第18話:レンタル彼女を頼んだら、友達の母親(伝説の映画監督)が説教しにやってきた件
「……もう、今度こそ! 今度こそ本当の本当に、普通の女の子を……っ!」
13人のファミレス大乱闘、そしてカフェでの天才脚本家(城ヶ崎先生)の完全覚醒を経て、俺の精神は消滅寸前だった。俺は震える指でスマホを操作し、新しいマイナーなレンカノアプリで、一番物静かそうな女の子を予約した。
デート当日。高級ホテルの静かなティーラウンジ。
「……あなたが、私の娘を毎週末のように呼び出している不埒な男ね?」
「ぶっっっ!!!!????」
現れたのは、物静かな女の子どころか、黒いトレンチコートをまとい、圧倒的なカリスマと大人の色気を放つ麗人――映画『友達100人』の総監督であり、5話で俺のカメラマン(?)になった未来の母親、**新藤鏡子**総監督だった。
夫(前監督)を亡くした未亡人であり、日本映画界の重鎮。
「か、監督!? なんで未来のスマホから、母親の監督がレンカノに現れるんですか!?」
「保護者通知システムよ! 娘が将来の取材のためとか言って、怪しいサイトに登録して男と会っていると知ってね。娘のスマホを没収して、その『ケダモノなリピート客』に大人としてガツンと言ってやろうと身代わりで来たら……まさか、カケル(駆)くんだったなんて……」
鏡子監督は驚愕し、その直後、深く、深くため息をついた。
監督の目が、怒れる母親のそれから、一気に切なげな大人の女性の目へと切り替わる。
「……そっか。あなた、芸能界を辞めてから、友達が一人もいなくなっちゃったのね。私たちが、あなたをあの過酷な現場で使い潰して、心を傷つけてボッチにさせてしまった……大人の責任だわ」
「え? いや、そんな、監督のせいじゃ――」
「いいの。今日は『レンタル彼女』として、私があの日の罪滅ぼしをしてあげる。……ほら、おいで?」
ラウンジのソファーで、鏡子監督は優しく俺の肩を抱き寄せ、あの大ヒット映画の総予算を動かす美しい手で、俺の頭を優しく撫で始めた。
「大変だったわね、駆くん。寂しかったんでしょ? 頑張ったね……」
「くっ……!」
ママン(冴子さん)の授業参観とは違う、映画界のトップに立つ大人の女性からの、包み込むような究極の甘やかし。あまりの居心地の良さに、俺の脳がメルトダウンを起こしかける。
しかし、デートの最中。
俺が何気なく頼んだ紅茶の、カップの持ち方、目線の配り方、そして通りすがりの子供が落としたオモチャをスマートに拾って笑いかけた、その一瞬。
鏡子監督の、映画監督としての鋭い瞳がカチリと光った。
「……っ。今の視線の誘導、そして無意識の1秒の静止。……駆くん、あなた引退してボッチのくせに、表現者としてのポテンシャル(オーラ)が、当時より何倍も化け物じみて研ぎ澄まされているじゃない……!」
「え!? いや、俺、変な女の子たちに毎週レンカノで揉まれて、ただ生き残るためのスキルが身についただけで――」
「だめよ、こんな天才を一般人のまま腐らせておくなんて、映画界の損失、いえ、私の損失だわ。……でも、あの子たちの修羅場にあなたを戻すのも……ああっ、どうすればいいの……!」
俺の「レンカノサバイバルで鍛えられた無自覚な天才性」を発見してしまい、俺を芸能界に連れ戻すべきか、このまま大人の包容力で独占して甘やかすべきか、頭を抱えてガチで悩み始める未亡人総監督。
俺のボッチ脱出リハビリは、ついに『映画界の最高権力者』の心を完全に狂わせてしまうのだった。




