第二十八話裏話 コレット視点
私は、異世界で理不尽な冤罪をかけられて処刑され、日本の貧しい家庭に生まれ変わった元悪役令嬢。
前世の実家は冷酷で、誰も私を助けてくれなかった。だけど、今世の新しいお父様とお母様は、貧しいけれど私の芸能界での活躍を心から喜び、涙を流して応援してくれたの。映画『友達100人』の現場でも、温かい仲間に囲まれて、今度こそ私は、自分の好きなように幸せに生きるんだって決めていたわ。
それなのに、業界の女癖の悪いプロデューサーが、私の次の番組の生殺与奪を盾に、卑劣な欲望で私を脅しにきたの。
お父様たちの期待を裏切りたくない。でも、大人の汚い力には逆らえない。また前世のように、理不尽に踏み潰されて終わるのかと、絶望で世界が真っ暗になりかけた、その時だったわ。
パシィィン!!! と、心地よい音が響いて、私の目の前に、あの映画の伝説の主演――大河内駆くん(カケル様)が立ちはだかってくれたの。
『――そこまでですよ、プロデューサーさん。うちの大事な共演者に、汚い手を伸ばさないでいただけますか?』
無意識に、淀みのない完璧なレディファーストで私を守り、冷徹な、だけど誰よりも温かい背中で私を包み込んでくれた。
さらに、あいつの後ろからは、マネジメント同盟の高坂マネージャーや五味プロデューサーたちが、圧倒的な社会的権力でその悪党を一瞬でもみ消してくれたわ。
ドクン、と胸の奥が、一瞬で大爆発した。
……ああ、なんて格好よすぎるのかしら……っ!
前世の婚約者も、国王も、誰も助けてくれなかった私の絶望のシナリオを、あいつはただの一言で、完璧にハッピーエンドへと書き換えてくれたんだわ!
お外の女の人たちに揉まれて洗練された、あいつのあの底知れない『大人の男のオーラ』……あんなの、一瞬で惚れちゃうに決まってるじゃない!
お金を稼ぐためのレンカノのつもりだったのに、私のハートは完全にカケルの気品に美味しく陥落させられちゃったわ!
(悪役令嬢なんてどうでもいい! カケル様が私の世界一の王子様なら、私がこれから稼ぐ全財産を使って、駆くんを私の『専属の騎士』として、一生私のプライベートの神殿に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)
スマホを見ると、詩織ちゃんたちが裏のチャットで「新参のコレットちゃん、抜け駆けはコンプライアンス違反よ!」ってギャーギャー騒いでいるのが見えるわ。もちろん、私の前世のことなんてあの子たちには露知らず、ただの大人しいコレットちゃんだと思っているみたいだけど。
ふふ、お黙りなさい、おいたが過ぎる方々。前世で本物の修羅場をくぐり抜けてきた私の粘り腰と、悪役令嬢としての『智謀と執念』をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の張り巡らせた策略ですべて『断頭台の上に密閉』にして差し上げますわ。
待っていなさい、私の愛しい駆くん。
これからは私の、誰よりも古風で、誰よりも熱くて逃げられない『悪役令嬢前代未聞・シンデレラストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。




