第七話裏話 ひまり視点
### 【大河内ひまりの視点】画面の向こうの不器用なヒーロー
世間の人たちは、私のことを「あざとくて可愛いデジタル系アイドル」なんて言うけれど、本当の私は極度の男性恐怖症。ぶっちゃけ、男の人が全員怖くて大嫌い。声は大きいし、乱暴だし、何を考えているか分からないから。
子役時代に出演した『友達100人』の現場でも、私はただのデジタル担当の端役で、主演の駆くん(カケル)とはほとんど言葉を交わしたこともなかった。当時は「いつも女子に囲まれてる目立つ男の子」くらいの認識で、むしろ苦手な部類だった。
だから、親の再婚で駆くんが私の『お兄ちゃん』になると聞いた日は、絶望で目の前が真っ暗になった。
「いきなり男の人と同じ屋根の下なんて無理、怖い」って、最初の顔合わせの席でも、私は駆くんを思いきり睨みつけて、最悪の第一印象を与えちゃったのを覚えてる。
相手が何を考えているか分からないのが、とにかく怖かった。
だから私は、身守りのために、駆くんのPCのネットワークをこっそり覗き見ることにしたの。あいつの趣味や思考を全部データとして手に入れて、対策を立てようとした。
――それが、すべての始まり。
画面の向こうから流れてくる駆くんのデータは、私の予想とは全然違っていた。
芸能界で傷ついて引退したこと。自分のせいで家族(私たち)に迷惑をかけていないか、毎日ネットで『ステップファミリーの馴染み方』とか『義理の妹と仲良くなる方法』を夜遅くまで不器用にくぐって悩んでいること。
私の大嫌いな『男』の凶暴さなんて、そこには欠片もなかった。
誰よりも優しくて、繊細で、私たちのために必死に「良いお兄ちゃん」になろうと頑張っている、最高に健気な男の子。
データを集めれば集めるほど、私の恐怖心は、いつの間にか底なしの好奇心へ、そして――胸を締め付けるような恋愛感情へと変わっていった。
今では、駆くんの趣味も、休日の行動も、私の手のひらの上で全て分かっちゃう。
だから、駆くんが寂しさに負けて『レンタル彼女』なんて可愛いサービスを使い始めたことも、最初の1秒から全部知ってたんだよ?
「他のお外の女の人と話すくらいなら、私が『完璧に可愛い妹(彼女)』として、レンタル彼女経由でお兄ちゃんをたっぷり癒やしてあげる予定だったのに……」
それなのに、あの脳筋のお姉ちゃんが、駆くんの部屋から直接スマホを掠め取ってくるなんて、本当に計算外。筋肉ってこれだから嫌い!
でも、お外の泥棒猫たちが駆くんの指名枠を奪い合ってるのを知った以上、私も黙っていられない。
お姉ちゃんの登録手続きをするフリをして、私のシステム特権で、来月の駆くんの週末の予定を全部私の『デート枠』に書き換えてあげた。
お兄ちゃん、お外の女の人たちはみんな怖い猛獣ばかりだよ?
だから、私と2人だけの『秘密の関係』で、ずっと甘え合っていようね――。




