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第15話:俺は何もしていないのに、勘違いの潜入捜査官がミイラ取りになった件


「俺はただ……穏やかな、普通の青春がしたいだけなんだ……」


毎週末、違う美少女たち(ヤンデレ幼馴染、ツンデレ令嬢、男装の親友、義姉妹など)に連れ回され、精神のキャパが限界を迎えていた俺は、ある日、義理の母・冴子さんに飲食店へ連れていかれ、今後の人生についての『面談』を受けていた。

当然、未成年の俺にお金はないので、お会計は母さんがスマートに済ませてくれた。


「ごちそうさま、母さん。……はぁ、早く家に帰って寝たいよ」


トボトボと店を出る俺。しかし、その背中を、凄まじい正義感の炎を宿した目で睨みつける影があった。

映画『友達100人』で、カケルとはほとんど絡みのなかった元共演者(現在は一般人)の、**名取(なとり)正美(まさみ)**ちゃんだ。


彼女は、俺が毎回違う美少女と親密そうにデートしている姿を街で何度も目撃し、「あいつ、女の子の心を弄ぶ悪い男(女性の敵)だ!」と思い込んでいた。その上、今回は大人の女性(母さん)に食事を奢らせている姿を見て、脳内妄想が最悪の方向にバーストした。


(間違いないわ……! あいつ、元天才子役の肩書きを使って、大人の女性から若い女の子まで、みんなを都合の良いお財布にしているんだわ……!)


正義感の強い彼女は「元共演者として、人としてガツンと言ってやらなきゃ!」と、後日、俺が詩織や麗華たちと歩いているところに猛然と突撃してきた。


「大河内駆! あなた、自分のやってる汚いことが恥ずかしくないの!?」

「えっ!? 誰ですか!?」


突然の糾弾に驚く俺。しかし、それ以上に素早く動いたのは、俺の周りにいたヒロインたちだった。

詩織が「駆くんを侮辱する奴は許さない……」と目を暗黒に染め、麗華が「西園寺の権力であなたを社会的に消去してあげましょうか?」と遮り、つむぎお姉さんが笑顔で圧力をかける。彼女たちは全力で俺を庇い、正美ちゃんを遠ざけた。


その過剰な擁護っぷりを見た正美ちゃんは、さらに致命的な誤解をした。

(な、何よこれ……! あの子たち、あいつにすっかり魅了されて、盲信的に操られている(洗脳されている)んじゃないの!? 恐ろしい男……!)


正美ちゃんは「あの子たちの目を覚まさせなきゃ!」という使命感に燃え、現状の証拠を掴むための『潜入捜査』として、俺の使っているレンタル彼女サイトにキャスト登録し、執念で俺とのマッチングを勝ち取ったのだ。


そして週末。高級ホテルのティーラウンジ。

「……で、あなたが今日の指名相手ね。観念して、あの子たちに何をしたのか白状しなさい!」


現れた正美ちゃんは、パイプ椅子に俺を縛り付けるかのような尋問モードで迫ってきた。

しかし、ここまでの数週間、本物のヤンデレや狂気的なお姉様方に揉まれ続けてきた俺の『レンカノ対応(ただの事務的な塩対応)』は、すでに達人の領域(職人技)に達していた。


「……はぁ。名取さんさ、とりあえず座って。周囲の目が集まるから大声を出さない。はい、メニュー。紅茶でいい? すみません、アールグレイを二つ」

「えっ? あ、うん……」

「君、いじめられっ子を助ける正義の味方役だったよね。今もこうして、周りの子のために単独でここまで潜入する行動力がある。それ、本当にすごいよ。……ほら、冷める前に飲みな」


俺としては、これ以上騒がれて他のヒロインに見つかったら人生が終わるので、**「とにかく穏便に、事務的に、手慣れた大人の対応」**で彼女をあしらっただけだった。


しかし、俺が雑にお茶を注ぎ、冷ややかな、だけど洗練された大人の気遣いを見せた瞬間。

正美ちゃんは「ひゃいっ……!」と小さな悲鳴を上げて顔を真っ真っ赤に染め、借りてきた猫のように大人しくなってしまったのだ。


「(……な、何よこれ。あの子たちが盲信しちゃう理由が分かったわ……。デートになった瞬間、何この圧倒的なレディファーストと、余裕のある大人の男のオーラは……っ!?)」


俺がこれまでのトラウマのせいで『レンカノ対応』に慣れすぎていただけなのだが、正義の潜入捜査官の心に、まさかの角度からガチ恋の火を付けてしまい、見事なまでのミイラ取りになってしまうのだった。

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