第19話:トレーニングの時間です! ――ただし、お互いの目的はズレまくっている模様
「……よし。今度こそ、今度こそ絶対に普通の女の子と穏やかなリハビリデートをするんだ……!」
あの総勢13名によるファミレス世界最終戦争から奇跡の自力脱出を果たした俺は、己の『圧倒的な体力不足』を痛感していた。
もし、またあのプレデターたちに囲まれたら、次は絶対に逃げ切れない。
「そうだ。普通の女の子と楽しくお喋りしつつ、もしもの時にあの13人から音速でエスケープできる『強靭な脚力と体力』を養えるデートプランにすればいいんだ!」
俺は携帯を操作し、新しいマイナーなレンタル彼女サイトで、プロフィールに【スポーツ万能・一緒にランニングしましょう♪】と書かれた、一番健康的で普通そうなキャストを指名した。これなら、さわやかなスポーツデートを楽しみながら、合法的に脱出用のトレーニングができる。
そしてデート当日。新緑の美しい、だだっ広い総合運動公園。
「……大河内駆くん。そのダラけた構え、猫背気味の骨盤、および締まりのない大臀筋……。相変わらず、私がいなければ何もできないようね?」
「ぶっっっ!!!!????」
指定されたジャージを着て現れたのは、さわやかなスポーツ女子どころか、眩しいほどのナイスプロポーションをスポーツウェアに包み、手にはストップウォッチ、首からはホイッスルを下げた超絶美女――映画『友達100人』で、子役時代の俺に基礎体力やレディファーストの所作を叩き込んだ鬼の専属トレーナー、神崎麗さんだった。
現在は芸能人御用達のカリスマパーソナルトレーナーとして大活躍している彼女が、なぜか俺のレンタル彼女として仁王立ちしている。
「と、トレーナー!? なんでレンタル彼女のキャストにあなたがいるんですか!?」
「細かい問答は不要よ! はい、今の動揺で体幹がブレたわね! 減点5点! これより本日のデート――いえ、特別トレーニングを開始します!!」
「やっぱり指導じゃねえか!! デート感ゼロだよ!!」
ピピッ――!! と鋭くホイッスルが鳴り響く。
「ほら、走る! 脚が上がっていないわよ、カケルくん! あなたを私の最高傑作の身体に仕上げたのはこの私。外の泥棒猫たちに、私の作品をナメられるわけにいかないの!」
「だから俺は、その泥棒猫たち(13人)から全力で逃げ切る体力をつけるために走ってるんだよぉぉぉ!!」
お互いの目的が「逃がさないためのトレーニング」と「逃げ切るためのトレーニング」で致命的にズレているのだが、悲しいかな、俺の元天才子役としてのポテンシャルがここで牙を剥いた。
トレーナーの鬼のようなスパルタ指導(腿上げ、ダッシュ、体幹プランク)に必死にしがみついているうちに、俺の身体が十年前の『驚異的な物覚えの良さ』を思い出し、超スピードで完璧なフォームへと適応し始めてしまったのだ。
「っ……! 今の切り返しのステップ、および筋肉の瞬発力……。やっぱりあなた、私の教えたことを一瞬で自分のものにする、本物の才能(天才)だわ……っ!」
「ひえっ!? トレーナーの目が、指導者(ドS)から女の子(ガチ恋)の目に変わってて怖いんだけど!?」
「よし! あなたのその素晴らしい身体をさらに極限まで私色に調教するために、これからは毎週、このデートプラン(独占予約)を継続させてもらうわね! 私の最高傑作を、誰にも渡さないんだから!」
俺の無自覚な才能の片鱗(※ただの必死な逃走訓練)によって、かつての鬼トレーナーの恋のモチベーションを完全覚醒させてしまい、レンタル彼女の指名争奪戦(修羅場)へと本格参戦を決定されるのだった。




