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第一話裏話 詩織視点

### 【白雪詩織の視点】あの日から、私の世界は駆くんを中心に回っている


小さな頃の私は、今テレビで見せるような愛想のいい笑顔なんて一つも作れない、ただの泣き虫で内気な女の子だった。隣の家に住む駆くんの後ろを、いつもお気に入りのぬいぐるみを抱きしめながら、おずおずと付いていくことしかできない子供だった。


そんな私を、芸能界という大人の泥沼に引っ張り出したのは、他でもない私の両親だった。

右も左も分からず、怒鳴り散らす監督や、値踏みするような目で見つめてくるスタッフたちに囲まれて、私は毎日、恐怖で足が震えていた。オーディションの控え室で、今にも泣き出しそうだった私の前に、泥だらけの靴を履いた駆くんが、いつもと変わらない眩しい笑顔で現れたの。


『大丈夫だよ、詩織! 詩織の普段の可愛いところをそのまま出せば、みんなイチコロだからさ! 僕が隣にいるから、何も怖くないよ!』


映画の撮影が始まってからも、駆くんはいつも私をべた褒めしてくれた。私の下手くそな演技にも、彼は全身で応えてくれた。彼の瞳に映る私があまりにも綺麗だったから、私は折れそうな心を繋ぎ止め、カメラの前で笑うことができた。彼が私の手を引いてくれたから、私は『国民的ヒロイン』という虚飾の座にまで登り詰めることができた。


あの日から、私の世界の中心は、ずっと駆くん(カケル)だけ。


それなのに……駆くんは、悪い大人たちに傷つけられて、私を置いて芸能界を去ってしまった。

駆くんのいない世界なんて、モノクロの映画と同じ。だけど私は、彼がいつ戻ってきてもいいように、彼の隣に立つにふさわしい最高の女優であり続けようと、今日まで必死にトップを走り続けてきた。


だから、駆くんがコッソリと『レンタル彼女』なんて破廉恥なサービスを使っていると知った時は、脳の血管が千切れるかと思うほどの衝撃だった。


「ねえ、駆くん……。なんで横の部屋にいる私じゃなくて、外の泥棒猫たちにお金を払って甘えようとするの……?」


怒りで頭がどうにかなりそうだった。でも、同時に極上の歓喜が脳内を駆け巡った。

そっか。駆くんはボッチになって、女の子と話すのが怖くなっちゃったんだね。私を『本当の彼女』にするために、まずはレンカノで練習しようとしたんだよね? そうだと言って。そうじゃないと、私、何をするか分からないよ?


事務所のマネージャーが「明日は大事なCM撮影が――」なんて喚いていたけれど、そんなの知ったことじゃない。背後から軽く気絶させて、力技で駆くんの予約枠を奪い取った。


待たせてごめね、駆くん。今日の私は、あなただけの『レンタル彼女』。

でも、すぐに『本物の彼女』にしてあげる。もう二度と、私の目の届かないところへ逃がしたりしないから……っ。

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