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閑話が本題 駆の映画監督


「……はぁ。まさか、日本映画界の重鎮と、その娘の身内の喧嘩にまで俺が巻き込まれるなんて、一体どういう因果なんだ……」


数々のトラウマを経験した俺は、映画『友達100人』の総監督である新藤鏡子監督のオフィスで、頭を抱えていた。

事の始まりは、鏡子監督と、その娘であり高校の映画部に所属する未来の、あまりにも激しい「監督論」の親子喧嘩だった。


「未来、あなたの撮る映画はほんわかしすぎていて、商業映画としてのフック(王道)が決定的に足りないわ!」

「お母様こそ、古臭いハリウッド的な王道に囚われすぎて、現代の視聴者の心(エモさ)が分かってないのよ!」


お互いに一歩も引かない母娘は、ついに「お互いに一本ずつ短編映画を作ってネットの投票形式で対決する」という、とんでもない勝負を始めてしまったのだ。

さらに、仲裁に入ろうとした俺までが「カケル、あなたも一本撮りなさい! あなたの視点(カメラアングル)が一番公平なジャッジになるわ!」と未来に強引に巻き込まれ、なぜか俺も含めた三つ巴の短編映画対戦へと発展してしまった。


こうして、それぞれのプライドを懸けた映画制作がスタートした。


まず、経験も資金力も圧倒的な新藤鏡子監督は、白雪詩織や西園寺麗華、蓮といった【出し抜き同盟】の面々を豪華キャストに迎え、圧倒的なスケールとドラマ性あふれる『極上の王道エンターテインメント映画』を撮影。


対する娘の未来は、隠れ家カフェの葵先輩や図書館のひよりちゃんたち【モブモブ同盟】のメンバーを起用し、日常の何気ない輝きや心の機微を優しく切り取った『至高のほんわかエモ映画』を完成させた。


そして俺はというと、映画の機材なんてまともに扱えないので、冴子ママンにハンディカメラを持たされ、美夜お姉ちゃんやひまり、隣の詩織たち大河内家のドタバタな毎日にただレンズを向け続けた、文字通りの『日常ホームドキュメンタリー映画』を作成した。


完成した三本の短編映画は、特設サイトにて一週間のネット公開&ユーザー投票形式で競わされることになった。

そして迎えた投票締め切りの日。集計された結果の画面を見て、俺たち全員は呆然とすることになった。


「な、なんと……まさかの、小数点以下まで完璧に並んだ『同率1位』だわ……!?」


三本の映画は、どれも完璧に同じ票数を獲得していたのだ。

しかし、寄せられたレビューのデータを分析して、鏡子監督と未来はハッと息を呑んだ。


鏡子監督の王道映画は「素晴らしい完成度だが、少し展開が読める」という長所と短所があり、未来のほんわか映画は「最高に癒やされるが、大きな盛り上がりに欠ける」という評価だった。そして俺の日常ドキュメンタリーは「ただの家族の身内ネタだが、なぜか中毒性が高くて永遠に見ていられる」という、ターゲット次第で評価が全く変わるという結果だったのだ。


作品の良し悪しではなく、観る側の求めている属性(ターゲット)によって評価の本質が変わることを、数字の前に再認識した母娘。


「未来、私の負けよ。あなたの描く『ほんわかした空気』は、私には絶対に真似できない、現代の視聴者を惹きつける本物の才能だわ」

「お母様……。私こそ、お母様の撮る圧倒的なプロの『王道の画面構成』の凄さを、自分でカメラを回して初めて思い知らされたわ。私、もっと勉強する!」


お互いの長所と短所を認め合い、固く握手を交わした新藤母娘。これで映画界を担う二人の天才が、さらなる高みへ向かって歩み出す完璧なハッピーエンド――。


――になるはずが、画面に映る俺のドキュメンタリーの映像(※美夜お姉ちゃんに強制連行される俺の半泣き顔など)をじっと凝視していた、詩織たち【出し抜き同盟】の面々の瞳に、不穏なプレデターの輝きが灯った。


「ちょっとカケル、なによこのドキュメンタリー映画の私の映り方は! カメラの距離が遠すぎるわ! 次は駆監督が手取り足取り、私の肌に触れるくらいの至近距離(※大いなる下心)で映画の撮り方を教えなさい!」

「麗華さんの言う通りよ、駆くん。私を主演にしたプライベート映画の撮影の指示(エスコート)は、監督である駆くんが責任を持って手取り足取り行うべきです!」

「駆! 俺を撮るならもっと格好よく映せよな! ほら、今すぐカメラの構え方を教えろ!」


「ぶっっっ!!!!???」


映画の真髄に目覚めてしまった白雪詩織、西園寺麗華、蓮たちの面々が、完璧に目を血走らせて一斉に俺の元へと詰め寄り、教卓代わりのデスクを叩いて大暴走を始めたのだ。


「ひいいいいい無理ぃぃぃぃぃ!!! 2人の和解は綺麗に終わったのに、なんで俺がマンツーマンで手取り足取りカメラ指導をしなきゃいけないんだよぉぉぉぉ!!!!」


俺の切実な絶叫は、所有権(監督の特等席)を巡って再び火花を散らし始めた彼女たちの怒号にかき消され、日常閑話のはずの映画対決は、結局いつも通りのカオスな大爆発暴走エンドで幕を閉じるのだった。


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