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第12話:ママンのガチ恋勢、家庭教師として襲来する(※ただしスピード解約)


「駆くん。最近、週末にフラフラとお出かけばかりしていると思ったら……今期のテスト、学年22位って何かしら?」


リビングで、義理の母・冴子さんが冷ややかな笑顔で俺の成績表をトントンと叩いていた。

レンタル彼女を使いすぎ、数々の修羅場に脳のキャパを奪われ続けた結果、俺の成績は微減していたのだ。いや、落ちたと言っても学年二桁だし、十分に上位なはずなのだが……元天才子役に対する大河内家の基準は厳しかった。


「教育に悪いわね。というわけで、あなたに家庭教師をつけました。今日の放課後から来ます」

「ええっ!? 家にこれ以上、女が増えるの勘弁してよ!」


そして放課後。俺の部屋にやってきたのは、黒髪をきっちり結び、スーツを着こなした、いかにも真面目そうな現役女子大生の家庭教師一ノ瀬(いちのせ)涼香(すずか)さんだった。



「初めまして、大河内くん。今日からあなたの勉強を見る一ノ瀬です。……あれ? 君、どこかで……」

「あ、初めまして。俺も、なんか一ノ瀬さんの声、聞いたことあるような……」


お互いにうっすらとした既視感を覚えつつも、勉強がスタートした。

実は彼女、映画『友達100人』でカケルの「頼れる先輩役」を演じていた元子役仲間なのだが、お互いに当時は絡みが薄く、すっかり忘れていたのだ。さらに彼女は、俺という人間に1ミリも興味がなかった。


しかし、休憩時間。

お茶を持って部屋に入ってきた母・冴子さんを見た瞬間、一ノ瀬さんのペンの動きが完全に止まった。


「お、お、大河内冴子先生……!?!? 本物のサエコ先生ですかっ!?」

「あら、私の現役時代の芸名を知っているのね?」


一ノ瀬さんはガタッと椅子を蹴立てて立ち上がると、目を輝かせて母さんの手を握りしめた。

実は彼女、あの映画の撮影当時、厳しい演技指導の中、学校の先生役だった冴子さんの凛とした美しさと優しさに魂を奪われた、**大河内冴子のガチ恋(崇拝)勢**だったのだ! 冴子さんに憧れるあまり、自身も本物の教師を目指して勉強しているらしい。


母さんが部屋を出た後、一ノ瀬さんは鬼の形相で俺を睨みつけてきた。

「大河内くん……カケルくん!! 君、あの時の主演のカケルくんだったのね!? なんで冴子先生がこの家にいるの!? 再婚!? 嘘でしょ、職権乱用よ! ずるい!」

「俺のせいじゃないよ! 父親の再婚相手だよ!」


「いい、カケルくん。これから毎日、私に冴子先生の『好きな食べ物』『趣味』『お休みの日の過ごし方』をすべて報告しなさい! 代わりに勉強はいくらでも教えてあげるから!」


ママンの情報を聞き出すため、一ノ瀬さんによる文字通りの『猛アタック(尋問指導)』が始まった。

しかし、ここで俺の「元天才子役」としての集中力がアダとなる。一ノ瀬さんの怒涛の熱血指導(ママン情報引き出し作戦)に必死に食らいついた結果、**わずか数週間で俺の成績は学年トップ10に爆戻り**してしまったのだ。


「駆くん、成績が戻ったから家庭教師は今週で解約ね」という母さんの一言で、一ノ瀬さんはあっけなく解約処分となった。


「カケルくん……私はまだ、冴子先生のスリーサイズ……じゃなくて、秘密の情報を何も聞き出せていないのよおおお!!」と泣き叫びながら大河内家を追い出された一ノ瀬さん。

しかし、彼女は指導中に、俺がボソッと「レンカノ代が……」と呟いていたのを聞き逃していなかった。


「……そうか。レンタル彼女なら、あいつを合法的に指名して、冴子先生の情報をいくらでも聞き放題じゃないの……! 待っててね、私のサエコ先生ぇぇぇ!!」


こうして、動機が完全に斜め上すぎる新たな元共演者(先輩役)が、レンタル彼女の指名争奪戦(修羅場)へと参戦を決定するのだった。

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