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第三十二話 アキ視点


私、声と態度と剣のキレだけは天空級の、自他共に認める絶対正義の元女勇者(天剣アキ)。

だけど、ぶっちゃけ私の魂は、異世界で魔王を倒したあと、これ以上勇者や聖女の権力が増えるのを恐れたクソ貴族どもに、事実上の『追放』という形でこのマナのない不毛な現代日本へ追い払われた本物の勇者なのよ! 現代での生活費を稼ぐために子役として映画『友達100人』に出演して雌伏の時を過ごしていたの。


外の世界では芸能界のエリート組の女たちが大戦争を起こしているみたいだけど、私には関係ないわ。それより最近、あの魔王リリスから衝撃の事実を聞かされたわ。

あいつ、実は貴族たちの利権争いのために『冤罪』で魔王に仕立て上げられていたんですって! 聖女マリアのやつは脳内がお花畑だから今世でもそのことに全然気づいていないみたいだけど、魔王はすでに、一般人になって友達0人のボッチ生活を送っているはずの大河内駆(カケル)の体内に渦巻く、見たこともないほど濃密で凄まじい『マナの奔流』に気づいていたのよ!

だから私は魔王と共闘し、カケルの圧倒的な魔力を借りて異世界に戻り、私を追放した特権階級の連中に一矢報いてギャフンと言わせる計画を立てたの!


「それなのに、あいつったら『俺は異世界なんて信じない』ってもの凄く冷徹なツッコミを叩きつけてくるんだもの! こうなったら作戦変更よ! 使い魔(ネット)の言う通り『レンタル彼女』でハニトラを仕掛けて、あいつを私にガチで惚れさせて籠絡し、私の終身奴隷(旦那様)にして異世界へ連れ帰ってやるわ!」


そう意気込んで、この多国籍レンカノサイトに『元勇者の最高級キャスト』として電撃登録し、勇者のパッションでカケルの予約枠を力ずくで上書きしてやったの。


そうして迎えた、スポーツカフェでの再会。

私は最高のハニトラ(籠絡)をブチかましてやるつもりだったんだけど、一般人になったカケルは、私の目をまっすぐ見つめて「周囲の目が集まるから座りな。君のそういう真っ直ぐなところ、嫌いじゃなかったよ」って、もの凄くスマートな言葉を叩きつけてきたの。

椅子をスッと引く手つき、視線の配り方、および私の過去の空回りを誰よりも解ってくれている、あの洗練された大人の男のオーラ……!


……絶句したわ。

籠絡を仕掛けるつもりが、私のハートの方が、一瞬であいつの底知れない『大人の男の魅力』に完璧に落とされてしまったじゃないのよ……っ!?

あいつ、あの芸能界のエリート組の女の人たちにどんな揉まれ方をしたら、高校生のくせにこんな極上のレディファーストが身につくのよ! あんなの、元勇者の私だって一瞬でただの雌にされちゃうに決まってるじゃない!


異世界リベンジのための戦力にする偵察のつもりだったのに、私のハートは完全にカケルのイケメンオーラに美味しく陥落させられちゃったわ!

異世界のクソ貴族なんてどうでもいいわ! こんな極上の王子様が手に入るなら、あんな未開の異世界へ戻るなんてやめよ! これからは、この現代日本でカケルと一緒に生涯を共にする(※魔王と一緒に今世で世界征服する)方向に目標変更よ!


(カケルの隣が世界一の理想郷なら、私がこれから稼ぐ全財産を使って、駆くんを私の『専属の騎士』として、一生私のプライベートの部屋に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)


スマホを見ると、詩織ちゃんたちが裏のチャットで「新参の勇者、抜け駆けは違反よ!」ってギャーギャー騒いでいるのが見えるわ。もちろん、私の前世が追放された本物の女勇者様だなんてあの子たちには露知らず、ただのボーイッシュなアキちゃんだと思っているみたいだけど。

ふふ、お黙りなさい、おいたが過ぎる方々。元勇者としての執念と、恋する乙女としての『智謀とパッション』をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の張り巡らせた策略ですべて『討伐(白紙化)』にして差し上げますわ。


待っていなさい、私の愛しい駆くん。

これからは私の、誰よりも真っ直ぐで、誰よりも熱くて逃げられない『前代未聞の勇者系・ラブストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。


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