第25話:ノーベル平和賞を受賞した神7が、あまりの方向音痴の末にレンタル彼女として現れた件
「……もう、どこへ逃げても同じだ。日本、インド、ハリウッド……。世界中のどこにサーバーがあるアプリを使っても、あの20名の包囲網からは逃げられない。俺の精神は完全に消滅した……」
あのボリウッド女優のカレー屋開業宣言を経て、実家すらもスパイシーな香りに包まれる中、俺のライフは完全にマイナスに突入していた。
どこに逃げても捕獲される。こうなったら、世間のコンプライアンスやヤンデレ同盟のレーダーから完全に外れた、超超超マイニアックな『位置情報バグ多発・完全迷子推奨レンタル彼女アプリ』を使うしかない。
「今度こそ、俺に執着していない、ただの迷子気味の普通の女の子と、地図の読み方でも語りながら穏やかにお茶をすするんだ……!」
俺は涙目でスマホを操作し、プロフィールに【よく迷子になります。誰か迎えに来てください♪】と書かれた、一番健康的で普通そうなキャストを指名した。
そしてデート当日。駅前の交番の横にある、至って普通の喫茶店。
「カ、カケルくん……!? ああ、よかった、やっと知っている顔に会えたわ……! ここはどこ!? ホワイトハウス!? それともアカデミー賞の授賞式会場なの!?」
「ぶっっっ!!!!???」
お冷やを喉に詰まらせて大爆発した。
個室のドアを勢いよく開けて入ってきたのは、物静かな迷子の子どころか、世界の首脳陣が身につけるような超高級なフォーマルドレスをまとい、手にはなぜか金色のメダルと賞状を抱えた超絶美少女――映画『友達100人』の撮影当時、主演の俺と一緒に『神7』の一角として絶大な人気を誇り、当時から「よく迷子になる」ことで有名だった元共演者、一ノ瀬まひろだった。
「ま、まひろ!? なんでお前がレンタル彼女にいるんだよ!? というか、その手にある『ノーベル平和賞』って書かれたメダルは何なんだよ!?」
「え? のーべる……? これ、アカデミー賞の最優秀主演女優賞(※大いなる誤解)じゃないの?」
「全然違うわ!! 映画の賞じゃなくて、世界の平和に貢献した偉人に贈られる世界最高峰の賞だよ!!」
俺が真顔でツッコミを入れると、まひろは動きをピタッと止めて、手元の賞状を何度も凝視しながら激しく絶句し始めた。
話を聞くと、彼女は数年前、星野エリカと一緒にアメリカへ演技留学するはずだったらしい。しかし、究極の方向音痴が災いし、飛行機の乗り継ぎを間違えてなぜかアフリカのガチな紛争地域へ不時着。本人は「アメリカってずいぶん銃撃戦のロケが多いし、治安が悪いんだなぁ……」と暢気に勘違いしたまま、現地でゲリラや少年兵を相手に笑顔でアイドル活動(100友の歌の披露)を継続。
結果として「紛争地域の女神」と崇められ、本物の和平交渉を次々と成立させ、本当にノーベル平和賞を受賞してしまったのだという。
「それでね、スウェーデンでの授賞式に行く途中でまた迷子になっちゃって……。気づいたら、日本の『レンタル彼女』っていう最先端の道案内サービス(※大いなる誤解)に登録してて、カケルくんの前にいたの……」
「レンカノは道案内サービスじゃないし、スウェーデンから日本への迷い方どうなってんだよ!!」
「……え? っていうことは私、アメリカじゃなくてアフリカに行ってたの? 映画のロケじゃなくて本物の戦争を止めてたの……!? ひ、ひえええええ!! 世界の大人たち怖すぎるよぉぉぉ!!」
今更になって、自分がやってのけた事の重大さと、世界のガチすぎるスケールに気づいて顔を真っ白にして震え出すまひろ。
「もうやだぁ……世界怖すぎるよぉ……! カケルくん、私、もう絶対にあなたから離れないからね! これからは毎週、この『みちあんない(独占予約)』で、私をあなたの専用の彼女(保護対象)にしてね!」
俺の何気ないガチすぎる地理と常識へのツッコミによって、ノーベル平和賞を受賞した世界の女神の恋心と庇護欲に爆速で火をつけてしまい、レンタル彼女の指名争奪戦へと、文字通り世界平和規模の破天荒な参戦を決定されるのだった。




