第29話:レンタル彼女を頼んだら、前世がオタク男子のTS転生元共演者が煽りにやってきた件
「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」
週末のレンカノ修羅場の数々を経て、俺の精神生命力は限界を迎えていた。
今度こそ、俺に特別な感情を抱いていない、ごく普通の女の子と静かに過ごしたい。俺は携帯を操作し、新しい超マイナーなレンカノアプリで、プロフィールに【フフ、誰かと馴れ合うのって苦手ですか? ボッチなあなたのお話、聞いてあげます♪】と書かれた、一番サバサバしていそうなキャストを指名した。
デート当日。駅前のオープンカフェ。
「あはははは! カケル、友達0人のリアルボッチになったって噂を聞いて見にきてあげたわよ! ねぇ今どんな気持ち!? 十年前の天才子役が、今やただのボッチ高校生なんて、ねぇ今どんな気持ちぃ!?」
「ぶっっっ!!!!???」
お冷やを盛大に吹き出した。
対面席で、意地悪なクソガキのような満面の煽り顔を浮かべているのは、映画『友達100人』のオーディション当時、俺の前に立ちはだかり、映画の撮影後も何かと俺に突っかかってきていた元共演者の美少女――星野ルカちゃんだった。
「ル、ルカちゃん!? なんでお前がレンタル彼女にいるんだよ!? というか、開口一番に煽ってくるな!」
「ふん、私はあんたが寂しさのあまりレンカノに溺れてるって聞いて、上から目線でザマァを言ってやるために登録したのよ! ……って、ちょっと待ちなさいよ。なによこれ……」
カケルをボロボロのボッチだと決めつけて煽りにきたルカちゃんだったが、突然スマホの画面と俺の顔を交互に見つめ、ガタガタと震え出した。
「な、なんであんたの予約スケジュール、白雪詩織や西園寺麗華とかいう化物たちで未来永劫埋まりかけてるのよ!? 学校でも蓮や未来に囲まれてるって……ボッチって噂は嘘だったの!? なんであんたがそんなに美少女たちにモテモテなわけ!? 意味が分からない、めちゃくちゃ嫉妬するんだけど!!」
「いや、俺が聞きたいよ! 俺はただの被害者で、あいつらが勝手に俺の予約枠を強奪して大戦争を起こしてるだけなんだよ!」
「お黙りなさい! こうなったら作戦変更よ! 私のこの異次元の美貌で、あんたを私に完璧に惚れさせて、その周りの女たちとの関係を粉々にぶっ壊してやるわ! そうしてあんたを今度こそ本当の哀れなボッチに叩き落として、私の勝ちにしてあげるんだから!」
「目的とハニトラの計画を全部口に出しながら仕掛けてくる奴があるかよ! 帰れ!」
俺があまりにも雑に塩対応をしたため、ルカちゃんはフンスと鼻を鳴らして強引に俺の手を握りしめ、色仕掛けの体勢に入った。
だが、その強気な態度とは裏腹に、彼女の視線は俺の顔や服装、そして無意識のスマートな身のこなしを前に、なぜかみるみるうちに泳ぎ始め、顔を真っ赤にさせて硬直していった。
そりゃそうだ。俺は友達こそ0人だが、毎週毎週、詩織や麗華たちに揉まれ、さらに手慣れたレンカノエスコートの経験を積んでいる。
ボッチのくせに、俺の『レンカノ対応』と『大人の男のオーラ』は、すでにそこらのトップ俳優を瞬殺できるレベルにまで勝手に強制進化してしまっていたのだ。
「……ルカちゃん。とりあえず座って。周囲の目が集まるから大声を出さない。ほら、冷める前にホットココアお読みよ。君、昔から本番前に無駄にテンション上げて空回りする癖、変わってないね。でも、そういう君の分かりやすいところ、俺は嫌いじゃなかったよ」
俺としては、これ以上駅前で騒がれて詩織たちに見つかったら人生が終わるので、「とにかく穏便に、事務的に、手慣れた大人の対応」で彼女をあしらい、スッと椅子を引いてココアを差し出しただけだった。
「ひゃうっ……!?(な、何よこれ。子役の時はあんなに無邪気なボッチの男の子だったのに……デートになった瞬間、何この圧倒的な洗練されたエスコートと、余裕のある大人の男のオーラは……っ!?)」
ルカちゃんは小さな悲鳴を上げて顔を真っ赤に染め、借りてきた猫のように大人しくなってしまった。
ハニトラを仕掛けにきたはずの彼女の心に、まさかの角度からガチ恋の火を付けてしまい、見事な返り討ちにしてしまうのだった。




