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【砂の宮殿】に行こう

「おう、ハンザ!  なんだトールさんか??」


【運河の畔亭】の朝食を出し終えてひと息ついた頃に、食堂の片付けをしていたアビイの元に小さな男の子がやってきた。

まだ10歳にも満たないような幼い子ではあるが、冒険者ギルドの外套を羽織った中々に凛々しい出で立ちである。


「アビイさん、おはようございます。 あ、これトールさんへギルドから。」


肩掛けの革袋から出してアビイに手渡された大きな封筒は、見た目よりもズッシリと重い事から、中身は羊皮紙だと思われる。

いつものメモよりももっと重要な事が書かれているのだろう。


「あー、トールさん今朝から出てて、いま居ないから預かっとくよー」


つい最近、西門街の冒険者ギルド支部の雑用見習いに入ったこの少年。

宿泊客のトールが山賊団のアジトから助け出した子供らしく、年頃的にちょうどアビイの弟分くらいである。

まだ入って数日めくらいなのに、さっそく街中を元気に駆け回っているのを目にしていた。


「お、そーだコレコレー」


カウンターの向こうの厨房に素早く引っ込んで、両手にひとつづつ茶色いパンを掴んで戻ってくると、そのうちのひとつをアビイが手渡してきた。


「新作だぜ? 美味えぞーー!」


言いながら残ったもうひとつにガブリと噛りついて食べ始める。

ならってハンザも、まだほんのり温かいその茶色いパン?に齧りついた。


( ッ!? むめえっ!)


