◆第5話『女優たちの饗宴──清楚と本能、その裏で隠された真実』
都内某所、黒塗りのワンボックスカーが次々と到着する。
この日、スタジオに集まったのはAV界の“生ける伝説”たちだった。
佐倉絆。枢木あおい。美谷朱里。七沢みあ。河合あすな。
栄川乃亜、小野六花、羽月希、矢埜愛茉、蒼井そら。
神咲詩織、湊莉久、かすみ果穂、初美沙希、古川いおり、成瀬心美、椎名そら――
そして、遅れて現場入りしたのが、如月美咲だった。
「……今日、マジで“オールスター”じゃん。引退組も混ざってるとかエグい」
「まさか蒼井そらまで来るとは……神か?」
「こんなん、美咲ちゃんでも緊張するんじゃ?」
控室のざわつきの中、美咲は落ち着いた表情で軽く会釈し、挨拶を交わしていく。
そのすべてが、10年以上業界に生きてきた“本物の女優”の所作だった。
(……今日も、私は“母”じゃない。“妻”でもない。“如月美咲”でいなきゃ)
メイクを受けながら、彼女は心の中で呟く。
夫でありマネージャーの俺・悠人は、モニター室の隅で機材の確認を終えながら、美咲の横顔を見つめていた。
誰も知らない。
この“伝説女優”たちに囲まれている彼女が、双子の母であり、家では子どもにミルクをあげていることを。
◆
今回の企画タイトルは――《美しき艶、四季の宴 ~女優たちの百花繚乱~》。
構成は全5シーン。
•春:枢木あおい、河合あすな、七沢みあ、如月美咲。
•夏:小野六花、湊莉久、成瀬心美、神咲詩織。
•秋:美谷朱里、羽月希、矢埜愛茉、栄川乃亜。
•冬:椎名そら、古川いおり、かすみ果穂、初美沙希。
•総集編:蒼井そら、佐倉絆、如月美咲の“伝説トリオ”による濃厚接触。
「如月さん、最後の“ソラ様絡み”……正直、楽しみにしてます」
スタッフが興奮を抑えきれない様子で言う。
「ふふ、緊張しますね。私、まだ蒼井さんと共演したことないので」
「いや、間違いなく業界史に残りますよ、今日の撮影」
その声がプレッシャーに聞こえないよう、美咲は優雅に微笑んだ。
だが――心の奥では、焦りと緊張が渦巻いていた。
(この中に、一人でも“私がママであること”を疑ったら、終わりかもしれない)
◆
撮影本番。
春シーン。美咲は和装風のセミシースルー衣装で登場。
枢木あおいが妖艶な笑みで手を引き、七沢みあと河合あすなが左右から彼女を包み込む。
「ちゅっ……くちゅ、んっ……あっ……こんなに濡れて……」
「もっと奥、触って……そこ……あぁん……っ」
4人が柔らかに絡み合い、カメラは滑るように舐め回す。
衣擦れと吐息、唇の音と、湿った愛撫の交錯――
この空間に“母”も“家庭”も存在しない。
すべては“演技”であり、“官能の儀式”だ。
そして、最終シーン。
佐倉絆、蒼井そら、如月美咲――業界を築いた伝説が3人、ベッドの上に並ぶ。
「じゃあ、美咲ちゃん、先に私に……触れてもらえる?」
蒼井そらが、まるで女神のように笑いながら囁く。
「……失礼します、先輩」
美咲の指が白い肌を這い、唇が鎖骨に落ちる。
キス。
絡む指。
合わせたままの目。
美咲は、唇の間で震える自分を押し殺す。
(私が、双子の母親だなんて――誰にも想像させてはいけない)
撮影は、そのまま無事に終了した。
◆
控室に戻った美咲の前に、蒼井そらが静かに歩み寄った。
「……ねぇ、美咲ちゃん。ちょっと、いい?」
「……はい」
二人だけのスペース。
ソラは、にこっと笑ってこう言った。
「……あんまり無理、しないでね?」
一瞬、美咲の目が揺れる。
「えっ……どうして?」
「なんとなく。女ってね、同じ“母”なら、分かるのよ」
――バレた?
心臓が跳ねる。
でもソラは、それ以上、何も言わなかった。
「……すごく綺麗だった。あれだけの役者の中で、ちゃんと中心にいた。さすが“如月美咲”だね」
「……ありがとうございます」
その瞬間、美咲の背中に、ぞっとするような温かさが走った。
――この世界では、誰かにバレても、口にしない人間もいる。
◆
帰宅後。
双子はもう夢の中だった。
バスローブ姿のまま、美咲は俺の肩に寄りかかる。
「……バレたかもしれない。ソラさんに」
「……何か言われた?」
「“母には分かる”って。……でも、それだけだった」
しばらく沈黙が落ちたあと、俺は静かに言った。
「……それでも、お前はまだ、“如月美咲”を続けたい?」
「うん。……むしろ、誰かに知られたって、“演じる”ことを辞めたくない」
「なら、俺は見届けるよ。バレる日まででも、バレた後でも」
そして、その夜。
撮影で見せた艶をすべて脱ぎ捨てて、
彼女は“妻”として、俺の腕に身体を預けてきた。
――俺だけが知っている、美咲の“素顔”は、世界のどこにも映っていない。
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