第二十六話 裏話みのり視点
私は、プライドと郷土愛だけはハリウッド級の、自他共に認める神7の最後の一人(上毛みのり)。
映画『友達100人』に出演した時は、カケルや詩織ちゃんたちと一緒に『神7』として日本中を沸かせていたけれど、ファンから「神7のなかでは最弱で面汚しよ」ってネットで叩かれたのが悔しくて、見返すためにお洒落な国御フランスへ留学していたの。
だけど、ぶっちゃけフランスの生活は本当に過酷だったわ! 街はお洒落だけど、どこを探しても焼きまんじゅうの甘辛いタレの匂いもしないし、登利平の鳥めし弁当(松)も売っていない。私は毎晩、エッフェル塔(県庁のほうが立派ね)を見上げながら「フランスは食では我が故郷・群馬に劣るのね……」って涙を流していたのよ。
そんな私が、久しぶりに一時帰国して、日本にいる仲間たちの動向をリサーチしてみたら、業界の裏がとんでもないことになっていたのよ。
あの白雪詩織ちゃんや西園寺の令嬢、マネージャーやプロデューサー、さらにはエリカやココ、まひろまで、業界のトップの女たち(総勢21名)が、裏で『レンタル彼女』という名の超最先端の演技指導を受けながら、一般人になったカケルを血眼で奪い合っているっていうじゃない。
「ふん、本命は一番最後に現れるものよ! 神7トップのカケルを私のフランス仕込みのハニートラップで陥落させれば、私が名実ともに『神7の頂点』に立てるわ!」
そう意気込んで、まずは詩織ちゃんたちの前に現れてやったんだけど、あいつら「……え? 誰だっけ?」って本気で私の存在を忘れていたのよ! なっから腹が立つわ!
私は真のトップに親の顔を出すこともなく実力で這い上がるため、爆速でこのローカル地域限定レンカノサイトに『群馬が育んだ最高級キャスト』として電撃登録し、郷土愛のパッションでカケルの予約枠を力ずくで上書きしてやったの。
そうして迎えた、お洒落なフレンチカフェでの再会。
私は「エレガンスにひれ伏しなさい!」ってハニトラを仕掛けてやったんだけど、一般人になったカケルは、私の目をまっすぐ見つめて「周囲の目が集まるから座りな。君の昔の泥臭い努力、リスペクトしてたよ」って、もの凄くインテリジェンスでスマートな言葉を叩きつけてきたの。
……おれま(方言)。絶句したわ。
椅子をスッと引く手つき、視線の配り方、および私の過去のちっぽけな努力を誰よりも解ってくれている、あの洗練された大人の男のオーラ……!
ハニトラを仕掛けるつもりが、私のハートの方が、一瞬であいつの底知れない『大人の男の魅力』に完璧に落とされて(ホールドされて)しまったじゃないのよ……っ!?
マウントを取るための偵察のつもりだったのに、私のハートは完全にカケルのレディファースト(愛)に美味しく焼き上げられちゃったわ!
(神7の頂点なんてどうでもいい! カケルの隣が世界一のエレガンスなら、私が上毛かるたで鍛えたこの粘り腰を使って、駆くんを私の『専属の旦那様』として、一生私のプライベートの部屋に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)
スマホを見ると、詩織たちが裏のチャットで「新参の最弱、コンプラ違反よ!」ってギャーギャー騒いでいるのが見えるわ。
ふふ、お黙りなさい、日本の鶴さんたち(鶴舞う形の群馬県)。フランスの気品と群馬のからっ風をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の焼きまんじゅうのタレのように濃厚な愛ですべて『タレの中に密閉(白紙化)』にしてあげるわ。
待っていなさい、私の愛しい駆くん。
これからは私の、誰よりも空回りで、誰よりも熱くて逃げられない『上毛かるた的・ラブストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。




