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第三十四話裏話 つる視点


私、声と態度と羽の白さだけは天空級の、自他共に認める健気な恩返しヒロイン(鶴見つる)。

だけど、ぶっちゃけ私の正体は、昔罠に引っかかっていたところを大河内駆くんに助けられた、本物の『鶴』なのよ!


民話のルールに従って、あいつの家で機を織ったり、人間の姿で映画『友達100人』に出演したりして恩返しをしていたんだけど、ここで重大なバグが発生したわ。「更衣室を覗かないでください」って前振りをしているのに、駆くんのやつ、あまりにも紳士すぎて、何年経っても私の着替えを1ミリも覗いてくれないのよ!

ルールでは、覗かれて正体がバレないと元の世界へ帰れないのに、あいつが鉄壁のレディファーストを貫くせいで、私はずっと鶴に戻れず現代日本に居残り続けるはめになっていたの。


「まぁ、ぶっちゃけ元の世界に帰ったところで、またいつでも自由にこっちの世界へ遊びに(転生)来られるんだけどね! でも、やっぱり一度くらいはお約束の『ああっ、見られた!』って恥ずかしがるザマァ(※大いなる勘違い)をやってみたいじゃないのよ!」


そう意気込んだ私は、ネットの知恵袋で調べた『レンタル彼女』という名のマンツーマン個室空間に最高級キャストとして電撃登録し、鶴の執念で駆くんの予約枠を力ずくで上書きしてやったの。


そうして迎えた、老舗旅館の個室での再会。

私は最高のお約束ハニトラ(覗かせ工作)をブチかましてやるつもりだったんだけど、一般人になった駆くんは、私の目をまっすぐ見つめて「周囲の目が集まるから座りな。君のそういう真っ直ぐなところ、嫌いじゃなかったよ」って、もの凄くインテリジェンスでスマートな言葉を叩きつけてきたの。

お茶をスッと差し出す手つき、視線の配り方、および私の過去の空回りを誰よりも解ってくれている、あの洗練された大人の男のオーラ……!


……絶句したわ。

覗かせて帰るつもりが、私のハート(※鳥類)の方が、一瞬であいつの底知れない『大人の男の魅力』に完璧に落とされて(ホールドされて)しまったじゃないのよ……っ!?

あいつ、あの芸能界のエリート組の女の人たちにどんな揉まれ方をしたら、高校生のくせにこんな極上のジェントルマンに育つのよ! あんなの、野生の鶴の私だって一瞬でただの雌にされちゃうに決まってるじゃない!


恩返しを終わらせるための偵察のつもりだったのに、私のハートは完全にカケルのイケメンオーラ(愛)に美味しく陥落させられちゃったわ!

元の世界なんてどうでもいいわ! こんな極上の王子様が手に入るなら、今世でカケルと一緒に生涯を共にする方向に目標変更よ!


(カケルの隣が世界一の鳥籠なら、私がこれから機を織って稼ぐ全財産を使って、駆くんを私の『専属の旦那様』として、一生私のプライベートの神殿(部屋)に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)


スマホを見ると、詩織ちゃんたちが裏のチャットで「新参の野鳥、抜け駆けはコンプラ違反よ!」ってギャーギャー騒いでいるのが見えるわ。もちろん、私の正体が恩返しの鶴だなんてあの子たちには露知らず、ただの大人しいつるちゃんだと思っているみたいだけど。

ふふ、お黙りなさい、おいたが過ぎる方々。鶴としての執念と、恋する乙女としての『智謀とパッション』をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の張り巡らせた策略(※親の圧倒的な資金力はないけど、私の自作の反物)ですべて『白紙化』にして差し上げますわ。


待っていなさい、私の愛しい駆くん。

これからは私の、誰よりもお淑やかで、誰よりも熱くて逃げられない『前代未聞の恩返し系・ラブストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。


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