瞬殺のゲオルグくん
☆ゲオルグ・ゲラート
☆種族 ヒューマン(男)32才
☆職業 山賊団頭(熟練度A)
☆体力 A
☆魔力 C−−
☆耐久 B++
☆敏捷 D
☆知性 C+
☆運勢 B−
☆加護 ―――
☆所持スキル 【犯罪者】
☆【犯罪者】
☆等級 E
☆LV 17
☆多く犯罪行為を働いた者に付くマイナススキル
知性と運勢にマイナス補正
なるほどね。
マイナススキルなんてのもあるのか。
ロクな警察機構もない未発達な社会の、この世界。
一応、これでも悪さはできないようになってるんだな。
それにしてもこの男。
山賊団頭、てある。
でっかい血錆の浮いた蛮刀を担いだ、ザンバラ髪に髭面のいかにも、な風体だな。
「 手下どもが上手く引き付けてる間に、トンズラしようとしたらよ、まあだ居やがるよ くそが 」
雑に踏み込みながら蛮刀を袈裟に振りかぶる。
あかん、てんで素人や。腰のコの字も入っとらん。
こんなんが熟練度A? 山賊団の頭??
冗談やろ??
踏み込みのベクトルを見てから、素早く右足を引きつけると同時に弓なりに右手で抜刀して蛮刀の軌道の真横から弾くように上腕を振り切る。
キンッ 、と甲高い音と共に蛮刀は刀身の根元から先が切り飛ばされて消え失せる。
男の手にはほとんど柄だけになった蛮刀が残った。
現代日本に居た頃のトールさんなら、ココで終了なんだろうけどな。
こっちの世界に馴染んできちゃったトールさんは、コレで無力化出来たとか一切思えなくなってんだ。
「 あ ? 」
返す腕で男が踏み込んでいる左膝から下を斬り、さらに跳ね上げた刀で左肩を削ぐ。
振り切る反動を利用した音速の刃は、人間の身体などまるで豆腐でも切るかのように容易く斬断する。
ほんの一拍おいて、切断面がズレて血が吹き出し、聞くに耐えない汚い男の悲鳴が響く。
自分の肚の底が冷え切って、何の感情も湧いてこないな。 ヒトを斬ってる感覚じゃない。
リザードマンやアラクネを斬ってる感覚と変わらない気がする。
違うのは、こいつらは死んでもモヤみたいにならんし、魔石も落とさんコトくらい。
痛みに悲鳴をあげてのたうち回る男の背中を、乱暴に脚で踏み抑えて首筋に切先を押し付けた。
「いぃぃぃぃっッ!! ひぃッ!」
汚いし、うるせえ、コロすぞ。
トールさん、いま最高に胸糞悪いんよ。
涙と血と鼻水が泥に塗れてグチャグチャになった髪がへばりついた男の首に、更に切先を押しこんで黙らせる。
「おい、トール! そこまでだ!」
火の手が回った建物の脇から、見慣れた山高帽とロングコートがみえた。
【民の護り手】のキャンデラさんか。
「ソイツも活かしておきたい。 司祭さま、頼みます」
キャンデラさんの後ろから、これまた見慣れた怪物坊主が出てきて、地面にイモムシみたいに蠢いている山賊の男を覗き込んだ。
「トールどのは、お怪我は?」
ないよ。こんなザコにやられるわけない。
ウーバイくんこそ、怪我はないのか?
「はっはっは! 拙僧全く出番がなかったですぞ」
よく見るとウーバイくん、丸腰だわ。
笑いながら、男の左膝と左肩に手をかざし、【ヒール】をかける。
【ヒール】は傷口の接合や止血はできるが欠損は治せない。しかも光の加減からみて、コイツ最小限度しか効果を籠めてないな。
「 チラッとしか見ておりませんでしたが、相変わらず見事な太刀筋ですな!」
いやいや、キミの【ヒール】も絶妙だよ。
かけた途端に声にならん悲鳴あげて、さらにのたうち回ってたけど、何したんよ?
痛みで気を失ったのか、男は泡を吹いて白目むいてピクピクしとる。
キャンデラさんがため息顔で覗き込んできた。
「メリッサは、どうした?」
あー、頭にきて忘れてた。
下のバラックで、攫われてきてた子供を保護して貰ってたんだった。
呪物ナイフも回収しとかないと、な。
「そうか、奴隷売買も、か 」
後始末も大変そうだよなー。
あと、メリッサさん、怒ってたなー。
やべーなあ。 試験、落ちたかな。。。
リオレ冒険者ギルド本部の一室。
その部屋には各支部の支部長と本部の幹部が、ズラリと揃っていた。
「では、【砂の宮殿】でのクラスB選考は、以上で異論ありませんな?」
朝から始まったその会議の議事進行は、ギルドの財務部門を取り仕切るゼクスが執り行っていた。
「続きまして、並行されていたクラスB選考の山賊団討伐組の評価について、、」
その提起にあわせて、テーブルについた各人が手元の資料を何枚かめくる。
「今回、特別枠での選考となった3名ですが、、何かご意見、ご質問は?」
ジロリと睨むようにゼクスが一同を見渡す。
財務、つまりギルド全体の財布を握る男の眼力である。発言権の弱い支部の支部長などは、それだけで萎縮してしまうというものだ。
ご意見・ご質問は?と問われているということは、もうこの3名の昇級は決定事項なのだ。
だが。
「 カミーユとバースは、実績も充分。 問題は、このソロのトールだな」
そんな中で、やや低めの声があがる。
手元の資料をトントンと指で叩きながら東門支部の支部長ライアスは、トゲのある視線をゼクスに投げかけた。
「 流石にこれからクラスBで、ソロは有り得んだろう?」
「お言葉ですがライアス支部長、トールは現在祭祀教司祭とパーティを組んでおりますが」
西門街支部長のケント・タリスマンが、すぐにひと言添える。
この二人は以前から何かと対立することが多くあった。
貴族出身のライアスと、国軍叩き上げのケント。
反りが合わないのも、当然だ。
「 ふん、教会の紐付きで、しかも期限付き。 私はねタリスマンくん、ソロ冒険者では危険度の高いクラスBの依頼は如何なものか、と問うておるのだよ?」
大きく両手を広げて、大げさな口調でライアスは立ち上がった。
さも、ソロ冒険者の為を思っての発言であるかのようだが、この場の誰もが真意がそこにないことは見抜いていた。
ライアスとは、そういう人物なのだ。
「しかも見給え、試験監督のクラスA冒険者からは感情制御不足からの命令違反を指摘されておるではないか?」
実際はカミーユにもバースにもいくつかのマイナス評価はあったのだが、そこに触れるつもりは全く無さそうな様子である。
「とはいえ、今回トールは賊の首魁を取っておるわけだしな」
ゼクスが再びジロリとライアスを睨む。
この二人もまた、犬猿の仲である事は周知の事実だ。
だからこそ、ライアスはトールの昇級に噛みついたとも言えるのだが。
「領主様からの感状にもホレ、トールの名も入っておる。」
懐から分厚い革包みにくるまれた羊皮紙を出すと、一同に見えるようにテーブルに広げてみせた。
これは予想外だったのか、慌ててライアスはテーブルの上の羊皮紙を見入る。
「こ、これは、 、たしか、に」
わずかにライアスのこめかみが浮き上がる。
こんなものがあるなら、何故先に出さんのだとでも言いたげな表情だ。
そんなライアスを満足気に眺めて、ゼクスはニヤリとケントの方に目配せた。
この手の駆け引きでは、ゼクスのほうが一枚も二枚も上手であるのもまた、周知の事実なのであった。




