第三十話裏話 リリス視点
私、声と態度とスタイルだけは奈落の底級の、自他共に認める絶対無敵の大魔王(魔王院リリス)。
だけど、ぶっちゃけ私の魂は、異世界でクソ忌々しい勇者と聖女に深手を負わされて、このマナはあっても魔法のない不毛な現代日本へ逃げ込んできた本物の魔王なのよ! 力を使い果たして子供の姿になっちゃったから、この世界で生活するために映画『友達100人』に出演して雌伏の時を過ごしていたの。
最近ようやくマナに余裕ができたから、異世界へ復讐しに行くための優秀な有志(配下)を探そうと人間観察をしていたら、とんでもない光景を目撃したわ。
あの一般人になって友達0人のボッチ生活を送っているはずの大河内駆の体内に、世界を三度滅ぼせるレベルの、見たこともないほど濃密で凄まじい『マナの奔流』がドバドバと渦巻いているじゃない!
元魔王の私からしたら、あまりの極上のエネルギー源に、激しい物欲と独占欲が燃え上がったわ!
「こうなったら作戦変更よ! 昔のよしみで誘ってもフラれたから、使い魔の言う通り『レンタル彼女』という名の最先端の魅了魔術(色仕掛け)を仕掛けて、あいつを私にガチで惚れさせて私の終身奴隷にしてやるわ!」
そう意気込んで、この多国籍レンカノサイトに『元魔王の最高級キャスト』として電撃登録し、魔王の執念でカケルの予約枠を力ずくで上書きしてやったの。
そうして迎えた、エキゾチックカフェでの再会。
私は最高の魅了(色仕掛け)をブチかましてやるつもりだったんだけど、一般人になったカケルは、私の目をまっすぐ見つめて「周囲の目が集まるから座りな。君のそういうブレない世界観、嫌いじゃなかったよ」って、もの凄くインテリジェンスでスマートな言葉を叩きつけてきたの。
椅子をスッと引く手つき、視線の配り方、および私の過去の空回りを誰よりも解ってくれている、あの洗練された大人の男のオーラ……!
……絶句したわ。
魅了を仕掛けるつつもりが、私のハートの方が、一瞬であいつの底知れない『大人の男の魅力』に完璧に落とされてしまったじゃないのよ……っ!?
あいつ、お外の女の人たちにどんな揉まれ方をしたら、高校生のくせにこんな極上のレディファーストが身につくのよ! あんなの、大魔王の私だって一瞬でただの雌にされちゃうに決まってるじゃない!
異世界征服のための配下にする偵察のつもりだったのに、私のハートは完全にカケルのイケメンオーラ(愛)に美味しく陥落させられちゃったわ!
異世界なんてどうでもいいわ! こんな極上のマナの塊(王子様)が手に入るなら、今世でカケルと一緒にこの現代日本を世界征服する方向に目標変更よ!
(カケルの隣が世界一の魔王城なら、私がこれから稼ぐ全財産を使って、駆くんを私の『専属の使い魔』として、一生私のプライベートの奈落に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)
スマホを見ると、詩織ちゃんたちが裏のチャットで「新参の魔王、コンプラ違反よ!」ってギャーギャー騒いでいるのが見えるわ。もちろん、私の前世が本物の魔王様だなんてあの子たちには露知らず、ただの痛いリリスちゃんだと思っているみたいだけど。
ふふ、お黙りなさい、おいたが過ぎる方々。元魔王としての執念と、今世の美少女としての『智謀とマナ力』をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の張り巡らせた策略ですべて『奈落の底へ追放』にして差し上げますわ。
待っていなさい、私の愛しい駆くん。
これからは私の、誰よりも空回りで、誰よりも熱くて逃げられない『前代未聞の魔王系・ラブストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。




