閑話が本題 駆月に代わってお仕置きよ!
「……はぁ。最近、学校でも家でも、どうして俺の周りには刺激の強い女の子しかいないんだ……」
あの高級和菓子カフェでの「かぐや姫ハニトラ自爆事変」を経て、俺の精神生命力は完全にマイナス域を突破していた。
しかし、その日の放課後の学校の屋上で、俺はまたしても頭を抱える事態に直面していた。
「な、なんですって!? この地球の衛星軌道上を埋め尽くす大量の宇宙ダストは、月の皇位継承争いをする私のライバル、ライバール姫の卑劣な罠だったというの!?」
「はい、るな様! ライバール姫はるな様の帰還を遅らせ、その隙に月を完全に支配するつもりのようです!」
放課後の夕暮れの屋上で、輝夜るなちゃんがスマホに向かって「月に代わってお仕置きよ!」と熱い通信を飛ばしていた。画面の向こうで慌てふためいているのは、彼女が『月のウサギ』と呼ぶ、ネットの裏チャットの怪しいアバター(※ただの映像エフェクト)だった。
ウサギの報告によると、直ちに宇宙ダストの大掃除を始めたものの、ダストの量が多すぎて月の最新鋭の清掃牛車でも大苦戦しているらしい。このままではるなちゃんが月に帰れないばかりか、月の王位が奪われてしまう。
そこに、たまたまプロテインをシェイクしながら通りかかった前世が魔王のリリスちゃんが、不敵な笑みを浮かべて口を挟んだ。
「フハハハ、お困りのようだな、かぐや姫よ! ならば魔王であるこの私が助言を授けよう。あのカケルの体内に渦巻く【五十三万】の無尽蔵なるマナの奔流を、国際宇宙ステーションの魔力変換炉(※ただのひまりのデジタル工作サーバー)に転送し、宇宙ダストを一撃で消滅させる作戦を取るのだ!」
「それだわ! 駆くん、お願い、私にあなたのその凄まじい『駆パワー(マナ)』を貸して頂戴!」
「いいですとも!」
俺は屋上の手すりに足をかけ、特撮ヒーローのポーズを決めながら爽やかに快諾した。
(※ちなみに俺自身は、彼女たちがまた放課後に新しい中二病チックなSFごっこ劇の撮影でもしているのだと大真面目に勘違いしている)
「よし、ひまり! カケルのマナの波形を宇宙へハッキング転送して!」
「バグ修正完了、システムオールグリーンです♪ 駆お兄ちゃんパワー、宇宙へバーストシュート!」
ひまりがノートPCのエンターキーを激しく叩いた瞬間、俺の体内から目に見えない覇気(※ただの毎週の修羅場で極限進化したオーラ)が空へと放射された。
月の科学力と駆のマナの融合により、衛星軌道上の宇宙ダストは一瞬にして跡形もなく消滅! さらにその圧倒的なエネルギーの余波により、月にいたライバール姫の軍勢も一網打尽にされ、月の皇位継承問題は見事に完全決着をみたのだ。
「やったわ! 宇宙ダストも悪党も消え去ったわ! これで完璧なハッピーエンドね、駆くん!」
「うん、よく分からないけど撮影が無事に終わって良かったよ、輝夜ちゃん」
俺はほのぼのとした優しい笑みを浮かべ、これ以上ないほど綺麗な日常パートの空気で閑話が幕を閉じる――。
――はずが、屋上の重い鉄扉が、バガァァァン!! と凄まじい爆音を立てて蹴り破られた。
「ちょっと待ちなさいよあなたたち!! 月の皇位継承問題が解決したからって、何がハッピーエンドよ!? 地球における『大河内駆の正妻継承権(※大いなる誤解)』を巡る過酷な大戦争は、今だに1ミリも決着がついていないのよ! さあ、西園寺のリムジンに今すぐ乗り込みなさい!」
「カケルの終身雇用(婚姻届)の継承者は、この白雪詩織に決まっています! 新参の宇宙人、駆くんのパワーを勝手に宇宙へバーストシュートするなんてコンプラ違反よ!」
「駆! お前、俺という大事な相棒に黙って、いつの間にそんな壮大な宇宙大戦の主役に収まってやがったんだよ! ほら、俺ともスペースバトルしろよな!」
「ぶっっっ!!!!???」
俺が屋上で女の子たちと宇宙規模のパワーを放っていたという噂を裏のチャットで聞きつけた白雪詩織、西園寺麗華、蓮の【出し抜き同盟】の面々。
さらにその背後からは、
「お外のエリート組だけズルいです! 私たち【モブモブ同盟】のメンバーにも、駆先生から密室で濃厚なマナの個人注入指導(※大いなる下心)を受けさせてください!」
と、カフェの葵先輩やひよりちゃん、正美ちゃんたちまでもが、完璧に目を血走らせて屋上へなだれ込んできたのだ。
「駆の正妻の座(継承権)は私のものです!」「西園寺の財力でこの屋上の全所有権を買い占めますわ!」と、総勢二十七名というあまりにも多すぎるクソデカ感情の化物たちが一斉にカチコミをかけ、夕暮れの屋上は一瞬で地球一激しい駆継承権争いの大混乱大爆発乱闘へと発展した。
「ひいいいいい無理ぃぃぃぃぃ!!! 月の平和は綺麗に守られたのに、なんで地球の俺の周りの大戦争は今だに泥沼のまま続いてるんだよぉぉぉぉ!!!!」
俺の切実な絶叫は、エントリー枠(継承権)を巡って服を脱ぎ散らかしながら再び火花を散らし始めた彼女たちの怒号にかき消され、日常閑話のはずの宇宙大掃除は、結局いつも通りのなっからカオスな大爆発バタバタエンドで幕を閉じるのだった。




