負けるなハンザくん
オレのなまえはハンザ。
今年でたぶん、6歳か7歳。
歳の割には背が大きい方で、とーちゃんに似たらしいけど、会ったことねーからわかんない。
ぼーけんしゃ、とか言ってたな。
かーちゃんは村で雑用みたいなことしてる。
にーちゃんとねーちゃんは、いたけど、いつの間にかいなくなってた。
ちょっと前、なんか怖えオッサンに連れられて村から出てココに来た。
、、売られた、とかなんかよくわからねーコト言ってたけど、ろくにメシも食わせてもらってねえからハラが減ってさ。。。
入っちゃいけねえ、っていう山ん中に入って、、たぶんこの怖えオッサン、やべぇ山賊なんだってわかった。
オレ、攫われてきたんだな。たぶん。
ココには他にも似たような歳の子供が何人もいて、首をクサリでつながれて、、逆らったらなぐられた。
泣くのは、ヤだったからがまんした。
よけいになぐられたりしたけど、オレ頑丈だからヘーキだったぜ。痛えけどさ。
ここでも村とおなじで、水汲みとか荷運びとかの雑用してた。
メシは、もらえたりもらえなかったり。
ただ首の鉄のやつが重いし擦れるし冷てえし、そっちのがヤだった。
でも、こんな山ん中なのに、怖えオッサンはたくさん居て、武器とか持ってるし泣いてうるせえ子とか簡単に殺して下の川に捨ててた。
逃げようにも、こんな山ん中でどこにも逃げらんないし、オレもいつ殺されるのかわかんなくて、。
ココに来て、山にも少し慣れたある日の夜。
いつもと同じで壁にクサリでつながれて、他の小さい子と一緒になってうずくまって寝てたら、隣ですげえ音がして埃がブワッてまった。
まえに村に雷が落ちた時みたいな音だった。
その後もそこら中で、なんかでっけえ獣でも暴れてるみたいな音がして、上からもモノがバラバラ振ってきた。
脇にいた小さい子の上にかぶさって、無理やり口をふさいでた。
泣いたりすると殺されるからさ。
「我々はリオレの冒険者だ! 攫われてきた子は、居ないかっ?」
戸板の向こうでそんな声が聞こえた。
ぼうけんしゃ、って言ってた。
ぼうけんしゃ、って、とーちゃん?
え?
ゆっくりと体を起こして、声のする方をさがして目をあげたら、目の前にあったはずの壁が、いきなり消えちまった。
その向こうには、なんか細っそい棒っきれを持った男の人が立ってる。
「 攫われてきたのか?」
さっきの、ぼうけんしゃの声だ。
ぼうけんしゃ、って、とーちゃんなんだよな?
「 、と、 とーちゃん?」
あれ? オレなんかへんだぞ。
怖くも悲しくもないのに、なみだが出てきてる。
なんだよ、これ。
泣いたら、殺されるのに。。
邪魔な瓦礫を消しまくっていたら、岩の壁に鎖で首をつながれた小さな子供が数人、粗末な敷き藁の上に蹲っていた。
そのうちのひとり。
他の子供より少しだけ年上っぽい男の子に、いきなりとーちゃん呼ばわりされた、、、トールさんピチピチのハタチなんだけど(泣)
その男の子がグズグズと泣きだすと、つられて他の小さな子も、泣き出す。
ただ、栄養失調なのかみんな泣き声さえもか細い。
あー、胸くそ悪い。
こんな小さいの、親から引き剥がして他所に売っぱらおうとか。
まだまだ甘えたい盛りじゃん。
刀を鞘に仕舞い、下げ紐を締める。
くそ、悪趣味な鎖とかしてんじゃねえよ。
【気化】で、全部消し飛ばしてしまう。
ガリガリの首にあんなもんつけてたからか、みな一様に擦れて炎症をおこしてる。
一番大きな男の子は、、、あんまり跡がなさそうだな。
「 おい、トール! って、なるほど、」
後ろからメリッサさんの声がする。
ごめん、何か今喋るとトゲっぽくなりそう。
振り返らずに、一旦深呼吸。
「ぼうず、ここにはお前の他に子供は何人いる?」
なるべく荒っぽくならないようにしてるけど、どうかな。まだ怖いかな。
「え、あ。 あっと、オレのほかは5人、 ぜんぶココに居るっ」
お、そーか。ならよかった。
この子、なかなか要領いいな。もう泣きやんで涙も拭ってる。
「よし、 じゃ、このお姉さんが付いてくれる。 お前にはこれ貸してやるから、ほかの子を守ってるんだぞ?」
ポンポンと頭を撫でて【無限収納】から呪物ナイフを取り出し、男の子に握らせる。
ついでにポーションも何本か地面に置いておく。
「おいこらトール、おまえ勝手に」
「すいませんメリッサさん、ちょっとココ頼みますね ポーションは、この子らに」
言い終わる前に瞬脚で一気に崖を跳び上がる。
急に動かしたにも関わらず、筋肉も骨格も悲鳴を上げることなく身体を上へ上へと押し上げた。
気分が昂ぶってるんだな。
自分でも頭に血がのぼってるのがわかる。
下でメリッサさんが何か怒鳴ってるけど、まあ知らんよ。
(なんじゃおぬし、同情かえ?)
この念話、離れても通じるんだな。
ばーか、そんなんじゃねえよ。タダの憂さばらしだよ。
( なるほどのう、ま、貸しじゃからな)
あの呪物ナイフの元魔王なら、あの子とその周りを危険から守るくらいは容易くやってくれるだろう。
メリッサさんを信用してなくはないけど、念のためだ。
上の段の本拠は、すでにボロボロだった。
建物の半分は崩れて火の手があがっている。
山の上の方からも他のパーティが挟撃しているらしく、主な戦場はそちらに移っているのか、ここには人影は、ない。
あ、この爆発は、火薬だな。
独特のツーンとした匂いが漂ってる。
「んあっ? ぬぁんだよ、コッチにも居やがるじゃねえか」
そうそう。
火薬の匂いの向こう側から、気配察知にイヤな気配が引っかかってたんだよな。
なんか、こうさ。
虫酸が走るような、イヤな感じがさ。
鯉口に添わせた左手親指で、カチリと鎺を切った。
さあ、やろうか。憂さばらし。




