昇級試験は盗賊狩り
【迷いの森】から戻った翌日。
宿にギルド本部から呼び出しが来ていたので、朝から中央街に出かけていた。
ゴミゴミと雑多な街並みの西門街を抜けて中央街に入ると、一変して区画整理され整然とした街並みになる。
あ。
スキル【剣使い】は、やっぱりLVが上がってた。
☆【剣使い】
☆等級 A
☆LV 21«new»
☆剣を扱う時に常時発動
重量操作・体力増加・体捌き(オート)・威圧効果(大)・瞬脚・気配察知«new»
気配察知が加わってた。
昨日のアラクネ狩りで生えたようだな。
なんかいかにも剣の達人、みたいでアガるね。
ただこれも【剣使い】の派生スキルなので、剣を下げてないと発動しないようだね。
まあ、呪物ナイフを常に腰に下げてれば実質常時発動なんだけど。
落としたり壊したりするとややこしい事になりそうだから、早めに代わりになるナイフを調達しないとな。
悲しいことに解体用ナイフでは発動しなかったのよね。
この辺の線引きって、なんなんやろな。
あと、LVの上がりも少し鈍くなってきた感じ。
やっぱり上のクラス?のスキルだけに経験値も多く必要なんだろう。
そうこうしているうちに、ギルドの本部前へ。
この前と同じく受付けで要件を伝えると、すぐに奥の応接部屋へと案内される。
今日は最初からお茶がでてきたな。
この前、おかわりまでもらったから、気に入ったのバレたかな?
これ、ジャスミンティーみたいないい香りだよな。
どっかで買えないかな。あとで聞いてみよ。
「おう、待たせたか」
これまたワンパターンなセリフで、本部の買取部門のボス、ゼクスが入ってきた。
「 司祭とは上手くやってるか?」
どっかりと応接ソファに腰を下ろすと、すぐ後からさっきお茶を出してくれた妙齢のご婦人が、そっとゼクスの前にお茶を置く。
この人、妙に所作がよいな。
まあ、ウーバイくんとは仲良くやってますよ。
この前も教会のお仕事を手伝わされたしね。
「ほう、魔草を、な。 同じ品質で今度ギルドにも納品できるか?」
なんだよ喰い付くなあ。さすが買取部門。
あー、いちおう昨日も少し採って来たのがあるよ?
群生地ほど多くなかったから、三束くらいだけど。
「 うーむ。なるほど瑞々しいな。 あとで教会に問い合わせてみるか。。 とはいえ、時間経過無しのマジックバッグとなると、、採算的には難しいな。。」
まあ、そうだよな。
いうて、たかが魔草だ。買取り金額もそこまで高額じゃない。
高価なマジックバッグを使って採算が取れるもんじゃないわな。
まあ、教会なんかは採算とか関係ないのかも知れんが。
「 これは、買い取って構わんのか?」
ああ、いーよ。
たまたま目に入ったから採ってきただけだし、量もしれてるからね。
ただ、教会の錬金術師に教えて貰ったやり方で、丁寧に採ってきたから、品質はバッチリだと思う。
てか、今日の用件て他にあるんよな?
「ああ、お前 昨日の昇級試験の説明会に来なかったそうだな?」
へ? ナニそれ?
トールさん初耳よ??
「初参加の割に、いい度胸じゃねえか、お?」
いやいや、そんなの知らんかったし。
え? ああ、そいやライアさんになんか紙もらってた、、かなぁ。
「 まったく、まあお前とバースは、来るとは思ってなかったけどな」
残念な子達を見る目で見ないで(泣)
だって、自分から進んで受けるんじゃないんだから、興味なんて沸かなかったんだよ。
あ、たぶんバースくんは只のアホで忘れてたんだと思うけど。
「一応こちらが昨日の説明会の分の資料です。」
ゼクスの後ろに控えていたご婦人。
抱えていたバインダーから数枚の書類を差し出してくれた。
ふむふむ、場所と、内容、あと地図か。
「今回の試験会場は【砂の宮殿】。 の、予定だったんだが、数名分が急遽変更になった。」
ため息交じりにゼクスがもう一枚書類を付け足す。
なになに、、えー、と。
うえっ、!?
まじか。 こんなん、試験とちゃうやん?
