第19話
………………
「やあやあ、赤場くん。彼女の名前は聞けたかな? それを知ることができないのが非常に歯痒い気分だよ。まあ、彼女は優しいからね。君が変態ストーカーだと思われていても、きっと彼女は君の真摯さに応えてくれるだろう。だから、これから話す内容で彼女についてはナナくんと呼ばせて貰うことにするぜ」
「時間がないから手短に話すよ。といっても、私が手短に話せるかと言われれば首を横に振るがなんとか頑張ってみるさ。なにしろ後10分もすると私はコンクリートで固められて海の中に沈められるんだからね。まったく、私が多少丈夫だからってやりすぎだとは思わないかい? 昔のヤクザ映画じゃないんだから」
「おっと、話が逸れたね、悪い癖だ。本題に入ろう。まず1つ。君には悪いが、しばらく学校を休んでナナくんと一緒に過ごして欲しい。端的にいえば、彼女の護衛だ」
「前に自殺志願の克服者を唆している人物がいる話をしただろ? ナナくんの能力はそいつらが喉から手が出るほど欲しいものでね。私の代わりに君がナナくんを守ってあげてほしい」
「彼女の能力を知りたいかい? 残念だけど君には言えない理由があるんだ。ああ、誤解しないでくれよ。約束通り、ナナくんについて説明はするつもりだよ。ただ、今じゃない。こんな状況でも、いや、こんな状況だからこそ君にだけは言えないんだ。そうだね、今回の件が片付いた頃には言えるようになってるかな」
「それともう1つ。これは助言だけれど、どうか幼い少女の戯言だと思わず真摯に受け取ってくれよ」
「君は自分を過大評価しすぎだ」
「どうかこの言葉を覚えておいて欲しい。さて、私はそろそろいくよ。早く再会できることを期待してるぜ」
………………
携帯のボイスメッセージに録音されていたアイの伝言はそこで終わっていた。
「ナナの護衛か……」
ワンコーくんの着ぐるみが盗まれたことから、その犯人が警察内部にいることはアイ自身も分かっているだろう。しかし俺が克服者に襲撃されたことはまだ知らないはずだ。
それなのに件の事件をわざわざ話してまでナナの護衛を頼むということは、もしかするとアイは既に俺と財前が導き出した結論に到達していたのかもしれない。
考えすぎかもしれないが、もしそうだとしたら──
『そうだね、今回の件が片付いた頃には言えるようになってるかな』
──まるでこの言葉は、俺が事件を解決しろと言っているように聞こえる。
いやいや、やはり考えすぎだろう。
もしそうだとしたらナナの護衛なんて頼まず、捜査の協力を仰ぐはずだ。それに「自分を過大評価するな」ってのは、もしかすると俺がこの可能性を考えてると見通してのことかもしれない。
「栗栖。いや、今日だけは隊長と呼ばせてくれ」
財前は随分懐かしい呼び方をすると俺に向けて頭を下げた。
「隊長。俺からも頼む。今、警察はお互い疑心暗鬼の状態だ。アイが隊長に力を貸して貰おうとするのは警察は信用できないからなんだよ。ナナの能力を明かすことはできないとアイがいうなら、俺もナナについて教えることはできない。でもナナは人間であり、俺の生徒なんだ。どうか守ってあげてくれ」
そこに少し前の土下座未遂のような情けなさはなく、あるのは誠実さのみだった。
「……そうだな。今日は木曜日だろ?」
俺はわざとらしく芝居がかった口調で話を続ける。
「月曜日が1番だれるとして、俺はその次が木曜日だと思うんだよ。だって金曜日は土日に向けて活力が出る分、木曜日はパワーを持ってかれる気がするんだ。ああー、俺もそんな気がしてきた。わりぃ、今日休むわ」
「……頼んだ」
学校をサボるなんて俺も日常が板についてきたものだ。
校門を出ると、俺はナナの家へ急いで向かった。
読んでくださりありがとうございます。
どこにも書いてなかったんですけど
今まで毎日投稿出来るようにこっそり頑張ってました。
それがちょっと難しくなってしまったので投稿頻度がかなり落ちるかもしれません。
以上お知らせでした。




