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第40話:京都からの転校生と、レンタル彼女の秘密


東京に戻り、いつもの学校生活が再開した。

京都での修学旅行の一件を経て、俺を取り巻く環境は以前にも増して激しさを増していた。詩織や麗華、そして義理の姉妹たちの執着はとどまる所を知らず、学校でも家でも常に大勢に囲まれているような状態だ。


だが……そんな賑やかな日々の裏で、俺の心にはふとした瞬間に猛烈な『人恋しさ』と『寂しさ』が押し寄せることがあった。


昔からボッチ気質で、人に甘えたり本音を打ち明けたりするのが極端に苦手な俺。大勢のヒロインたちに囲まれてわいわい騒ぐのも悪くはないが、自分の素を見せて、ただ静かに誰かに寄り添ってもらいたい——そんな男特有の情けない寂しさに耐えかねて、俺は密かに『レンタル彼女』のサービスを利用していた。


お互いに割り切ったビジネス関係。お金を払っている間だけ、優しく自分を受け入れてくれる無害で優しい時間。それが俺にとっての密かな癒やしだった。


そんなある日の朝。

ホームルームのチャイムが鳴り、担任の教師が慌ただしく教室に入ってきた。


「おい、全員席につけ。今日からこのクラスに新しく加わる転校生を紹介する。入ってこい」


教室のドアがガラガラと開き、凛とした足取りで一人の少女が入ってきた。

その姿を見た瞬間、俺は思わず二度見した。


「……は? なんで……!?」


白くしなやかな肌に、育ちの良さを忍ばせる上品な立ち振る舞い。

そこに立っていたのは、京都の事件で一緒に戦った藤原本家の元婚約者——橘葵だった。


「京都の藤原本家から転校してきました、葵です。……まあ、諸事情でこちらの学校にお世話になることになりました。どうぞよろしく」


葵はどこか挑戦的な笑みを浮かべると、教室の端にある俺の席へとなでるような視線を送ってきた。

クラスの男子たちが大騒ぎする中、俺は静かに頭を抱えた。


案の定、放課後になると葵のデスクの周りには詩織と麗華が詰め寄り、一触即発のバチバチとした火花が散っていた。

俺はあいつら三人が牽制し合っている隙を突き、静かに教室を抜け出した。


「ふう……疲れた。今日は久しぶりに、癒やしの時間が必要だ……」


人疲れした俺は、溜まったストレスと人恋しさを癒やすため、事前に予約しておいた『レンタル彼女』との待ち合わせ場所である静かなカフェへと向かった。


今回はアプリで「静かに話を聞いてくれる、大人しめな女性」を希望して指名を出していたはずだ。

約束の席でソワソワしながら待っていると、カツカツと上品なヒールの音が近づいてきた。


「お待たせいたしました、お客様」


「あ、どうも……って、えええぇぇぇっ!?」


顔を上げた瞬間、俺は椅子から転げ落ちそうになった。

そこに立っていたのは、私服に着替えた——ついさっき転校してきたばかりの葵だったからだ。


「……あ、葵!?? な、なんでお前がここに……!」

「……フフン、驚いたかしら、駆?」


葵は頬を少し朱に染めながらも、優雅に髪をかき上げて俺の対面の席に腰掛けた。


「な、なんでって……俺、レンタル彼女を頼んだはずなんだけど!?」

「ええ、知っているわ。だから私がその『レンタル彼女』として、キャスト登録してやってきたのよ。……フン、文句があるのかしら? ちゃんとお店を通した正規の契約よ」


(嘘だろ……!? 俺が人恋しさからこっそりレンタル彼女を使ってるのがバレた上に、本物の元婚約者がレンタル彼女として派遣されてきたのかよ……!!)


「人恋しくて寂しかったんでしょう? ……まったく、世話が焼けるんだから」


困惑と恥ずかしさで固まる俺に対し、葵はどこか愛おしそうな、甘い眼差しを向けてくるのだった。


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