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第四話裏話 蓮視点

### 【蓮の視点】男友達の仮面なんて、本当はもう脱ぎ捨てたい


「……駆のバカ。大バカ。鈍感男」


土曜日の夜。私は自宅のベッドで、昼間の『レンタル彼女』としてのデートを思い出し、枕に顔を埋めて激しく足をバタつかせていた。恥ずかしさと、もどかしさと、ほんの少しの嬉しさで、胸がはち切れそうだった。


子供の頃の私は、同年代の女の子たちに比べて背が高く、声も低くて、全体的にガッシリしていた。そのせいで、周囲の子役や大人たちから「本当に男の子みたい」「全然可愛げがない」「ヒロイン役は無理だな」と、心ない言葉をたくさん浴びせられてきた。

すっかり自信を失った私は、「どうせ私は可愛くなれない」と自分の殻に閉じこもり、映画『友達100人』でも、主人公の男友達役として、心を殺して男装して出演していた。


だけど、駆だけは、私の『男装』の裏側にあるものを、全く違う言葉で肯定してくれたんだ。


『男っぽいんじゃないよ! 蓮はめちゃくちゃスタイリッシュで、背が高くて、本気で最高にカッコいいんだ! 僕は蓮のその姿、世界で一番リスペクトしてるよ!』


駆は嘘偽りのない、まっすぐな目で私を何度も全力で褒めてくれた。それが、どれほど救いだったか。どれほど嬉しかったか。

彼に褒められるのが嬉しすぎた私は、味を占めて、引退して普通の高校生になってからも、ずっと「男っぽい親友」としてのキャラを継続し、駆の唯一の『男友達』として隣に居座り続けた。


――だけど最近、私の心の中の『女の子』が、もう限界を迎えていた。


ただの友達。そのはずなのに、駆のちょっとした仕草や、男らしくなった背中に、胸が苦しくなる。あいつを『一人の男』として猛烈に意識しちゃう。

なのにあいつは、私の前で「寂しいからレンタル彼女を頼んじゃってさー」なんて、のん気に相談してくるのだ。しかも、詩織や西園寺、果てはつむぎ先輩まで駆を指名したと知った時、私の中の何かがプチッと切れた。


(あんな女たちに、駆を任せられるわけないじゃん……っ!!)


猛烈なヤキモチに突き動かされ、私は人生で初めて、とびきりガーリーなロングスカートを買いに走り、完全匿名保証のサイトに登録して駆の前に現れた。

正体がバレたら、もう『友達』には戻れないかもしれない。そんな恐怖で心臓が破裂しそうだった。


なのに、あいつは噴水前で私を見るなり、「蓮の双子の妹か!? っていうか、蓮って実はめちゃくちゃ美形だったんだな……」なんて、的外れな勘違いをしてドギマギしている。


(どれだけ鈍感なんだよバカ駆!! 私だよ、あんたのすぐ隣にいる蓮だよ……っ!!)


心の中で叫びながらも、女の子の格好をした私を、駆が赤面しながらチラチラと盗み見てくるのが、たまらなく愛おしくて、恥ずかしくて。

「私のことだけ見てなさいよ……バカ」と袖を掴んだ時、駆の手が微かに震えているのを見て、私の胸はキュンと跳ね上がった。


男友達の仮面なんて、本当はもう脱ぎ捨てたい。でも、まだその勇気が出ない。

正体を知らない駆の優しさに翻弄されながらも、私は「女の子」として駆の隣を歩けるその時間を、狂おしいほど愛しく思ってしまうのだった。

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