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第4話:俺(私)が『彼女』になってやろうか?



「聞いてくれよ蓮(れん)。俺、レンタル彼女の沼にハマった」


学校の放課後。俺は唯一の『男友達』である蓮に、ハンバーガーショップで頭を抱えて相談していた。

蓮は、俺が芸能界にいた頃からの付き合いだ。『友達100人』でも主人公の親友(男の子)役として共演し、一緒に引退した熱い奴だ。


ショートカットがよく似合う、少しボーイッシュで小柄な蓮は、ポテトを齧りながら冷ややかな目を向けてきた。


「はぁ? 沼って何だよ。っていうか駆、まだレンタル彼女なんて頼んでたのか?」

「うっ、それは……。でも聞いてくれ! こないだ指名したつむぎお姉ちゃんが最高に癒やし系でさ、今週末も別の『完全匿名保証』のサイトで予約しちゃったんだよ」


「……へぇ」


蓮のトーンが、一気に氷点下まで下がった。

コークのグラスを持つ手が、心なしかピキピキと音を立てている。


「詩織と西園寺だけじゃなくて、つむぎ先輩まで……。あいつら、抜け駆けして駆とデートしたわけだ。……で、そのデート、いつ、どこで?」

「明日の土曜、駅前の噴水前だけど……」


「わかった。じゃあな、駆」

蓮はなぜか耳まで真っ赤にして、カバンを掴むと足早に去っていった。


翌日。噴水前で待っていると、信じられないほどスタイルの良い、清楚なロングスカートを穿いた美少女が歩いてきた。

顔は大きなキャスケット帽とマフラーで隠れているが、美少女オーラが隠しきれていない。


「あの……お待たせ、駆くん」


「え……?」

その声に、俺はビクッとした。

(……気のせいか? なんか、昨日まで一緒にいた蓮の声にめちゃくちゃ似てるような……。いや、あいつは男だし、こんな綺麗な声じゃない、はず?)


「う、うん。……し、静かにして! ほら、行くよ!」


少女は真っ赤になって、俺の服の袖をぎゅっと掴み、ぐいぐいと引っ張っていく。

歩きながら、俺はチラチラと彼女の横顔を盗み見た。ボーイッシュな、だけど驚くほど整った横顔。


(いや、似すぎだろ! 蓮の双子の妹か!? っていうか、蓮って実はめちゃくちゃ美形だったんだな……)


一方の彼女(蓮)は、心臓が爆発しそうだった。

実は、蓮は子役時代から「男装」して男の子役を演じていた、生粋の女の子だった。俺だけがその事実を本気で知らず、男友達だと思い込んでいたのだ。


「な、何よジロジロ見て。今日の私は……その、あんたの『彼女』なんだから、他のお客さんの時みたいに、普通にエスコートしなさいよ……バカ」


「あ、ごめん! ちょっと、俺の親友の男に凄く似ててさ」

「お、男っ!? 私は女の子よ! 一緒にするなっ!」


(うわ、怒らせちゃった! でも怒った時の口調も蓮にそっくりだな……)


最後まで、目の前の美少女が「実は男装していた親友の蓮」だとは夢にも思わない鈍感な俺。

蓮のヤキモチから始まったお忍びデートは、主人公の超ド級の鈍感さによって、秘密のすれ違いラブコメとして完璧な(?)結末を迎えたのだった。

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