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閑話が本題 駆のマナパワーは五十三万です


「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」


数々の修羅場を経験した俺は、平日の放課後、すり減った心を癒やすためにため息をついていた。

そんなある日のこと。前世が異世界の絶対無敵の大魔王である魔王院リリスちゃんは、俺の体内に渦巻く世界を三度滅ぼせるレベルの濃密な魔力(マナ)が気になって仕方がなかった。


そこで彼女は、我が大河内家が誇る天才ハッカーにして義妹のひまりを実家でそそのかし、魔王の闇の知識と現代の超科学を融合させた最高機密兵器『マナスカウター』を共同開発・発明してしまったのだ。眼鏡型の画面に、対象のエネルギー数値がデジタル表示される恐ろしいアイテムである。


「フフン、完成したぞ、ひまり! このマナスカウターがあれば、カケルの無尽蔵なるマナの数値を完璧に測定(数値化)できるわ!」

「ひまりちゃんのバグ修正も完了です♪ さっそく実戦テストをしてみましょう、リリスお姉ちゃん」


2人は放課後の廊下へ繰り出し、物陰から様子を窺い始めた。

最初に対象となったのは、たまたま廊下をフンスと鼻を鳴らしながら歩いていたフランス帰りの群馬っ子――上毛みのりちゃんだった。ピピッ、とリリスちゃんがスカウターのスイッチを押す。


『対象:上毛みのり。マナ:2』


「……たったの2か、ゴミめ。……ゲフン、最弱め! さすが神7の面汚し(最弱枠)ね、話にならないわ!」

「リリスお姉ちゃん、一般の生徒の平均値はだいたい10前後ですから、みのりお姉ちゃんが極端に魔力不毛なだけです」

「ちなみに魔王であるこの私のマナは【四万二千】よ! 現代日本の中では圧倒的な絶対強者だわ! もしかしたら、カケルも私と同等か、少し高いくらいの素晴らしい有志(右腕)なのでは……?」


リリスちゃんは期待に胸を膨らませ、ボッチ席で魂の抜けた殻のようになっている俺へとスカウターの照準を合わせた。

ピピピピピピピピピッ!!! ガガガガガガッッッ!!!!


突如として、スカウターが激しい警告音を鳴らし、画面のデジタル数字が凄まじい速度で爆速カウントアップを始めた。


『対象:大河内駆。マナ:五十三万』


「――っ!? ご、五十三万……っ!? 私の戦闘力(マナ)は五十三万ですってぇぇぇぇ!!!???」


リリスちゃんは驚愕のあまり、フリーザの如く顔を真っ青にしてその場にガタガタとへたり込んだ。自身の四万二千を遥かに凌駕する圧倒的なマナの前に、

「やはりカケルは私の配下(旦那様)にふさわしいわ! 今すぐ再接触して囲い込まなければ!」

と、大急ぎで俺のボッチ席へ突撃しようとした、まさにその時。


バチバチバチバチッッッ!!! 警告音がさらに甲高く鳴り響き、スカウターの画面が血のような赤色に染まった。


『警告:マナではない、別の凄まじい未知のエネルギーを検知』


「え、何よこれ!? 壊れたの!? 数値がバグを起こして――」

「リリスお姉ちゃん、違います! これはマナじゃなくて……感情のデジタル数値です!」


画面に表示されたのは、マナの計測枠を完全に突き破った、俺を取り巻く女たちの狂気的な謎のエネルギーの羅列だった。


『対象:白雪詩織。ヤンデレ力:五十三万』

『対象:西園寺麗華。駆大好きパワー(ツンデレ):五十三万』

『対象:蓮。ピュア乙女(ヤキモチ)濃度:五十三万』

『対象:新藤未来。クリエイターの執着(アングル):五十三万』


「ひっ、ひいいいいい!? なによこの化物たちの五十三万のバーゲンセールはぁぁぁぁ!!!???」


出し抜き同盟の面々の、俺へのクソデカ感情(ピンクの欲望)のエネルギーが、すべて完璧に【五十三万】という破滅的な数値を叩き出していたのだ。魔王の魔力すら児戯に等しい、ガチ恋勢の凄まじい精神的プレデターパワー。


さらに、先ほど「2」と測定されて最弱呼ばわりされていたみのりちゃんが、俺の周りに詩織たちが大集結しているのを察知して大激怒。高崎の白衣大観音の如き凄まじい後光を背負いながら、こちらへドタバタと猛ダッシュで引き返してきた。


ピピピッ!!!

『対象:上毛みのり。群馬パワー(からっ風と焼きまんじゅうのタレ):五十三万』


「おれまーっ! 誰が最弱よ! 私の群馬の粘り腰をナメないことね! カケルの隣の特等席は、上毛かるたの精神で私が買い占めるわよ!!」

「な、なんであのゴミ(最弱)まで急に五十三万に跳ね上がってるのよぉぉぉぉぉ!!!???」


謎の群馬パワーによって限界突破した最弱神7の猛追を前に、魔王と天才ハッカーの2人は、その圧倒的ななぞのパワー(狂気)に完璧に圧倒されて恐怖の涙を流すのだった。


「ひいいいいい無理ぃぃぃぃぃ!!! 本当にただボッチ席で座ってただけなのに、なんで俺の周りで五十三万の宇宙大戦争が始まるんだよぉぉぉぉ!!!!」


俺の切実な絶叫は、所有権を巡って再び五十三万の数値を叩き出しながら火花を散らし始めた彼女たちの怒号にかき消され、日常閑話のはずの魔術実験は、結局いつも通りのなっからカオスな大爆発バタバタエンドで幕を閉じるのだった。


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