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第三十八話 裏話えま視点


私、声と態度と不条理への耐性だけは天空級の、自他共に認める健気ないびられヒロイン(灰原えま)。

だけど、ぶっちゃけ私の正体は、義母と義姉が優しすぎていびってくれなかった、本物の『シンデレラ』なのよ!


私の前世の世界では、お義母様もお姉様も私を溺愛しすぎて、家事も全部代わりにやってくれるから、舞踏会に行く前に王子様がお姉様と結婚しちゃったのよ!「私のシンデレラストーリーを返しなさい!」って魔法使いに文句を言ったら、なぜかこのマナなき現代日本へ生活費を稼ぐために子役として追放されちゃったの。


だけど十年前、映画『友達100人』のオーディション現場で、私かついに本物の『王子様(カケル様)』を発見したわ。

私はあいつに振り向いてもらうために必死でお城へアプローチをかけていたんだけど、カケル様は天然ボッチすぎて私のサインに1ミリも気づかず、あいつの義母や義姉の実家連合から「これ以上うちの弟に妙な役作りで近づかないでくれる?」って、もの凄く理不尽に邪魔をされ(いびられ)続けていたの!


「……ハッ!? 待ちなさいよ。これ、私を邪魔してカケル様から引き離そうとする大河内家のあの義母と義姉……完璧な『シンデレラの意地悪な継母と姉』じゃないのよ!」


これこそが私を一番輝かせる真骨頂の不条理環境(いびり)だと気づいた瞬間、私の中のシンデレラパッションが限界突破したわ!

「こうなったら作戦変更よ! レンタル彼女という名の最高級のドレスを身にまとってあいつに襲いかかり、あいつのハートをガチで惚れさせて、大河内家のお嫁さんとして正式にいびられに行ってやるわ!」


そう意気込んで、このマイナーなレンカノサイトに『元シンデレラの最高級キャスト』として電撃登録し、お姫様の執念でカケルの予約枠を力ずくで上書きしてやったの。


そうして迎えた、クラシカルラウンジでの再会。

私はいびられたいアピールをブチかましてやるつもりだったんだけど、一般人になったカケルは、私の目をまっすぐ見つめて「周囲の目が集まるから座りな。君のそういうブレない世界観、嫌いじゃなかったよ」って、もの凄くインテリジェンスでスマートな言葉を叩きつけてきたの。

紅茶をスッと差し出す手つき、視線の配り方、および私の空回る悩みを誰よりも解ってくれている、あの洗練された大人の男のオーラ……!


……絶句したわ。

ハニトラでお嫁さんになるつもりが、私のハートの方が、一瞬であいつの底知れない『大人の男の魅力』に完璧に落とされてしまったじゃないのよ……っ!?

あいつ、あの芸能界のエリート組の女の人たちにどんな揉まれ方をしたら、高校生のくせにこんな極上の王子様に育つのよ! あんなの、どんな不条理も耐え抜いてきたこの私だって、一瞬でただの雌にされちゃうに決まってるじゃない!


いびられ枠を勝ち取るための偵察のつもりだったのに、私のハートは完全にカケルのイケメンオーラに美味しく陥落させられちゃったわ!

義母のいびりなんてどうでもいいわ! こんな極上の王子様が手に入るなら、あんな古いお城の雑巾がけなんてやめよ! これからは、この現代日本でカケルと一緒に生涯を共にする方向に目標変更よ!


(カケルの隣が世界一のハッピーエンドなら、私がこれから夜通し機を織って稼ぐ全財産を使って、駆くんを私の『専属の王子様』として、一生私のプライベートのガラスの靴に閉じ込めて愛してあげればいいのよね!?)


スマホを見ると、詩織ちゃんたちが裏のチャットで「新参のガラスの靴、抜け駆けはコンプラ違反よ!」ってギャーギャー騒いでいるのが見えるわ。もちろん、私の正体が話の違う世界から飛ばされてきた本物のシンデレラだなんてあの子たちには露知らず、ただの生意気なえまちゃんだと思っているみたいだけど。

ふふ、お黙りなさい、おいたが過ぎる方々。シンデレラとしての執念と、恋する乙女としての『智謀とパッション』をナメないことね。あなたたちの予約枠、私の張り巡らせたお姫様の策略ですべて『午前0時の魔法解除』にして差し上げますわ。


待っていなさい、私の愛しい駆くん。

これからは私の、誰よりも健気で、誰よりも熱くて逃げられない『前代未聞のシンデレラ系・ラブストーリー』で、あなたのボッチな人生を完璧にプロデュースしてあげるからね――。


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