第20話:芸能界のコンプライアンスが崩壊の危機なので、元担当マネージャーが緊急出動します
「……よし。今度こそ、今度こそ絶対に普通の女の子と穏やかなリハビリデートをするんだ……!」
あの鬼トレーナーによる地獄のスパルタ特訓を経て、俺の筋肉は悲鳴を上げていた。
おまけに、あの13人同盟(古参+実家+モブ)に加えて、大物監督や天才脚本家、鬼トレーナーまで裏で俺の枠を奪い合っているという噂を耳にし、俺の精神生命力は完全に限界を迎えていた。
「もう刺激の強いお姉様方はこりごりだ。今度こそ、癒やし系で、常識があって、普通の、優しくて地味めな女の子を……っ!」
俺は涙目でスマホを操作し、新しい最底辺のマイナーなレンタル彼女サイトで、プロフィールに【趣味は読書と事務作業、落ち着いた大人の対応を心がけます】と書かれた、一番地味で常識的なキャストを指名した。これなら、何事もなく静かにお茶を飲んで終わるはずだ。
そしてデート当日。落ち着いたホテルのビジネスラウンジ。
「……ちょっと大河内駆くん。あなた、自分が芸能界のトップクラスの女たちをどれだけ狂わせているか、自覚はあるのかしら? ええ?」
「ぶっっっ!!!!????」
メガネを指先でクイッと押し上げ、ビジネススーツに身を包んだ超絶美女――映画『友達100人』の撮影当時、子役時代の俺もめちゃくちゃお世話になった、芸能事務所の敏腕マネージャー、高坂麗美さんだった。
現在は詩織や麗華(令嬢キャラ)といった超大物たちのチーフマネージャーを担当している彼女が、なぜか俺のレンタル彼女として腕を組んで睨みつけていた。
「ま、マネージャー!? なんでレンタル彼女のキャストにあなたがいるんですか!?」
「コンプライアンスの緊急事態よ! あんたに会うためにこのサイトに登録せざるを得なかったの! さあ白状しなさい、駆くん。あなた、うちの詩織たちにどんな『結婚詐欺』や『洗脳』を仕掛けたのよ!?」
「俺が騙されてる側だよぉぉぉぉ!! 詐欺も洗脳もしてないよ!!」
俺は必死になって、これまでの経緯――寂しくてレンカノを頼んだら、詩織たちが勝手に暴走して枠を強奪し、ファミレスで13人の世界大戦を起こしたこと、俺はただ逃げ回っている被害者であることを、涙ながらに弁明した。
「……え? じゃあ、詩織たちが勝手に勘違いして、独占欲で狂ってただけなの?」
「そうだよ! 俺はただの友達0人の哀れなボッチ高校生だよ!」
マネージャーは目を丸くし、ハァ……と深くため息をついて肩の力を抜いた。
「なーんだ、みんなの壮大な誤解だったのね。あいつら、完全に頭が沸いてたのね……」
誤解が解けてホッとしたのか、マネージャーは「それにしても……」と言って、俺の顔を至近距離からじっと凝視してきた。
「ちょっと見ない間に、駆くん……随分とイケメンな男の子になったわね? 所作もスマートだし、大人の男としてのオーラが当時とは比べ物にならないわ……(グヘヘヘ)」
「マネージャー!? 心の声が盛大に漏れてるし、目が完全にハンターのそれになってるんだけど!?」
「よし決めたわ! 詩織たちのコンプライアンスを守る(※建前)ためにも、この危険な駆くんは、私が個人的に回収して『彼女』として24時間徹底管理(独占)してあげる! これからは毎週、私の個人面談の時間よ!」
俺の無実の証明(※ただの必死の弁明)と、レンカノで無自覚に鍛え上げられたイケメンオーラによって、今度は芸能界のコンプライアンスの守護神であるはずの敏腕マネージャーの恋心を完全覚醒させてしまい、レンタル彼女の指名争奪戦(修羅場)へと本格参戦を決定されるのだった。




