第5話:私のカメラの前に、もう一度立ちなさい!
「つむぎお姉ちゃんに癒やされ、蓮に似た可愛い子ともデートできた。よし、俺のレンカノライフは順調だぞ!」
勘違いの鈍感パワーで恐怖心を克服した俺は、四度目の正直として、地元の小さなマイナー・レンタル彼女サービスを利用してみることにした。
ここなら、より普通で、より穏やかなデートが楽しめるはずだ。
五回目のデート場所。川沿いの静かな公園。
ベンチに座って待っていると、一眼レフカメラを首から下げた、ベレー帽の少女がこちらに歩いてきた。
「ふむ……光の当たり方は悪くないわね。そこに座っているだけで絵になる男。さすがは私の初恋の被写体だわ」
少女はパシャリと俺の写真を撮ると、不敵に笑った。
彼女がカメラを下ろした瞬間、俺は思わず立ち上がった。
「お前……新藤監督の娘の、未来……!?」
「ご正解。映画監督・新藤の血を引く、未来よ。現在は高校で映画部の監督をしてるわ」
彼女は『友達100人ザ・ムービー』の監督の娘であり、当時は父親の助手(の真似事)として現場にいつもいた少女だった。
現場で俺の演技を一番近くで見ていたクリエイターの卵だ。
「なんで未来までレンタル彼女にいるんだよ!?」
「あいつらが『カケルがレンカノを漁ってる』って裏で大揉め(キャットファイト)してるのを嗅ぎつけたのよ。職権濫用で枠を譲らせたわ。……あなたが突然引退したせいで、私の映画への情熱はあの日から止まったまま。責任、取ってもらうわよ?」
未来は俺の顎をくいっと持ち上げ、至近距離で覗き込んできた。
「今日、私はあんたの『彼女』としてデートする。だけど、私の目的はあんたの『最高の表情』をこのカメラに収めること。そして――もう一度、私の映画の主演として、私の前に立たせることよ」
彼女の目は、恋する乙女のそれであり、同時に狂気的な映画監督のそれだった。
デート中、彼女は「彼女」として甘えてくるかと思えば、突然「今の表情最高! 動かないで!」と撮影を始め、俺を翻弄していく。
「あんたの才能をボッチで腐らせるなんて、世界への叛逆よ。私がもう一度、あんたを世界に引きずり戻してあげる」
リアルヤンデレ幼馴染、ツンデレお嬢様、癒やし系お姉さん、男装の親友、そして監督の娘。
かつての仲間たち(全員美少女)からの巨大すぎる執着に囲まれ、俺の友達0人のボッチ生活は、とんでもない方向へと加速していくのだった。




