第六話裏話 美夜視点
### 【大河内美夜の視点】義弟(駆)は、姉の私が保護(所有)するもの
世間の人間は、私のことを「クールな実力派アクション女優」だの「誰もが羨むキレイ系」だのともてはやすけれど、私の本質はただの脳筋よ。
複雑な人間関係を考えるのは苦手。台本だって、感情の機微を理解するより「このシーンの駆動力は何か」を筋肉で理解する方が早いくらいなんだから。
そんな私が、現在出演している映画『友達100人VSプレデター』。
世間は「あの感動の名作が、まさかプレデターと戦うなんて!」と大騒ぎしているけれど、私にとって『友達100人』という作品は、もっと別の、とても神聖な意味を持っている。
――それは、私の最愛の義弟、駆が命を吹き込んだ伝説の場所。
当時、私はその映画にほんの少しの共演者(端役の先輩役)として出演していた。駆との接点はほとんどなくて、現場で遠くから「凄い子役がいるな」と眺めているだけだった。
だけど、あの日。
親の再婚による家族としての『初めての顔合わせ』の席で、私の前に、あの映画の主演だった駆が現れた瞬間。
胸の奥が、ゴウッと燃え盛るような衝撃が走った。
言葉なんて必要なかった。これは運命よ。映画の神様が、あの天才を、私の『弟』として私の目の前に運んできてくれたんだわ。
それなのに、駆は芸能界の薄汚い大人たちに傷つけられて、心を閉ざして引退してしまった。
家の中での駆は、私に対してどこか遠慮がちで、いつも一歩引いた目をしている。それがたまらなく寂しくて、私は駆の匂いや、駆の形跡を感じるために、毎日あの子の部屋を『探検』せずにはいられなかった。
(駆は、私が守る。私の手の届く範囲で、私が一生、あの子の安全を保護してあげる……)
それが、姉である私の義務であり、世界観だった。
なのに……何よ、あのスマホの中身は。
『レンタル彼女』? 白雪詩織に、西園寺麗華?
映画の古参メンバーたちが、私の知らないところで駆の『初めて』を奪い合い、挙げ句の果てに『抜け駆け禁止同盟』なんてふざけたおままごとで駆の予約枠を管理しているなんて。
ふざけないで。
駆は、姉である私のものよ。外の泥棒猫たちが、金やシステムを弄してあの子の純真を汚していいわけがない。
意味が分からないなら、力ずくでねじ伏せるまで。
妹が「レンカノサイトの裏口ルートを開いたよ」と不敵に笑っている。上等じゃない。
白雪詩織、西園寺麗華、その他の泥棒猫たち。
今週末の駆の予約枠は、姉であるこの私が、プレデターを仕留めるよりも鮮やかに力技で奪い取ってあげるわ。
待っていなさい、私の可愛い駆――。




