閑話が本題 駆のお友達作戦
「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」
数々の修羅場を経験した俺は、平日の放課後、すり減った心を癒やすためにため息をついていた。
そんなある日のこと。前世がアイドルオタク男子のTS転生美少女である星野ルカちゃんは、ある天才的な(※とてつもなくおバカな)国家規模の策略を思いついていた。
あいつは友達0人のリアルボッチ(※実際は全同盟による包囲網の爆心地)のくせに、なぜか芸能界のエリート組や実家連合に囲まれてモテモテの人生を送っている。
「だったら、私がまずは純粋な『お友達』として駆の懐に入り込めばいいじゃない! そうして恋仲と友情を並行して完璧に成立させれば、あいつはボッチを脱出できて、私は駆を独占できる! これぞウィンウィンの関係よ!」
そう意気込んだルカちゃんは、さっそく学校の通学路や放課後の廊下で、駆に近づくための『お友達作戦(ハニトラ付き)』を敢行し始めた。
しかし、彼女の前に立ち塞がる壁はあまりにも高くて硬すぎた。
「駆くんに近づく不審なクソガキを発見。即座に排除(コンプラ違反)します」と暗黒の笑顔で立ちはだかる詩織。
「カケルのパーソナルスペース(半径1メートル)への無断進入は西園寺の法律で禁止されていますわ!」とリムジンで圧をかける麗華。
さらに家の方では「お兄ちゃんに接近するオタク男子(中身)の不審なログを検知。実家連合の包備網で即座にブロックします♪」とひまりがデジタル工作を仕掛け、美夜お姉ちゃんが肉体的な威圧感を放つ。
同盟たちのガードがガッチリと硬すぎて、ルカちゃんのアプローチは駆の指先ひとつにまで全く届かず、毎日遠くからフンスと鼻を鳴らして悔し涙を流すことしかできなかったのだ。
――だが、そんなルカちゃんの不審すぎる動き(※物陰からジタバタしながらこちらを凝視している姿)に、俺自身がようやく気づいた。
「……あの、星野さん。さっきから本棚の裏とか電柱の影で何やってるの? ほら、変なところに隠れてないで、よかったら一緒にマックでポテトでも食べない? 俺、君と普通に『お友達』になりたいな」
俺としては、これ以上変なストーカー行為をされて詩織たちのレーダーに引っかかったら人生が終わるので、穏便に終わらせるための手慣れたレディファースト(ただのさわやかなお誘い)を繰り出しただけだった。
「ひゃうんっ……!? 友達……!?(な、何よこれ! 私が何日もかけて突破できなかった包囲網を、あいつのただ一言の洗練されたエスコートが完璧に救い上げてくれたじゃないのよ……っ!?)」
ルカちゃんは小さな悲鳴を上げて顔を真っ赤に染め、俺の差し出した手をぎゅっと握り返した。
こうして、俺たちは晴れて純粋な『お友達(※ただし俺の中では友情止まり)』になることに成功。あいつのハニトラを綺麗にいなし、これ以上ないほど穏やかな放課後の日常パートの空気でハッピーエンド――。
――になるはずが、その「お友達」という聖なるフレーズを聞きつけた、詩織たち【出し抜き同盟】と、美夜お姉ちゃんたちの【実家同盟】の面々が、完璧にハイライトの消えたプレデターの瞳で一斉に放課後の教室へなだれ込んできた。
「ちょっと待ちなさいよ大河内駆!! 新参のクソガキを相手に、放課後の密室で『お友達契約』なんて不純な設定を結ぶなんて絶対に許さないわ! だったら、今夜は西園寺の別荘で、私と朝まで濃厚な『夜のお友達(※大いなる下心)』としてのディープな関係を築きなさい!」
「カケルの初めての夜のお友達の座は、この白雪詩織(正妻)の特権です! 24時間体制で、ベッドの中で手取り足取り夜のマナー(※大いなる誤解)を指導して差し上げます!」
「駆お兄ちゃん……! お外の泥棒猫たちと夜のフレンドシップを結ぶくらいなら、今夜は実家の部屋に鍵をかけて、この妹と一生ネットゲーム(夜のお友達)に没頭するべきです♪」
「ぶっっっ!!!!???」
俺がルカちゃんと友達になったという噂が裏のチャットで爆速で広まった結果、2つの同盟の女たちが完璧に目を血走らせて一斉に俺の元へと殺到。教室の中は一瞬で「誰が駆と夜のお友達(添い寝・監禁)になるか」という、ありとあらゆる歪んだクソデカ感情を引っ提げた大混乱の大乱闘へと発展した。
「ひいいいいい無理ぃぃぃぃぃ!!! 本当にただ普通のマックを食べる友達になっただけなのに、なんで夜のフレンドシップから世界大戦が始まるんだよぉぉぉぉ!!!!」
俺の切実な絶叫は、所有権(夜の特等席)を巡って再び火花を散らし始めた彼女たちの怒号にかき消され、日常閑話のはずのお友達作戦は、結局いつも通りのなっからカオスな大爆発ドタバタエンドで幕を閉じるのだった。




