第1話:『友達100人』の主人公、現在の友達は0人。
『友達100人できるかな? ザ・ムービー』
それは十年前、日本中を涙と感動の渦に巻き込んだ伝説の国民的映画だ。
100人の友達を作るために全力で疾走する純真無垢な少年・カケル。彼の眩しすぎる笑顔に、日本中の大人が我が子を重ね、涙した。
――何を隠そう、その『カケル』を演じていた天才子役こそが、この俺、大河内駆である。
「……はぁ。寂しすぎて死にそう」
現在、高校二年生になった俺は、自室のベッドで天井を見上げていた。
現在の俺の友達の数――輝かしい『0人』。
あの映画が大ヒットしたあと、色々あって芸能界の人間関係に疲れ果てた俺は、表舞台を去った。普通の青春を送りたくて、正体を隠して高校に入学した。
しかし、他人と深く関わるのを恐れて壁を作り続けた結果、見事なまでのボッチが完成してしまったのだ。
学校ではいつも一人。昼休みは空き教室で一人パンを齧る日々。
気がつけば、青春の折り返し地点。「友達100人」どころか、会話の仕方すら忘れかけている。
「人肌が恋しい……。女の子と、普通に楽しくお喋りしてみたい……」
限界を迎えた俺の指は、気づけばスマホの画面を叩いていた。
画面に映るのは、最近流行りの【レンタル彼女】の予約サイト。
もちろん、元天才子役のプライドなんてとうに捨てている。偽名を使って、一番優しそうで、一番普通そうな女の子をポチッと指名した。
そして、デート当日。駅前の待ち合わせ場所。
「あの……お待たせしました、駆くん……ですよね?」
声をかけられ振り返ると、そこには帽子を深く被り、マスクと大きめの伊達メガネをかけた女の子が立っていた。ずいぶんと厳重な変装だ。
「あ、はい! 駆です! 今日はよろしくお願――」
「本当に、駆くんだ……。ねえ駆くん、なんで横の部屋にいる私じゃなくて、レンタル彼女なんて頼むの?」
「……え?」
女の子がそっとマスクをずらした瞬間、俺は心臓が止まるかと思った。
整いすぎた目鼻立ち。テレビで見ない日はない若手トップ女優。
そして、俺にとっては――映画でも、そして現実世界でも、**家が隣同士の本物の幼馴染**である、白雪詩織だった。
「し、詩織ぃぃぃ!? お前、なんでここに……っ!?」
「駆くんが芸能界を辞めてボッチになってから、私、ずっと心配してたんだよ? だから私、駆くんがもう一度私の隣(芸能界)に戻ってこられるようにずっと頑張って、駆くんの行動を(※合法か怪しいルートで)監視して……。そしたら、駆くんがレンカノを頼んだって知っちゃった。だから事務所のマネージャーを気絶させてキャスト枠を力技で奪い取って、今ここにいるの」
詩織は俺の手をぎゅっと力強く握りしめる。その目は、少しだけ潤んでいて、どこか底知れない光を放っていた。
「ねえ駆くん……私を『彼女』にしたいから、練習のためにレンカノなんて頼んだんだよね? そうだと言って? さあ、デートしよ。今日の私は、駆くんだけのものだから……っ」
初手から愛が重すぎるリアル幼馴染ヤンデレの襲来に、俺は初日から精神をゴリゴリに削られるのだった。




