第30話:レンタル彼女を頼んだら、前世が魔王様の元共演者にマナの塊としてロックオンされた件
「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」
週末のレンカノ修羅場の数々を経て、俺の精神生命力は限界を迎えていた。
今度こそ、俺に特別な感情を抱いていない、ごく普通の大人しそうな女の子と静かに過ごしたい。俺は携帯を操作し、新しい超マイナーなレンカノアプリで、プロフィールに【少し浮世離れした世界観ですが、あなたのすべてを優しく受け入れて差し上げます】と書かれた、一番物静かそうなキャストを指名した。
デート当日。怪しげな間接照明が灯る、エキゾチックな多国籍カフェの個室。
「――よくぞ来たな、カケル。我が漆黒の翼にして、無尽蔵なるマナの泉よ。さあ、この私(魔王)と共に、再びあの勇者と聖女の鼻をあかしてやろうではないか!」
「ぶっっっ!!!!???」
お冷やのチャイを盛大に吹き出した。
個室のソファに深々と腰掛け、禍々しいデザインの黒い日傘を杖のように突きながら中二病全開の演説をぶかましてきたのは、映画『友達100人』の撮影当時、ミステリアスな悪役ポジションとして怪しい存在感を放っていた元共演者の美少女――魔王院リリスちゃんだった。
実は彼女、前世では『異世界で勇者と聖女に深手を負わされてこの世界に逃げ込んできた本物の魔王様』であり、力を使い果たして子供の姿(今世)になりながら、再度異世界に挑むためにマナを溜めて雌伏の時を過ごしていたという、凄まじい秘密を持っていた。
生活費を稼ぐために子役として出演し、最近ようやく魔力に余裕ができたため、この世界で有志(配下)を探そうと人間観察をしていたところだったのだ。
「り、リリスちゃん!? なんでレンタル彼女にいるんだよ!? というか、さっきからマナとか勇者とか何言ってんだ?」
「ふん、とぼけるな。私は見たぞ、あんたの体内に渦巻くその見たこともないほど濃密で凄まじいマナの奔流を! 昔のよしみだ、私の右腕として異世界征服に協力しろ!」
「何言ってんだ? こいつ……」
俺が本気でドン引きした目を向けると、リリスちゃんは「くっ、魔王であるこの私の勧誘をこうもあっさりと流すとは……!」とわなわなと手を震わせた。
だが、ここからのリリスちゃんの行動はとにかくポンコツだった。
何としても俺を配下に引き入れたい彼女だったが、どうすれば俺が首を縦に振るか分からず、事前に「使い魔」と称するネットの知恵袋に相談したところ、『男を落とすならレンタル彼女で色仕掛け(魅了)をかけるのが手っ取り早い』という極端な回答にたどり着き、そのまま素直に登録して突撃してきたのだという。
「……リリスちゃん。とりあえずその日傘を置きな。周囲の目が集まるから大声を出さない。ほら、冷める前にココアお飲みよ。君、昔から本番前に無駄に設定を作り込んで空回りする癖、全然変わってないね。でも、そういう君のブレない世界観、俺は嫌いじゃなかったよ」
俺としては、これ以上変な目で見られて詩織たちに見つかったら人生が終わするので、「とにかく穏便に、事務的に、手慣れた大人の対応」で彼女をあしらい、スッと椅子を引いてココアを差し出しただけだった。
「ひゃうんっ……!?(な、何よこれ。子役の時はあんなに無邪気なボッチの男の子だったのに……デートになった瞬間、何この圧倒的な洗練されたエスコートと、余裕のある大人の男のオーラは……っ!?)」
リリスちゃんは小さな悲鳴を上げて顔を真っ赤に染め、借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
色仕掛け(魅了)を仕掛けにきたはずの元魔王様の心に、まさかの角度からガチ恋の火を付けてしまい、見事な返り討ちにしてしまうのだった。




