第二十一話裏話 麻衣視点
私は、テレビ局で番組の全権を握る敏腕チーフプロデューサー。
十年前は現場でミスばかりして怒鳴られていた無能ADだったけれど、あの『友達100人』の現場で、癖が強すぎる子役100人をまとめ上げるという奇跡の功績を叩き出し、若くして今の地位にのし上がったわ。……まぁ、実際は当時主演だった駆くんが、裏で子役たちを上手く誘導して私をサポートしてくれたおかげなんだけどね。あの子は私の恩人であり、私の最初で最後の王子様だった。
そんな私が、最近頭を抱えていたの。
うちの番組に出演しているトップアイドルの詩織や、スポンサー令嬢の麗華に、何やら不穏なスキャンだル疑惑(レンカノ依存)が出てきたからよ。
今は上層部も無視を決め込んでいるけれど、コンプライアンス的にはかなりヤバい。
そんなある時、大株主である西園寺財閥のトップ(麗華の父親)から「話がある」と個室に呼び出されたの。
(あ、終わったわ。私のプロデューサーキャリア、さようなら……)と絶望していたら、なんと。
『五味プロデューサー、いつも娘がお世話になっておる。して、娘と……娘婿の駆くんが、現場でご迷惑をかけていないかね?』
って、もの凄く深々と謝罪されたのよ。
……ン? 娘婿? 親公認? 私の頭はパニックよ。
親曰く「影で接触したが、実に立派な好青年で、娘を任せるにふさわしい」とのこと(※第2話の麗華の妄想デートの裏工作のせい)。
待て待て、それトップ芸能人の立派なコンプライアンス違反でしょうが!
私はすぐに、芸能事務所のチーフマネージャーである高坂さんに連絡を入れたわ。彼女はコンプライアンスの塊だから、一発でその男を成敗してくれると思って。そしたら、高坂マネージャーは電話の向こうでこう言ったの。
『五味P、心配いりません。その駆くんは、私が全力で引き受けて私の部屋で管理(独占)しますから(グヘヘヘ)!!』
……意味がわからない。あのコンプラの鬼まで頭が沸いてる。
私は危機感を覚え、自分でその『諸悪の根源』の男を調べることにしたの。その結果、行き着いたデータを見て、私はひっくり返りそうになったわ。
あの、一般人になって友達0人のボッチ生活を送っている、大好きな大河内駆くんだったんだもの!
私はすぐに、あいつが利用している最底辺のマイナーなレンタル彼女サイトの情報をハッキング……じゃなくて、大人のコネで取得してキャスト登録し、プロデューサーの権力で指名枠を奪い取ったわ。
そうして迎えた、キッズカフェでのデート。
待ち合わせ場所にいた駆くんは、私の顔を見るなり、魂が口から抜けかけたような顔をして、「もうやだぁ……お喋りしたかっただけなのにぃ……」って、完全に精神的にやられて『幼児退行』気味になっていたの。
芸能界の黒い大人の欲望から逃げ出したのに、今度はうちのタレントやマネージャーたちの『ピンクの欲望(狂気的な愛)』の餌食になって、すり潰されていたあの子。
クッションを抱きしめて涙目を浮かべる駆くんのその幼児感を見た瞬間、私の中にあった「プロデューサーとしての理屈」はすべて消し飛んだわ。
ああ……十年前、現場で100人の重りを背負って、私を健気に助けてくれた時の駆くんだわ。
愛しい。可哀想に。この壊れかけた可愛い男の子を、私が一生この胸で抱きしめて、守って、甘やかしてあげなきゃ!
(……それに、駆くんのメンタルをケアして、このまま私の『旦那様』にしちゃえば、お外の泥棒猫たちから駆くんを完全に隔離(独占)できるんじゃないかしら……? グヘヘヘ、お姉ちゃんが全部お世話してあげるからねぇ……♥)
スマホの画面を見ると、高坂マネージャーや詩織たちが、裏の同盟チャットで「次の予約枠は譲らない」って醜く罵り合っているのが見えるわ。
ふふ、お黙りなさい、タレントとそのマネージャーの分際で。番組の予算と生殺与奪の権(予約枠)を握っているのは、プロデューサーのこの私よ。あなたたちのスキャンダル(予約枠)、私の権力ですべて『番組打ち切り(白紙化)』にしてあげるわ。
待っていなさい、私の可愛い駆くん。
これからはお姉ちゃんの特等席(胸の中)で、一生誰にも怯えずに、私だけに甘やかされて暮らすのよ――。