「 領都リオレと港町のノーズヘッドを結ぶ街道沿いに出没が確認される山賊団の摘発。。 まじすか?」
思わず声に出してもうたやんけ。
まあ、対面に座るゼクスも、こめかみがピクりと動いて、つま先も不機嫌にタップしとる。
かなりご立腹の様子やな。。
「 本来ならこれはリオレ駐在の騎士団の仕事だが、もう2度に渡って空振りしている」
犯罪者の検挙や暴動の鎮圧なんかの荒事の対処には、この国では軍ではなく騎士団があたる。
まあ、騎士の誉れだのなんだのの昔はさておき、騎士団なんて戦争でもなければやる事なしの穀潰しだからなー。
この平和な時代においては、警察と軍隊を兼ねて運用されているような感じだな。
そんな緊張感が欠けた暴力組織だ。利権と金にまみれた不正の温床になってるなんて噂も、よく耳にするしな。
ドコの世界もおんなじなんだな。
「 、で、騎士団内での内通が疑われて、業を煮やした領主様采配で、コチラに回って来たというわけだ。 未来のランクBも参加させよ、と」
あ。なるほどね。
ガサ入れの情報が漏れてて逃げられてる、と。
領主にしてみれば自分の息がかからない騎士団なんぞよりも、扱いやすい冒険者に踏み絵を踏ましとこう、って感じなんかね。
いや、それでもさ。
冒険者も、盗賊の摘発を依頼で受けることはある。
でもそれはランクB以上の冒険者しか受けられない決まりになっていて、それこそがトール氏がC級で留まっていた理由の一つでもあるのよ。
青田買いにもほどがあるわ。
「まあ、言いたい事は分かる。 なので今回この試験は数名しか受けさせん」
あー。その数名が、トールさんなのね。。
他は?
「 あとは【民の護り手】のバースと、【神樹の集い】のカミーユの二人だ。 お前を含めたこの3名は、ランクCでは突出しているからな」
え? 三人だけ?
「んな訳あるかっ! 討伐の主導はランクAの選抜パーティーが担う。 お前らはその指揮下に入る形だ」
、だよねー。
あー、びっくりした。
どこのブラック企業かと思っちゃったわ。
魔物相手の普段の依頼だって命掛けではあるけども、犯罪者とはいえ対人のガチの戦闘となれば重みも変わってくるからな。
「 そんな事情だから俺が手心を加える事も出来んのだからな。 おまえ、もし手を抜いて試験に落ちてみろ冒険者登録も剥奪してやるから、覚悟しておけ。」
あ。前言撤回。
やっぱ、ブラック企業だったわ。 ちーん。
「こ、これは、 確かにステリア様の御声 」
あー。
なんかソッコーで喋っとるみたいやな。
脳内会話なので、何喋ってるのかはトールさんには聞こえないけどさ。
ギルド本部からの帰り道。
西門街の路地の奥にある魔族の婆さん(熟女)の道具屋へ足を踏み入れたとたん、腰のベルトに差した呪物ナイフがブルリと震えて、店の奥から婆さんの声がした。
「こら!おぬしトールといったな! ステリア様に失礼な物言いをするでないわっ!」
で、。
凄い剣幕で突っかかってきた。
なんだよ、ペチャパイお子ちゃまボディめ、チクリいれるとかダセェまねしおって。
「ええいっ黙らんかっ! ステリア様の容姿を愚弄するでないっ!」
ぷふっ。語るに落ちとるで?
なるほどね。 破界の魔王さまは、お子ちゃまボディであらせられる、と。メモメモ。
「 あ、や。 このグライトフ、決してそのような、 」
あーー。なんかモメとるなー。
二人しかおらんのに、三人分の会話で、うち一人は念話みたいな脳内会話。
ややこしいけどなー。
てか、魔族ってさ。 長く生きとるのに、アホが多いのかな?
( おぬしっ! いぃ言っておくが、妾ホントにバインバインのナイスバディじゃからなっ!!)
あー、はいはい。
このトールめ、魔王さまのバインバインな復活を楽しみにしておりますーーーー。笑。
てか、今日はその魔王さまのかわりに腰に下げておくナイフを探しにきたんだよ。
婆さん、何かええナイフちょーだい。
あと、山賊狩りに行くから諸々消耗品も、な。




