第31話:レンタル彼女を頼んだら、転生自体が2度目の聖女の元共演者がハニトラを仕掛けにやってきた件
「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」
週末のレンカノ修羅場の数々を経て、俺の精神生命力は限界を迎えていた。
今度こそ、俺に特別な感情を抱いていない、ごく普通の大人しそうな女の子と静かに過ごしたい。俺は携帯を操作し、新しい超マイナーなレンカノアプリで、プロフィールに【少し浮世離れした聖なる雰囲気ですが、あなたのすべてを優しく包み込んで差し上げます】と書かれた、一番物静かそうなキャストを指名した。
デート当日。白を基調とした、神聖な雰囲気が漂うホテルの最上階ラウンジ。
「よくぞ私の前に現れましたわね、カケル。……ふふ、こうして不純異性交遊の場でお会いするなんて、これも神の導き――いえ、私の完璧なハニートラップの成果ですわ!」
「ぶっっっ!!!!???」
高級ハーブティーを盛大に吹き出した。
窓際の席で、純白のワンピースを身にまとい、まるですべてを見透かしたような大真面目なドヤ顔を浮かべているのは、映画『友達100人』の撮影当時、聖なるヒロインポジションとして圧倒的な気品を放っていた元共演者の美少女――聖園マリアちゃんだった。
実は彼女、前世では『異世界で魔王を追い詰めた本物の聖女様』であり、魔王リリスを監視するためにこの世界へ転生してきたという、凄まじい秘密を持っていた。しかも彼女にとっては今回が「二度目の転生」であり、現世の勝手を誰よりも理解しているという自負があったらしい。
「ま、マリアちゃん!? なんでレンタル彼女にいるんだよ!? というか、開口一番にハニトラって何だよ!」
「ふん、とぼけるな。私は見たぞ、あんたの体内に渦巻くその聖なる力をも凌駕する、見たこともないほど濃密で凄まじいオーラを! 昔のよしみだ、おとなしく私のハニトラに引っかかって、私の配下になりなさい!」
「何言ってんだ? こいつ……」
俺が本気でドン引きした目を向けた。そりゃそうだ。俺は友達こそ0人だが、毎週毎週、詩織や麗華たちに揉まれ、さらに手慣れたレンカノエスコートの経験を積んでいる。ボッチのくせに、俺の『レンカノ対応』と『大人の男のオーラ』は、すでにそこらのトップ俳優を瞬殺できるレベルにまで勝手に強制進化してしまっていたのだ。
「……マリアちゃん。とりあえず座って。周囲の目が集まるから大声を出さない。ほら、冷める前にハーブティーお飲みよ。君、昔から本番前に無駄に設定を作り込んで空回りする癖、全然変わってないね。でも、そういう君のブレない世界観、俺は嫌いじゃなかったよ」
俺としては、これ以上変な目で見られて詩織たちに見つかったら人生が終わるので、「とにかく穏便に、事務的に、手慣れた大人の対応」で彼女をあしらい、スッと椅子を引いてお茶を差し出しただけだった。
「ひゃうんっ……!?(な、何よこれ。子役の時はあんなに無邪気なボッチの男の子だったのに……デートになった瞬間、何この圧倒的な洗練されたエスコートと、余裕のある大人の男のオーラは……っ!?)」
マリアちゃんは小さな悲鳴を上げて顔を真っ赤に染め、借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
色仕掛けを仕掛けにきたはずの元聖女様の心に、まさかの角度からガチ恋の火を付けてしまい、見事な返り討ちにしてしまうのだった。