じゅわっ、っと口の中に油っ気がひろがり、その後に中に仕込まれた甘辛い具材の味が加わってくる。

貧しい村育ちだったハンザにとっては、このリオレに連れてこられてから、それまで食べたこともなかったような美味いモノばかりであった。

だが、このパン?はそんなレベルじゃなかった。

語彙力に乏しいハンザなので、全く上手く説明などできなかったが、とにかく美味すぎた。


「へへっ中身はトールさん直伝のキーマカリーだぜ? パン生地で包んで焼かずに油で揚げるのがミソだよな」


アビイが自慢気に何か言ってるが、ほとんど理解できないハンザであった。

というか、それどころではないのだ。


残りのパンは、秒で無くなってしまった。









はい、そんな訳でね。

今日はリオレからほど近い魔物のリポップスポットの、【砂の宮殿】に来てます。

あ。もちろん怪物坊主こと祭祀教司祭のウーバイくんも一緒だよ? パーティだからね。


で。

【砂の宮殿】といっても、別に本当に砂でできた建物があるわけじゃあない。

まあ確かに宮殿はあるんだけど、砂じゃなくてちゃんとした建物だ。


リオレと運河で繋がっている大河レストラを、少し下流に行ったところ。

広大な砂丘状の地形が拡がっている場所がある。

大河レストラの上流に砂の素になるような岩質の地形も乏しいので、自然に堆積しているものではない。

魔素が湧き出す地脈が走り、長い年月のうちに環境が変質してしまった結果が、この砂丘なのだ。


周囲の緑溢れる環境から一転、砂漠のような荒涼とした大地が広がるこのリポップスポットには、砂に特化した魔物、サンドイールが現れる。

名前の通りだと、砂のウナギ。

けど実際はウナギというより、、ミミズだな。

巨大なミミズ。まんま砂の◯星のアレ。

異世界定番だねーー。トールさんホッとするよ。


で、この砂ミミズ。

身体の大半は砂の中に潜めて、でっけえ口をガバっと開けて、砂ごと獲物を喰らうという行動をとる。

どうも獲物の歩く振動を感知してるっぽい。

足元の砂がいきなり割れて、丸呑みにされるとかちょっとシャレにならんよな。。

しかも戦っているその振動で、他のサンドイールも寄ってきちゃう。超絶ウザい。

なので、よっぽどの用でもない限り誰も討伐しようとか思わない魔物だ。


通常サイズでも約6〜7メートル。

魔石はヒトの頭程のサイズで、めちゃめちゃ高価で取引される。

にも関わらず、冒険者に人気がないのは習性がウザいだけしゃない。


魔石ドロップ問題だな。


コレ、うまく引きずり出して倒さないと、砂の中に埋もれた状態で魔石がドロップしてしまうんやな。

もし砂の中にドロップしてしまったら、探して掘り返すのがアホほど大変なんだ。

仮に探すのにほじくり返してると、その気配で別のサンドイールが寄ってきて、地中をかき混ぜちゃうので、せっかくの魔石も永遠に見つからんて、ことになるってわけだ。


その厄介者のサンドイールだが、ある条件を満たした時に、一時的に活性が非常に低くなるのだ。

その条件とは、エリアボスであるサンドボアイールが討伐された時だ。


「 しかし、本当に静かなものですな 」


砂の上を歩いてあるいて、もうすぐ昼頃かな。

だんだん飽きてきたな。

砂漠と違ってギラギラと高熱が照りつけてるわけじゃないけど、日陰もなんもないから地味に体力は消耗する。

隣を歩いているウーバイくんは、時折淡い光に包まれているって事は、【オートヒール】をかけてるんだな。


数日前、リオレ冒険者ギルドのB級選抜試験がこの【砂の宮殿】で行われ、なんとエリアボスのサンドボアイールを討伐している。

なのであと数日は、この【砂の宮殿】エリアは、ほとんどサンドイールと遭遇せずに抜けられるはずなのだ。


あー。しんどい。

ウーバイくん、【ヒール】よろ。


で、なんでこんな所に来てるのか、というと。

まあ、借りを返すためだ。


「まあ拙僧、トール殿が規格外なのは承知しておりますが、、」


(  ほんに、面白い小僧よの )


「まさか意志を持つナイフまで持っておられるとは、、いやはや、世界は広いひろい」


この呪物ナイフ改め元魔王。

いつの間にかウーバイくんともコミュニケーションとっていやがる。


「酒場で急に話しかけられた時には、随分と肝を冷やしましたが、話してみればなかなかの御仁。 拙僧敬服しきりですなっ」


いや、キミのその何でも受け入れてくスタイルにも敬服しちゃうけどね。


( 懐の広さは、男子の甲斐性じゃぞ? )


あー、はいはい。

すんませんねー、甲斐性なしで。


で。返さなきゃいかん借りってのが、コイツだ。

山賊団に攫われて来てたあの子供らを護ってもらうために、コイツは結界を張っていたらしい。

何一つ出入り不可能な強力なヤツな。

メリッサさんも引っくるめて全部。

おかげで後でめちゃくちゃ怒られたけど。


まあでも、約束は果たしてくれたわけだ。


でコイツはその貸しを、アンデッド系魔物を吸わせる事でチャラにしてやる、と言ってきたのだ。

スケルトンとか、グールとか、レイスとかの、アレ等やな。

大好物なんだそうな。


だけどこのアンデッド系。

リオレ周辺でコイツ等が湧くリポップスポットは、無いんだよな。。

唯一、巣食ってるのが、この【砂の宮殿】最奥にある本物の宮殿廃墟ってわけ。


なんでも大昔の王族の離宮だったらしいけど、このサンドイールが巣食うリポップスポットに飲み込まれて遺棄されたものなのだそうな。

それが今や、どういう訳かアンデッド系の魔物の巣窟となっているということみたいだな。

まあ、リオレの冒険者にとっては、完全に探索の対象外な場所だ。

だっておいそれと近付けないもん。


でも、普段ならサンドイールのせいで近寄り難いこの離宮跡でも、今のタイミングなら余裕で行ける。

アンデッド特効といえば、僧侶。

よし、ウーバイくん手伝い給え、となったわけだ。


「いやまあ拙僧、特にアンデッドが得意という訳ではありませんぞ?」


え? そーなの??

僧侶がアンデッドに強ツヨなのって、異世界定番やないの??


「おそらくトールどのが仰っているのは、【聖騎士】や【聖剣士】の事ですな。」


いわゆる光属性のスキルでも、治癒系と戦闘系に分かれるみたいで、ウーバイくんの【オーバーヒール】をアンデッドに掛けても、全く何の効果もないのだとか。。

アンデッドに特効なのは浄化作用であって、治癒は全く効果なしなんだって。。


まじかー。

当てが外れたなーーー。


(たわけが、そもそも浄化されては妾が吸収できんではないか。。)


ちーーーーん。


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