閑話長編パート3 駆の修学旅行 駆はおやつに入りますか?
「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」
あの狂気的な座席表争奪戦を終え、俺の精神生命力は完全にマイナス域を突破していた。しかし、まだ修学旅行のしおり作成段階の教室内では、さらなる不穏な議題が担任の先生から投げかけられていた。
「よし、それじゃあ次は修学旅行の持ち物の説明だ。おやつは上限300円まで。バナナはおやつに含まれるからな」
先生の何気ないその一言が、教室内を再びとんでもない大爆発へと導くトリガーとなった。
「ヘイ、先生! 質問よ!」と、インド帰りのパッションを燃やす黄川田ココが勢いよく挙手した。
「私の特製スパイスカレーは、おやつに入りますか!? あれは実質、脳を活性化させるためのサプリメント(おやつ)のようなものですわ!」
「入るわけないだろ! カレーは完全にお食事だ!」
俺が真顔でツッコミを入れたのを合図に、教室内ではクラスメイトの女子たちによる、カオスすぎる「おやつ大喜利」が一斉に幕を開けてしまった。
「先生、私の焼きまんじゅうとアイス饅頭は発祥の地のソウルフードですから、おやつ枠ではなく『群馬の魂』としてノーカウントですよね!?」とみのりちゃんが机を叩き、「ひまりちゃんのデジタル計算によると、総重量2キロのカロリーメイトは圧縮データと同じなので300円枠に収まります♪」とスマホの裏のチャットで実家連合から不穏なログが流れ込んでくる。
そんなおやつ大喜利で大騒ぎになっている最中、後ろの席の映画監督娘・新藤未来が、ペンをくるくると回しながら邪悪な笑顔で教卓の先生へと質問をぶっ放した。
「先生! ならば『大河内駆』はおやつに入りますか!? 彼の存在そのものが、私たちの修学旅行における最高の癒やし(デザート)なんですけど!」
「ぶっっっ!!!!???」
プリントを丸めて思い切り机を叩いた。
「俺をおやつ枠にエントリーするな! 300円で買えるわけないだろ!」
だが、その未来の最悪な質問を聞いた瞬間、白雪詩織や西園寺麗華たち【出し抜き同盟】の面々の瞳に、完璧にハイライトの消え去ったプレデターの輝きが灯った。
「フン、未来にしては珍しくインテリジェンスな質問ですわね! 先生、その金のカケルも銀のカケルも、西園寺の財力を尽くして『言い値でおやつとして丸ごと買い取りますわ!』。なんならその300円のレギュレーションごと西園寺マネーで白紙化して、カケルを私のプライベートおやつ(旦那様)にして差し上げます!」
「麗華さん、そんな不純な物品強奪はコンプラ違反以前に私が許しません。駆くんはおやつ(デザート)なんかじゃありませんわ……。駆くんは、朝から晩まで私の神殿(部屋)でじっくりと美味しく平らげられるべき、一生ものの『メインディッシュ(主食)』に決まっていますわ♥」
「だから、俺を食品のカテゴリに分類するのをやめろ!!」
詩織のヤンデレ全開のホラーなメインディッシュ宣言の前に、俺はガタガタと震え上がるしかなかった。
「駆は俺の相棒(非常食)だ!」と蓮が顔を真っ赤にして叫び、ココとひよりちゃんが「駆くんのスパイス(匂い)をおかずにして白米を食べます!」と目を血走らせ、教室内は「誰が駆をおやつ(メインディッシュ)として独占するか」という大混乱の大爆発乱闘へと発展した。
「あはは、みんなってばおやつの話を決めるだけでも大騒ぎね! 本当に修学旅行って行く前から最高に楽しいわね!」と周りの女子たちはドッと楽しげに笑い声を上げた。
俺も彼女たちの賑やかな様子に釣られて思わずドッと少し笑ってしまい、「おいおい、持ち物を決めるだけでこれじゃ先が思いやられるなぁ」と、これから始まる旅行への期待と騒がしさにただ苦笑いを浮かべるばかりだった。
そんな俺ののんきな感覚を置き去りにしたまま、黒板の持ち物リストがみるみると彼女たちの欲望の赤ペンで埋め尽くされていく中、詩織や麗華たちは「京都の宿の部屋割りの裏工作を……」「夜のコンプラ違反の修羅場の準備を……」と、駆以外テンションバクアゲで、まだ見ぬ修学旅行の話をもの凄い熱量で決め進めていくのだった。




