど思わず歓声あげちゃったよ。


瞬脚からの、すり抜けざま抜刀。


鞘を走らせて加速をのせた刃閃の孤が、一番後ろの肢を一節残して切断した。

刀の特性をもってすればコイツらの単純な構造の関節には通りそうだけど、冒険者主兵装のショートソードだと厳しそうだな。

虫系に特効のはずの、炎もイマイチ。

硬いヤツにもそこそこ効く打撃系も通らない。

コイツ、別にコソコソ隠れてなくても素でかなり討伐し難いんじゃないの!?


さすがに虫系。痛覚が無いのか、全く怯まずに勢いよく振り向いて来る。


ん?


はーん、なるほど。

コイツ姿勢制御に片側最低2本の脚の接地が必要なのか。 巨体だもんなあ。

振り向きざまに飛んでくると身構えてた前肢の攻撃が無かったぞ。

とはいえ、ビョンッと跳ぶように向きを変えてくるので、隙はそんなに大きくない。


でもねー。

トールさんには充分だよねえ。

そのまま今斬りとばした脚の側へ円を描くように回り込む。

瞬脚を細かくストップアンドゴーさせると、足の筋肉はキツいけど相手の虚を突くのには最適だな。


何度目かのゴーに着いて来れなくなったシュピーゲルの二番目の前肢も、根元から落とす。

間接狙いもコツを掴んできたかな。


途端に鈍くなる攻撃に、胸にあたる部分がガラ空きになる動作。健在な反対側の前肢も、こっちには届かない様子。

まるで壊れた多脚ロボットみたいだ。


通常種アラクネと同じなら、頭の付け根あたりが弱点だ。  一切迷わずにほぼゼロ距離で切っ先を突きこむと、金切り声の断末魔が響いた。









「魔石、、と、これは、甲殻?と鉤爪ですかな」


地面に散らばったドロップ品と魔石をしげしげと見つめて、ウーバイが唸った。

中型犬ほどの大きさの、まるで水晶のような鉱石の結晶にも見えた。



☆鏡面蜘蛛の甲殻

☆等級 A

☆LV ―――

☆シュピネ・シュピーゲルの外甲殻

 込める魔素量に応じて硬度が高くなる



へー、鏡面蜘蛛、 ねえ。

ハイリザードマンの時も思ったけど、素材になると日本語になるの、なんで? 雰囲気でるけど、厨二っぽいな。


あとは、、



☆鏡面蜘蛛の魔石

☆等級 A

☆LV ―――

☆闇の属性を宿す希少価値の高い魔石



☆鏡面蜘蛛の鉤爪

☆等級 A−

☆LV ―――

☆シュピネ・シュピーゲルの鉤爪

 込める魔素量に応じて鋭さが増す



等級的には、ハイリザードマンより気持ち上か。

まあでもエリアボスじゃなさそうだしなあ。

エリアボス、、確か【シュピネ・ケーニギン】とか出てたよな。


あ、! ケーニッヒ! 

ケーニッヒが確か王様だから、ケーニギンは女王ってことか。

マザーから女王サマとか、クラスアップにも程があるやろ。。




結局、釣りだした2体はキッチリと討伐できた。

隠密奇襲タイプの魔物ではあったが、タネが分かれば唯のキラキラした固くてデッカい的だ。

陽の光の入る広い場所に誘い出してパーティで戦えば、勝てない相手ではないよな。

攻撃肢が2本多いのと、一番前の肢に関節がひとつ多いのとで多少トリッキーではあったけどね。


甲殻が硬いから関節を狙える正確さとリーチが必要だけど、2体めはカミーユさんに抑え込んでもらってたからか、あっさりと倒せたな。


「 やー、トールさん凄くないっスか! あんな硬そうなのズバズバッ、って!」


ちっちゃいチャコが鏡面蜘蛛の鉤爪を目の前に掲げる。

アレ、なんか色がピンク色でさ。んで今は先が丸まってるし、サイズ的にもカタチ的にもなんかエロい大人のオモチャにしか見えん。


ほらほら、ばっちいから触っちゃダメだよ?

キミにはまだ必要ないからね。


「 鏡の甲殻の硬さと、リーチですね。 重さはあまり感じなかったね 」


さすがカミーユさん。

冷静で的確な分析。

そうそう、あれだけの巨体の割に攻撃に重さは無かったよな。スピードも今ひとつだったし。

ステルス性に特化はしたけど、肝心の攻撃力が低いあたりかな。 そーいえば糸も吐いて来なかったしな。


「 とはいえ脅威度Aは妥当な所だし、トールの剣技も見事だったよ 」


やあそんなカミーユさん、照れるなあ。


とはいえ単独ならまだしも、アレが何体も居てしかも暗がりで見えにくい状況なら結構ヤバい奴だ。

さっきも思ったけど、明るくて拓けたとこまで逃げないと戦いにすらならん。

その前に気配察知が出来ない冒険者なら、確実に奇襲貰っちゃう。


「 ? 脅威度Aを討伐できたってコトはさ、このパーティって、ランクA相当ってコト?」


はい、ブルーダくん。余計な考察しない。

たまたま型にハマっただけだよ。

慢心は良くないよ?


とは言っても【剣使い】のバフ効果はちょっとえげつないからな。コレもギルドには報告しとかないと後でバレたらもっと怒られそうだよな。


うー、西門の支部長、なんか怖いんだよなーー。





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