部屋が転がり込んできた
半分以上が説教、というゼクスの長くてありがたいお話しを半日聞いてたら、頭イタくなってきた。
救いはあの御婦人のフォローかな。
曰く、「ゼクスさんも今回の昇級ではトールさんに申し訳なかったと思ってるみたいですよ」と。
ホンマかなあ。 アレ、そんなタマかね。
まあ、とりあえず西門前の広場に移動。
ここに大きなお店を構えるのが、リオレでも古参の
大店、テルビア商会だ。
元々は大河レストラの河口にある港街ノーズヘッドの小さな老舗だったのが、リオレの街を立ち上げるのに参画して、街とともに大きくなっていった総合商社だ。
運河の利権をガッツリと抱えているので、いまやこのリオレでは最大と言ってよいほどの規模で、街の経済を牛耳っていると言ってもいいかな。
リオレ商業ギルドの事実上のトップだ。
まあ、その割にはあんまり良くない噂は聞かない業者なので、商売は至極真っ当に営んでるようだ。
取り扱いも生活必需品や食料品などが主で、リオレに数店舗あるお店は、いつも賑わっている。
魔族の婆さん(熟女)のトコとは正反対のビジネスモデルやね。
「 あらぁ? トールさんやないですか。 珍しいでんなぁ 」
そんな大きなお店へ入った瞬間、真正面から声をかけてきたガリガリ細身の男が、このテルビア商会現会頭の次男坊である。
トール氏の貴重な『とある一人』の商人の知り合いだな。
☆トマス・テルビア
☆種族 ヒューマン(男)28才
☆職業 商人(熟練度A)
☆体力 C−
☆魔力 C
☆耐久 D
☆敏捷 D
☆知性 A+++
☆運勢 A
☆加護 風精の加護
☆所持スキル 【商魂】
正直、冒険者をしてるとこの手の商会とは仕事の付き合いでの出入りが主になる。
実際の商品の並ぶ店頭に訪れる機会なんて、あんまりないんよね。
「 最近、エエ調子らしいでんな? もっとウチもご贔屓にしたってもらわんと!」
何故に関西弁なのか、それは謎だ。気にしない。
異世界の商人は、関西弁なのだよ。定番だ。
この男。 トール氏と以前から面識があり、、というか、かなり仲は良い間柄だったようだ。
トールさんが転生してくる直前の護衛依頼元の現場責任者も、この男だったハズなのだが。。。
「 あ、! なるほどなるほど、なるほどっ 、トールさんの今日の御用向き、分かりましたでぇ いやよくぞ我がテルビア商会をご利用くださいましたおーきにさんですわー」
こんな感じで、まあよく喋る。
普通の商人の3人分くらい喋る。
ただ、コイツの凄いのはこの喋りではなくて、独自の情報網だ。
どこそこの誰の家の犬に子犬が何匹産まれたなんてどうでもいい事から、街付き貴族の結構ヤバめの絶対に表に出せないスキャンダルまで。
本人曰く、リオレで起きとるコトはたいがい何でも知っとる、、らしい。
「 ワテ、よー耳が(とーる)いうてねー」
はあ。。
「なーんてオモロい冗談は置いといてー」
いや、オモんない。
たいしてどころか、まったく笑いドコないで?
「 とうとう諦めてクラスBにならはったんやろ? ほしたら家探さにゃ、あきまへんわなあ? 」
・・・コレだ。
一応B級以上の冒険者については、ギルドから発行される名簿に載せられるわけだけど、その発行は半年ごとだ。 次の発行まではまだもう少し先だ。
トールさんの所にギルドから昇級の知らせが来たのがまだ3日前だから、冒険者の中でも知っているのは数人くらい。
なんで知ってんねん、キミ。 キモいで。
「 どないだ? 正解でっしゃろ??」
まあ、家は探してるけど。
残念ながら本日の御用向きはそうでないんよなー。
「 え? 、お茶?? お茶でっか??」
ええ。。 そんなに落ち込まんでもいいやん。
なによ、この店は、お茶買いにきた程度のお客は相手してくれへんのかい?
「やいやや、そんなちゃいますやん? お茶、お茶でっしゃろ? さすがトールさん、お茶に目覚めはるとはエエ趣味されてますわー」
まあえーわ。
茶葉の名前は分からんのだけど、冒険者ギルド本部のゼクスのトコに納めてるの、どれかな?
アレ、欲しい。
カネなら、あるんやで。
「 ん~、たしかアレは、、ちょっと待っとくなはれや?」
言いながら店の奥の方へとフェードアウトしていくトマスを目で追いながら、店内をザックリと見渡す。
もうすぐ夕方ということもあって、客足は引いているようだ。そんなには忙しそうではない。
それでもどことなく活気に満ちた良い店だ。
明るい店内に、種類ごとに整頓された棚。
店員さんも適度に配置されていて買いやすい雰囲気だなあ。
口コミなら4は堅いな。
間違っても氷の弾丸で威嚇されるなんてコトは、このお店では無いのだろう。
繰り返すが、魔族の婆さん(熟女)のトコとは正反対のビジネスモデルやね。
アレ、たぶんクチコミ1・8くらいやろ。
繰り返すが、、
「なんじゃ? ため息なんかつきおって辛気臭い」
めっちゃ柔らかそうな上質の布で元魔王現呪物ナイフを丁寧に磨いていた婆さん(熟女)が、チロリと睨むようにこっちを見てくる。
いやー、こうゆうトコなんよ。
この店が、クチコミ1・8くらいなのはさ。
液体窒素並みの極低冷気も氷の弾丸も、今のところは向けられてはいないけど、、全くフレンドリーさは感じられないよねーーー。
いやてかさ、ナイフ拭き上げてウットリするのヤメて?
すっかりと日が暮れた暗い店内で、腰の曲がった老婆が怪しげな短剣を、さらに怪しい目つきで恍惚と撫で回しとるとか、ビジュアル的に即通報案件だからね?
「 おん? おまえ、B級に上がっんだね?? 」
あ? ああ、そういえばこの婆さん、【心眼】とかいうスキル持ってたっけ?
「ステリア様の従僕ならば、少なくともA級くらいの実力は欲しいところじゃがのう」
いや、従僕てなんやねん。
どう見ても飼い主とペットやろ?
(なんじゃおぬし、 妾のペットになりたいのかえ?)
ペットからエサ貰う飼い主がおる世界なら、そうなるかな。
(うまいこと言うのう )
「おまえ、何かまたステリア様に失礼な事をぬかしてはおるまいな??」
いーえー、べーつにーーー?
「コヤツめがまたステリア様を蔑ろにするような事がありましたら、どうかこのグライトフめに御下命くださいませ。 心の臓が止まらぬ程度に氷漬けにしてやりますゆえ」
おいおい、また物騒なコト言い出したな。
で、何かまた念話で会話しとるみたいやな。。
「 、、 なんと、その様な事情で、。。」
またチクっとんのとちゃうやろなあ?
来るなら来いや。
ババアの冷気攻撃くらいなんぼでも【気化】したるでえ?
「おい、 トール。 おまえ此処に部屋を貸してやる。 ステリア様の御威光をありがたく思え!」
、??
・・・、 はいぃ??




