第三十一話裏話 マリア視点
私、声と態度と清らかさだけは天空級の、自他共に認める絶対正義の大聖女(聖園マリア)。
だけど、ぶっちゃけ私の魂は、異世界で魔王を深手を負わせて、この不毛な現代日本へ追いかけてきた本物の聖女なのよ! しかも私にとってこの現世は『二度目の転生』だから、この世界の勝手は誰よりもよく分かっていたの。
「クックック、魔王もマナのない世界では赤子同然! 二度目の転生知識があれば現世で完全無双できるじゃん! 私しか勝たん!」って大真面目にイキっていた時期が、私にもありました。
頭脳は大人、身体は子供のチート能力を活かして映画『友達100人』のオーディションに乗り込んだら……まさかの主演の大河内駆っていう本物の化け物天才子役に力量差をまざまざと見せつけられて、完璧に敗北したのよ!
「これ、魔王よりカケルの方を監視すべきでは?」ってなって、それから今日まで、あいつをずっと観察してきたの。並行して「2度あることは3度あるかも」って、もし現代転生が『三度目』になったとき、今度こそカケルに勝つために、日々この現代を全力で楽しむ……いえ、研究する日々を送っていたのよ。
そしたら最近、あの魔王リリスがカケルに接触したって極秘情報を耳にして、私は大焦りで裏ルートを調べたわ。
魔王があいつを配下にして異世界に復讐に行くのかと思いきや……まさかの魔王のやつ、カケルの魅力に完全に落とされて「異世界なんてどうでもいいわ! カケルと一緒に今世で世界征服する!」って目標変更したっていうじゃない!
「いや、異世界征服しろよ!! 私が三回目の転生でそこを征服して無双する予定だったのに、あんたが居座ったら計画がめちゃくちゃじゃないのよ!」
私は魔王の暴走を止め、カケルを自分の手で管理するために、爆速でこの多国籍レンカノサイトに『元聖女の最高級キャスト』として電撃登録し、聖なる執念でカケルの予約枠を力ずくで上書きしてやったの。
そうして迎えた、ラウンジでの再会。
私は最高の魅了をブチかましてやるつもりだったんだけど、一般人になったカケルは、私の目をまっすぐ見つめて「周囲の目が集まるから座りな。君のそういうブレない世界観、嫌いじゃなかったよ」って、もの凄くインテリジェンスでスマートな言葉を叩きつけてきたの。
椅子をスッと引く手つき、視線の配り方、および私の過去の空回りを誰よりも解ってくれている、あの洗練された大人の男のオーラ……!
……絶句したわ。
ハニトラを仕掛けるつもりが、私のハートの方が、一瞬であいつの底知れない『大人の男の魅力』に完璧に落とされて(魅了されて)しまったじゃないのよ……っ!?
あいつ、お外の女の人たちにどんな揉まれ方をしたら、高校生のくせにこんな極上のレディファーストが身につくのよ! あんなの、大聖女の私だって一瞬でただの雌にされちゃうに決まってるじゃない!
魔王の監視とリベンジのための偵察のつもりだったのに、私のハートは完全にカケルのイケメンオーラ(愛)に美味しく陥落させられちゃったわ!
異世界征服なんてどうでもいいわ! こんな極上の聖域(王子様)が手に入るなら、三度目の転生を待つまでもなく、今世でカケルと一緒に生涯を共にする方向に目標変更よ!
(カケルの隣が世界一の大聖堂なら、私がこれから稼ぐ全財産を使って、駆くんを私の『専属の神官(旦那様)』として、一生私のプライベートの結界(部屋)に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)
スマホを見ると、詩織ちゃんたちが裏のチャットで「新参の聖女、コンプラ違反よ!」ってギャーギャー騒んでいるのが見えるわ。もちろん、私の前世が二度目の転生聖女様だなんてあの子たちには露知らず、ただの大人しいマリアちゃんだと思っているみたいだけど。
ふふ、お黙りなさい、おいたが過ぎる方々。元聖女としての執念と、二回目の人生の『智謀と聖女の威光』をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の張り巡らせた聖なる策略ですべて『破門(白紙化)』にして差し上げますわ。
待っていなさい、私の愛しい駆くん。
これからは私の、誰よりも空回りで、誰よりも熱くて逃げられない『前代未聞の聖女系・ラブストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。




