第九話裏話 冴子視点
### 【大河内冴子の視点】あの日壊れかけたあなたを、私が今度こそ愛で満たす
世間の人たちは、私たちの再婚を「ベテラン女優と一般人の大人の恋愛」だと思っている。だけど本当の動機は、そんな綺麗なものじゃない。私の胸の奥にあるのは、十年前からずっと燻り続けていた、駆くんに向けられた深すぎる情愛なのだから。
十年前、映画『友達100人』の現場で、私は学校の先生役として駆くん(カケル)の隣にいた。
その撮影の最中、駆くんに起きた『あの事件』――芸能界の汚い大人たちのエゴと人間関係の裏切りに巻き込まれ、まだ小さかったあの子の心が、見るも無惨に壊れかけていく瞬間を、私は一番近くで目撃していた。
あの子を抱きしめて、守ってあげたかった。だけど当時の私は、ただの共演者。自分も最愛の伴侶を亡くしたばかりで、自分の悲しみに溺れるのが精一杯で、傷つく駆くんをただ見送ることしかできなかった。あの日からずっと、私の心には消えない後悔が残っていたの。
それが、数年後。
お見合いの席で、再婚相手として現れた男性の連れ子が、あの時心を壊して芸能界を去った駆くんだと知った瞬間、私は運命という名の神を本気で信じたわ。
我が家にやってきた駆くんは、昔の眩しい笑顔を失い、私たちに気を遣っていつも一歩引いていた。
一緒に暮らすうちに、私の感情は『母親』としての義務感をとうに飛び越えて、家族以上の、一人の男の子に対する狂おしいほどの独占欲へと変貌していった。もう二度と、あの子を誰にも傷つけさせない。私が一生、この手で愛して、甘やかして、守り抜いてあげる。
それなのに、美夜とひまりが「駆がレンタル彼女を頼んだ」とスマホをハックして騒ぎ始めた時は、本当に肝が冷えたわ。
しかも利用規約の通知を見たら、あの子、今週末も懲りずにまた別のサイトでレンカノを予約しているじゃない。
「ふふ……お母さんに隠れて、お外の泥棒猫たちに大金を払って甘えようとするなんて、本当に教育に悪い子ね」
速攻で私の大人のコネを使い、予約枠を力技で上書きした。
デート中の駆くんは、相変わらずチョロくて不器用で、私の『先生』としての厳しい採点にいちいちビクビクと怯えていて、本当に可愛らしかった。デートの練習なんて称して、他の女の人の前でこんな可愛い顔をさせるわけにいかないもの。
だから最後は、お母さんではなく、一人の『オトナの女性』としての魅力を、あの子の脳裏に焼き付けてあげたわ。真っ赤になって固まる駆くんの顔、最高のご馳走だった。
さあ、あの子を連れて我が家に帰りましょう。
美夜とひまりにはすでに話してあるわ。
これからは家の中で、私たち3人の身内で『大河内家防衛同盟(※ただし抜け駆けは自分以外禁止)』を結成して、お外の泥棒猫たち(残り95人)を徹底的に排除するの。
駆くん、あなたの初めての『本当の彼女』の座は、お外の誰にも譲らないわ。
私たちが家の中で、あなたを一生、逃げられないように愛してあげるからね――。




