6話:週末のレンカノデートに、なぜか実家の義姉妹が割り込んできた件
「ふぅ……よし、今週末こそは『普通』の女の子と穏やかなデートをして、ボッチ脱出のリハビリをするぞ!」
これまでの数々のトラウマ(ヤンデレ幼馴染、ツンデレ令嬢、男装の親友、監督の娘)を乗り越え、俺はマイナーなレンタル彼女サイトで最新の注意を払ってキャストを予約した。
つむぎお姉ちゃんのような、優しくて穏やかな『普通の女の子』が来てくれることを切に願いながら、俺は待ち合わせ場所であるショッピングモールの広場でそわそわと待っていた。
「お待たせ、駆くん。……ううん、『駆お兄ちゃん』って呼んだ方がいいかな?」
「ぶっっ!?!?!?」
聞き覚えがありすぎる、あざと可愛い声がすぐ後ろから聞こえて、俺は思いきり吹き出した。
心臓が飛び出るかと思う勢いで振り返ると、そこにはお洒落なフリルのブラウスを着て、小悪魔的な微笑みを浮かべた義理の妹――ひまりが立っていた。
「ひ、ひまり!? なんでお前がここに……って、まさか今日のレンタル彼女って――」
「ふふ、残念。今日のメインは私じゃなくて、あっちだよ」
ひまりが楽しそうに親指で指さした先。
人混みを割って、圧倒的なオーラを放ちながら歩いてくる超絶美女がいた。
サングラスをかけ、タイトなジーンズにレザージャケット。大ヒット上映中の映画『友達100人VSプレデター』でプレデターと肉弾戦を繰り広げている、俺のキレイ系脳筋義姉――大河内美夜だった。
美夜お姉ちゃんは俺の目の前まで来ると、サングラスをクイッと下げて、鋭い美貌で不敵に微笑んだ。
「お待たせ、駆。今日のあなたのレンタル彼女は、この私よ」
「えええええええええっ!? なんでお姉ちゃんがいるんだよ!? というか、なんで姉妹揃ってレンカノに登録してんだよ!?」
「細かいことは気にしなくていいわ。さあ、せっかくのデートよ。エスコートなさい」
パニックを起こす俺の腕を、美夜お姉ちゃんがガシッと掴む。
キレイ系女優の細い腕だというのに、その握力は映画さながらのゴリラ並み……いや、プレデター並みだった。痛い。完全にロックされて逃げられない。後ろからはひまりが「私もデートのサポート(監視)枠として付いていってあげるね、お兄ちゃん♪」とあざとく手を振っている。
こうして、俺の『ボッチ脱出リハビリデート』は、まさかの実家の義姉妹に完全占領された。
「駆、まずはあそこに行きましょう。あそこのマシンを殴ればいいのね?」
「お姉ちゃん、あれはパンチングマシーン! デートでやるやつじゃないから!」
ゲームセンターに連行された俺の目の前で、美夜お姉ちゃんが綺麗なフォームから凄まじいストレートを叩き込み、マシンの最高記録をあっさりと塗り替えた。筐体がガタガタと悲鳴を上げている。周囲のギャラリーから「おい、あれ『VSプレデター』の美夜じゃないか……!?」とざわめきが起こる。
「ふむ、物足りないわね。駆、次はあっちの『愛の不時着』的なシューティングゲームよ。私があなたを後ろから守ってあげるわ」
「俺にコントローラー持たせてよ!? お姉ちゃんが銃二丁持って無双したらゲームにならないよ!」
その後も、クレープを食べる時には、美夜お姉ちゃんが「はい、あーん。……残したら承知しないわよ(目がガチ)」と肉体言語で迫ってきて、ひまりが横から「あー! お姉ちゃんずるい! お兄ちゃん、私にもあーんして!」と割り込んでくる。
家の中にいる時よりも圧倒的に距離が近く、しかも外の世界だからこそ、二人の「俺に対する執着」がダイレクトに伝わってきて、俺の心臓は別の意味でバクバクと悲鳴を上げっぱなしだった。
「駆、外の泥棒猫たちに浮気なんて許さないわ。あなたの初めても、これからも、全て姉である私が保護するんだから」
お姉ちゃんのキレイな顔から放たれる、あまりにもクソデカい独占欲(と、横で微笑むひまりの暗黒の笑み)に、俺は「これ、家に帰った後にどんな修羅場が待ってるんだ……?」と、本気で冷や汗が止まらないのだった。




