第7.5話:身内のハッカー(あざと可愛い)と、脳筋(キレイ系女優)
「……ふふ、お兄ちゃん、今週はそんなサイトを見てたんだ。可愛いなぁ」
大河内駆が学校に行っている平日の昼下がり。
大河内家のリビングで、ノートPCをパチパチと叩きながら、大河内ひまりは小悪魔的な笑みを浮かべていた。
駆の父親の再婚相手の連れ子であり、現在の俺の義理の妹――ひまり。
彼女は、現在大ヒット放映中の配信ドラマ『友達100人コードガール編』に主演している、今をときめくあざと可愛い系デジタルアイドルだ。
そんなひまりの密かな日課は、リビングのソファに座りながら、駆のPCの閲覧履歴をこっそりチェックする『秘密のネットサーフィン』だった。
駆が寂しさに負けて『レンタル彼女』に手を出したことも、実はとっくに把握済み。
(お姉ちゃんたちに内緒で、私がこっそりレンカノとしてお兄ちゃんに接近して、2人だけの秘密の思い出を作るんだから……!)
そんな完璧な計画を立て、すでに自分のキャスト枠もちゃっかり確保していたのだが――。
「妹よ! 駆のスマホをハックしなさい!」
ドタドタと階段を爆音で駆け下りてきたのは、ひまりの姉であり、駆の義理の姉――大河内美夜だった。
数々のドラマや映画に引っ張りだこのキレイ系若手女優。現在は大ヒット上映中のアクション映画『友達100人VSプレデター』に準主演として出演し、劇中でプレデターと激しい肉弾戦を演じるほどの、自他共に認める「脳筋美形」である。
美夜は、日課である『駆の部屋探検(ガサ入れ)』で机の上から掠め取ってきた駆のスマホを突きつけてきた。
「早く中身を開けなさい! 私の直感が、ここに駆の『重大な秘密』が隠されていると告げているわ!」
(……脳筋めぇっ!!!)
ひまりは内心で激しく頭を抱えた。
せっかく自分がデータを使って裏からスマートに「お兄ちゃんとの秘密のデート」をプロデュースしていたのに、姉の圧倒的なゴリ押し行動によって、すべてが台無しである。
しかし、姉に急かされて駆のスマホのセキュリティを秒速で突破した瞬間、ひまりの目が見開かれた。
画面に映し出されたのは、白雪詩織をはじめとする『友達100人』の古参美少女たちが裏で作っている『抜け駆け禁止同盟』というチャットグループの泥仕合だった。
「何これ……。お外の泥棒猫たちが、お兄ちゃんの予約枠を勝手に管理し合ってる……?」
「よく分からないけれど……つまり、私がその『レンタル彼女』とやらのキャストに登録して、駆を力ずくで連れ戻せばいいのね?」
鼻息を荒くする脳筋の姉。こうなってはもう止められない。
義弟は姉の私が保護(所有)するもの、というクソデカ感情を持つ美夜の破壊衝動が完全にノンストップ状態だ。
「……はぁ。分かったよ、お姉ちゃん。じゃあ、あの泥棒猫たちのチャットグループに、今から宣戦布告のメッセージを送りつけてあげる」
ひまりはため息をつきつつも、キーボードを叩く目をギラリと光らせた。
計画は壊された。だが、タダでは転ばない。
「お姉ちゃんの予約枠を力技でねじ込むついでに……私の予約枠も、最優先で2回分、上書きで確保しちゃお。お兄ちゃんの初めての『秘密』は、私がもらうんだから」
あざと可愛い天才デジタル義妹の裏工作により、駆の奪い合いは、ついに【外部ヒロイン同盟 vs 最強の実家(義姉妹)】の裏の全面戦争へと突入するのだった。




