第6.5話:義姉の日課、部屋探検で見つけたお宝
「ふむ……今日の駆の部屋は、少しだけ甘い匂いがするわね」
大河内駆が学校に行っている平日の昼下がり。
大河内家の2階にある駆の部屋に、鍵もかけずに堂々と侵入している影があった。
駆の父親の再婚相手の連れ子であり、現在の俺の義理の姉――大河内美夜。
彼女は、数々のドラマや映画に引っ張りだこのキレイ系若手女優だ。現在は大ヒット上映中のアクション映画『友達100人VSプレデター』に準主演として出演し、劇中でプレデターと激しい肉弾戦を演じるほどの、自他共に認める「脳筋美形」である。
そんな美夜の日課は、愛する義弟・駆の部屋の『定期探検(ガサ入れ)』だった。
「駆のベッド、駆の机、駆のクローゼット……よし、不審な女の痕跡はなし。……ん?」
美夜の鋭い視線が、机の上にぽつんと置かれた駆のスマートフォン(※学校に忘れていったもの)に留まった。
考えるより先に身体が動くタイプの美夜は、迷わずスマホを手に取る。画面はロックされていたが、彼女の脳細胞は「開かないなら壊せばいい」という物騒な思考に傾きかけた。
「……あぶないわ。思考が止まるとすぐに手が破壊衝動に走るの、私の悪い癖ね。こういう時は専門家に任せましょう」
美夜はスマホを掴むと、1階のリビングへとドタドタと階段を駆け下りた。
ソファでノートPCを叩いている、同じく義理の妹(美夜の妹)の元へと突撃する。
「妹よ! 駆のスマホをハックしなさい!」
「お姉ちゃん、いくらなんでも直球すぎ。……って、え、これ駆のスマホ? なんでお姉ちゃんが持ってるの?」
「駆の部屋に落ちていた(※嘘。机の上から掠め取った)。早く中身を開けなさい。私の直感が、ここに駆の『重大な秘密』が隠されていると告げているわ!」
妹が呆れ返りながらも、天才的なタイピング(元子役のデジタル担当)で駆のスマホのセキュリティを秒速で突破する。
画面が開いた瞬間、美夜の目に飛び込んできたのは、ある検索履歴とアプリの画面だった。
【レンタル彼女】
「……れんたる、かのじょ?」
美夜は首を傾げた。キレイ系女優として生きてきた彼女には、その庶民的かつ近代的なワードの意味が瞬時に理解できなかった。
「ちょっと待ってお姉ちゃん! これ、駆のレンカノの予約履歴……だけじゃないわ。裏の隠しチャットグループがある。メッセージの送信者は、白雪詩織、西園寺麗華、音無つむぎ……これ、全員『友達100人』の元主要共演者たちだよ!?」
「何ですって……?」
妹の解説を聞き、美夜の頭が急速にヒートアップしていく。
つまり、外の泥棒猫たちが、自分の愛する義弟(駆)の『初めてのデート枠』を、金と権力とシステムハックで汚らしく奪い合っているということだ。
美夜の脳筋思考回路が、一瞬で導き出した答えは一つ。
「よく分からないけれど……つまり、私がその『レンタル彼女』とやらのキャストに登録して、駆を力ずくで連れ戻せばいいのね?」
「お姉ちゃん、話が飛躍しすぎ! でも、確かに外の女たちに駆を好き勝手されるのは、妹の私としても激おこ案件だし……よし、私もシステム側から支援する! お姉ちゃん、あの泥棒猫たちの同盟チャットに、今すぐ『カチコミ』のメッセージを送りつけなさい!」
「ええ、いいわね。――義弟は、姉である私のものよ。外の有象無象に触れさせてなるものですか」
キレイ系脳筋女優の義姉と、デジタル特化の義妹。
最強の身内枠が、駆の知らないところで、レンカノ争奪戦(修羅場)への参戦を決定した瞬間だった。




