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第十九話裏話 麗視点

私は、人間の身体を完璧にデザインするパーソナルトレーナー。

数々の有名芸能人やアスリートを指導してきたけれど、私のキャリアの『最初の担当』であり、最高の誇りだったのは、映画『友達100人』で主演を演じたカケルくん(駆)だけだった。

当時は「芸能人ってこんなに物覚えが良くて、一を言えば十を理解して動けるんだから楽な仕事ね」なんて思っていた。だけど、あの子が引退した後、他の芸能人を指導してみて、私はしばらく本気で悩むことになったの。『……なぜ、この人たちは私が教えた通りのフォームができないのかしら?』って。

そこでやっと気づいた。他の人が無能なんじゃない。あの駆くんが、異常なまでの才能の塊(天才)だっただけなのだ、と。

そんなある日のこと。私が仕事の打ち合わせで新藤鏡子総監督のオフィスを訪ねた時、私は奇妙な光景を目撃した。

あの冷静沈着な鏡子監督が、とある時間(18時ちょうど)になると、仕事を放り出してスマホの画面を必死に凝視しているの。しかも、あの大物監督の顔面の四季(喜怒哀楽)が、数秒の間に目まぐるしく巡り変わっているのよ。

(不思議ね……。あんな監督、見たことがないわ)

その後、監督が席を外した時、机の上にポツンとスマホが置かれていた。

見てはダメだと理性を働かせながらも、私のトレーナーとしての『観察眼(好奇心)』が勝ってしまい、画面を覗き込んでしまったの。そこに映っていたのは、レンタル彼女の予約画面と、大河内駆くんの名前だった。

(レンタル彼女……? 鏡子監督なら、業界の一流芸能人といくらでも再婚可能なはずなのに、なぜ一般人になった駆くんを……?)

猛烈な疑問を抱いた私は、「一度きりのつもりで、相手の現状をこの目で確認してやろう」と、そのサイトにキャストとして登録し、トレーナーの執念で駆くんの指名枠を奪い取った。

そうして迎えた、運動公園でのデート。

待ち合わせ場所にいた駆くんは、私の顔を見るなり、顎が外れそうなほど驚いてパニックを起こしていた。引退して友達0人のボッチになったあの子の姿を見て、最初は「ずいぶんと堕落したものね」って、大人としてガツンと言ってやるつもりだったの。

――だけど、いざ『トレーニング(デート)』を始めてみたら、私の胸の奥は、恐怖するほどの歓喜と愛おしさで震えることになった。

私がホイッスルを鳴らして厳しいメニューを課すと、あの子は文句を言いながらも、私の教えた通りの完璧なフォーム、完璧な体幹のバランスを一瞬で再現して、私の指導に必死に食らいついてくるの。

そう、十年前と全く変わらない、私の言葉を誰よりも真っ直ぐに吸収してくれる、世界で唯一の『私の最高傑作』のままで。

(……ああ、やっぱりあの子、私の教えたことを何でもできちゃうんだわ。最高に格好よくて、愛しい男の子……っ!)

ドクン、と胸の奥が跳ね上がった。

あの子が必死に汗を流しながら、私の指示通りに身体を動かしている姿を見ていたら、私の中の『指導者としての独占欲』が、一瞬で『一人の女性としてのガチ恋(執着)』へと上書きされちゃったの。

駆くんは「13人から逃げ切る体力をつけるため」なんて不届きなことを言っていたけれど、そんなの私の手のひらの上で永遠に走らせてあげるわ。私の特訓から、あなたは一生逃げられないのよ。

スマホを開くと、鏡子監督や白雪詩織ちゃんたちが裏の同盟チャットで「次の枠は誰よ!」って見苦しく揉めているのが見えるわね。

ふふ、おままごとはそこまでよ。駆くんの筋肉(からだ)の基礎を作ったのはこの私。

これからは私の『恋の特別トレーニング』で、あなたの身体も、心も、すべて私だけのものにしてあげるからね、私の可愛い駆くん――。


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