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第四十話裏話 葵視点


京都から東京へと向かう新幹線の中で、私は決意に満ちあふれていた。


修学旅行で駆のトラウマが解決したのは良かったけれど、東京にいる詩織や麗華、義理の姉妹たちの勢いが凄まじすぎる!

このまま指を咥えて見ていたら、元婚約者としての私の立ち位置など一瞬で吹き飛んでしまうわ。


「絶対に駆の隣は渡さない……!」


私は藤原本家の権力をフル活用し、駆の通う学校へ電撃転校を果たした。


しかし、転校初日の放課後。

駆に声をかけようとした私の前に立ちはだかったのは、詩織と麗華だった。


「ちょっと葵さん。どうしてわざわざ駆くんと同じクラスに転校してくるわけ?」

「ふん、本家の権力を使って強引に枠をねじ込んだのかしら?」


二人から放たれる凄まじい警戒心と牽制。

隙を見せれば一瞬で排除されそうな空気の中で、私は駆に話しかけることすらできなかった。


(くっ……! 東京に来れば少しはアドバンテージを取れると思ったのに、この女たちのガードが異常すぎるわ! 学校の中じゃ駆とまともに話すこともできないじゃない……!)


焦った私は、すぐさま藤原家の情報調査部門に駆の身辺調査を命じた。

すると、信じられないような報告が上がってきたのだ。


『葵様、大河内駆様の秘密の行動履歴です。……彼は周囲に隠れて、定期的に「レンタル彼女」サービスを利用している模様です』

『……なんですって!? 駆が、レンタル彼女サービスを……!?』


最初はその事実に愕然とした。あの駆が、女性をレンタル……!?

けれど、報告書の詳細を読むうちに、彼の健気で寂しがり屋な本心が透けて見えてきた。


大勢の女性に囲まれて翻弄され、気疲れした彼が、誰にも邪魔されない場所で「ただ優しく甘えさせてくれる時間」を求めていたのだと。


(……可愛いところがあるじゃない、駆)


そして同時に、私の脳内に雷が落ちたような衝撃が走った。


(((待って……これって千載一歩のチャンスじゃない!? 駆が『レンタル彼女』を求めているなら、私がその『レンタル彼女』になればいいのよ……!!)))


学校では詩織や麗華が常に駆の周囲を監視している。

けれど、駆が人恋しさから密かに利用している『レンタル彼女』のサービスに私がキャストとして潜り込み、彼の予約を裏で操作してマッチングさせれば——。


(((やった……!! Yったわ!! 学校のあの鬱陶しい女たちに一切邪魔されることなく、プライベートで寂しがっている駆を、合法的に甘えさせて二人きりの甘い時間を独占できるじゃない……!!)))


私はすぐさま藤原家の力(と資金力)を使い、そのレンタル彼女サービス会社に手を回して自分をキャスト登録させ、駆の予約枠を強制的に自分へとアサインさせた。


そして夕方。私服に着替え、約束のカフェへと向かう。


席で困惑し、顔を真っ赤にして待っている駆の姿を見た瞬間、私の胸はキュンと締め付けられるような愛おしさで満たされた。


「……あ、葵!?? な、なんでお前がここに……!」

「……フフン、驚いたかしら、駆?」


(ふふっ、見ていなさい詩織、麗華! あなたたちが学校でドロドロとした牽制をし合っている間に、私は駆の『人恋しい寂しさ』を丸ごと包み込んで、レンタル彼女として最高の甘やかしデートをしてあげるんだから……!!)


こうして、寂しがり屋な駆と、レンタル彼女になりすました元婚約者・葵の、甘くて少し歪な二人っきりのデートが幕を開けたのだった。


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