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閑話長編修学旅行パート16 いつもの駆


藤原圭介とその手下たちは、駆けつけた警察と藤原家の警備集団の手によって、あっという間に全員が御用となった。

現場の混乱が収まり、周囲に警察の赤色灯が寂しく点滅する中——駆は、囮となって巻き込まれた詩織、麗華、葵の三人に向き合っていた。


駆の表情は、いつになく真剣そのものだった。


「……三人とも、本当に無事でよかった。でもな、いくら作戦通りだったとしても、あんな危険な真似は二度とするな!」


駆は自分の過去——調子に乗り、傲慢さゆえに大切な母親を失ったあの日の悪夢を胸に抱きながら、強く語りかける。


「自分の力を過信して危険に飛び込むのがどれだけ愚かで恐ろしいことか、俺は身を以て知ってるんだ。もし万が一、お前たちに何かあったら……俺は一生、自分を許せなかった」


昔の惨劇と自分を重ね合わせ、切実な眼差しで注意する駆。

その心の底からの言葉に、三人は一瞬だけ目を見開いた。


だが——詩織は優しく目を細め、駆の手にそっと自分の手を重ねた。


「ありがとう、駆くん。でもね……私たちは駆くんを信じていたし、何より、こうでもしないと駆くんはいつまでも過去のトラウマに苦しめられたままでしょ?」

「そうよ」と麗華が不敵に微笑む。「私たちが狙われていると知って、あなたが逃げずに助けに来てくれるって分かってたわ。自分の危険なんて、あなたのトラウマを払拭することに比べたらどうでもいいの」

葵もまっすぐな瞳で頷く。

「私の命より、私にとって何より大切なのは……駆、あなたなんだから」


『自分の危険より、駆が大事!!』


そう堂々と言い切る三人。

そのまっすぐで重すぎるほどの深い愛と優しさに触れ、駆の胸は熱くなった。


(みんな……俺のために、そこまで……っ)


過去の呪縛から解き放たれるような感覚に、思わず目頭を熱くする駆。


——だがしかし。

真面目でピュアな駆には見えていなかった。

感動的なセリフを口にする三人の心の中が、実はかなりの【邪気】で満ち満ちていたことに。


(((グヘヘヘヘ……! やったわ!! これで駆くん(駆)の好感度爆上がり&私のことしか見られない身体(心)に仕上がったわね……!!)))


感動の余韻を台無しにする、ドロドロとした下心と圧倒的歓喜。

彼女たちにとって駆のトラウマ克服は本気だが、ついでに『一生消えない恩と好感度を植え付ける』というちゃっかりした裏テーマもしっかり達成されていたのだ。


こうして恐ろしい事件は無事に解決し、全員が無傷でハッピーエンド——


——となるはずがなかった。


「ちょっと待ちなさいよ二人とも!! ズルい、ズルすぎるわ!!」

「そうよ! 駆くんが大事なのは私たちだって同じなんだからね!!」


二人の会話を盗聴器越しにリアルタイムで聴いていた義理の姉妹たちや、駆けつけていた他のメンバーが大暴走を開始した。


「カケルくーーん! 私もカケルくんが一番大事だよぉぉ!!」

「駆! 私の愛の重さも証明させてちょうだい!!」

「さあ駆くん、ホテルに戻ったら全員でじっくり『お仕置き』と『反省会』よ!!」


「ゲッ……!? な、なんでそうなるんだよお前ら!!」


一瞬前までの感動的な空気はどこへやら。

ハイエナのような目を光らせて迫ってくるヒロイン&義理家族軍団の圧に、駆の背筋にヒヤリと冷や汗が走る。


「逃げるぞ失礼する!!」


「待ちなさい駆(カケルくん)ーーーッ!!」


お約束通り、京都の夜の街へと全力で逃走を開始する駆。

後ろからは、恐ろしい執着心を持った美女たちが怒涛の勢いで追いかけてくる。


「っはぁ、はぁ……! 全然平和じゃねえじゃねえか!!」


叫びながら走る駆。

しかし、夜風を切って逃げる彼の表情は、これまでのような陰りや怯えは一切なく——どこか晴れやかで、呆れつつも温かな笑みを浮かべていたのだった。


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