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第二十七話 裏話 レギュラー優香視点

私、傷つきやすい不器用な男の子を甘やかしてあげたい、ごく普通の一般人レンタル彼女(優香)。

……のはずなんだけど、もう私の精神も完全に狂っちゃいそうよ!!


前回のファミレスでの恐怖が忘れられなくて、もう二度と駆くんの指名は受けないって心に誓ってたの。だけど、あの子、泣きそうな声で「今度は絶対絶対大丈夫だから! 誰も来ない山奥のピクニックデートだから!」って何度も縋るようにメッセージを送ってくるんだもの。

あんな可愛い顔で必死に頼まれたら、断れるわけないじゃない……!


そうして、登山靴を履いて命がけで向かった山の中。

席にいた駆くんは、私が来た瞬間、本当に嬉しそうに目を輝かせて、「ここは安全圏だから大丈夫だよ!」って、私のために凄くスマートにお弁当を広げてくれたの。

途中でクマやイノシシが出た時も、駆くんがリリしい顔で睨みつけるだけで獣たちが悲鳴を上げて逃げ出して、

(うわぁ……駆くん、やっぱり本物の主役みたいで最高に格好いい……抱きつきたいな……)なんて、普通の甘酸っぱいデートを楽しんでいたのよ、最初の10分間だけは。


山頂の方から、エリカちゃんの爆音で『駆くんのスケジュール管理は私たち【海外パッション同盟】だけよ』って、地響きみたいな凄まじいドラゴンの咆哮が響いてきた瞬間、私の全細胞が「死」を察知したわ。


駆くんは自分の覇気でクマが逃げたと思ってたみたいだけど、違うわよ。あの凶暴な野生動物たちは、山の上から迫り来るあの芸能界の最高権力者たち(総勢22名)のピンクの狂気に恐怖して、命がけでスタンピードを起こしてただけなのよ!


「ひいいいいい無理ぃぃぃぃぃ!!!」

私はお弁当を放り出して、4度目の音速脱走を敢行したわ。もうあの男の子、絶対に何かの呪いの装備を身につけてるに違いないわよ!


茂みの物陰からこっそり覗き見たら、駆くんが気配を完全に消して、凄まじい超高速のステップで山を下りようとしていたの。

(凄い! 駆くん格好いい、これなら逃げ切れる――)って思った瞬間に、木々の影から現れたみのりちゃんに、「緑と山の帝国グンマーをナメないことね」って、一瞬で首根っこを掴まれて捕獲されてた。


そのまま大物プロデューサーのお姉さんの胸の中にすっぽり埋め込まれて、詩織ちゃんたちに手足をロックされながら、駆くんが「もうやだぁぁぁお家に帰るぅぅぅ!!」って涙目で絶叫してるのが見えたわ。


駆くん、ごめんなさい。私、ただの一般人の女子大生だから、あの大自然すら恐怖で支配するピンクの欲望の化物たちから、あなたを救い出してあげる力はないの。

入稿を終えた後も、あんなに必死に逃げ回って、最後はみんなに寄ってたかって『よしよし』されてボロボロになってる駆くんの姿を見ていたら、私の中の何かも、完全にキュンと狂いそうになっちゃった……。


もし、あの22人の包囲網の隙を突いて、私が5回目のデートで駆くんを完全に私のワンルームマンションに連れ去って、一生鍵をかけて閉じ込めて甘やかしてあげたら……駆くん、私のことだけを大好きになってくれるかしら……?


夕暮れの山麓駅のホームで、スマホのレンカノアプリを開き、駆くんの『お気に入り登録』をガチチに固定しながら、私――一般人代表の優香もまた、あの大河内駆という危険な劇薬によって、静かに、完璧に狂わされていくのだった――。

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